第12話 人間軍VS3魔王
リーベル高原に侵攻を開始したバルトリア軍の兵五〇〇〇。
歩兵二五〇〇人、重装歩兵四〇〇人。
騎兵六〇〇人、戦車隊六〇〇人。
弓兵五〇〇人、魔術師四〇〇人。
そして秘密兵器一体。
軍を率いる将軍は、今日こそ悪しき魔族を撃ち倒そうと意気込み、いつも以上の兵を侵攻させ、本国より届いたとっておきの秘密兵器投入を決意する。
今までの戦いを考えれば五〇〇〇の兵では足りないだろうが、この兵器があればと、将軍は未来に輝く勝利を確信して笑いが止まらなかった。
リーベル高原ではすでに魔王軍八〇〇人が陣形を組んでいた。
数は六分の一以下だが、一人で一〇人力の魔族ならこれで十分と言える。
本陣ではバトラが四天王と共に高台から戦場の様子を見物している。
敵の将軍同様、こちらの大将バトラも勝利を確信して腕を組み、顔には笑顔が張り付いている。
「では王子、私はこれにて」
短い言葉で高台から一瞬で駆け下りると、レオンの姿は自軍の中に消えて行った。
「ははは、あいつは頼もしいねぇ」
「レオンが出る以上、本日の死者は一〇〇〇では済みますまい」
「そうね、そうすれば味方の消耗も少なくてお金もかからないわ」
「…………」
バトラ、ラムダ、イーナ、タウは四者四様に戦場を眺め、そして空を飛ぶ巨大なスカイドラゴンの姿を見つけた。
「姫様?」
レオンは自軍の先頭に立ち、空から突然降って来たオルファ達の姿に足を止めた。
「ああレオン、ちょっと今回はオルファ達に任せてくれない?」
「この方達に……」
「さっきの会議始まる前にメルから聞いてるとは思うけど自己紹介させてもらうよ、オレは東の魔王オルファ・イスタンス」
「どうも、西の魔王のアルム・ウェスターです」
「北の魔王のレア・ノーザンドだ」
「これは魔王様方、先程は挨拶もできず申し訳ありません、私は南の国、ウェスター王国で環境大臣を務める四天王の一人、レオンでございます。
ですがこの場を任せて欲しいとはどういう事でしょうか?」
「いや何、せっかく来たのに手土産も無しじゃあ魔王の沽券に関わるんでね」
「つまり土産変わりに我らの演武を見て貰おうというわけだ」
「あ、じゃあもう相手の方が来たみたいなので失礼します」
レオンの返事を聞かずオルファ達はメルを残して三人で敵軍へ向かって駆ける。
姫様の命令だからだろうか、レオンは何も言わず、逆に言えば反論もせず、オルファ達の背中を見送った。
「人間共に告ぐ! 今退くならば命は助けるぞ!」
メル達から十分離れるとオルファは立ち止まり、敵軍に向かってそう叫ぶが返事は無い。
敵までの距離、残り一〇〇メートル。
「これが最後の警告だ! 退かねば殺す! 立ち向かえば殺す! それを承知で向かってくるか!?」
敵までの距離、残り七〇メートル。
「では行くぞ! 死にたくない者は逃げろ!」
オルファの全身に魔力の光りが迸り、上げた手を一気に振り下ろす。
敵までの距離、五〇メートル。
「グラビドン!」
そこで敵の前衛歩兵八〇〇人が縦に潰れた。
オルファの視界の光景が、まるで重力が何十倍にもなったように兵士達は全員草原に倒れ込み、鎧がひしゃげる。
重力系呪文の中でも初歩的な呪文だが効果範囲が尋常ではない、八〇〇人もの兵士全員を同時に地に叩きつける超魔力には敵軍だけでなく、四天王やバトラ、そして魔王軍全員が驚愕した。
敵軍はオルファ達三人だけだとあなどり押しつぶそうとそのまま歩兵を走らせたが、あわてて弓兵部隊に矢を番(つが)えさせ、そして一斉に放つ。
五〇〇本の矢が虫の大群のように空から降り注いで、けれど一本残らずオルファ達へ到達する前に重力呪文領域で地に落ちる。
だがこれが悪かった。
アルムには『大量の人間を殺す』と言っておきながら弱い呪文で力加減をしているので、兵士達はまだ死んでいない。
ただ全員重傷なだけだ。
しかし重力は質量がある物に程強く作用するため、五〇〇本の矢は全て、先端の鏃(やじり)を下にして真っ逆さまに落ちて人間の兵に突き刺さった。
「何自滅してんだよ!」
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