第11話 四天王たちを味方にせよ
「あれでだいたい分かってくれたと思うけど、四天王は全員バトラ派なんだよね、おかげでこの城は実質バトラが仕切ってるし、親書や使者の事がボクの耳に入らないのもバトラの根回しだろうね、ついでに親書を隠したバトラはオルオル達の事情全部知ってると思うよ」
私室に戻り、トロピカルジュースを飲みながら口調だけは明るくしてメルは背もたれに体重を預ける。
「それもそうだけどメル、邪神復活ってなんだよ!?」
「そうだよメルちゃん、もしかしてあのバトラって」
「その通り、バトラは邪神を復活させる気だよ、そして、邪神の力を使って人間を滅ぼしてファルガス大陸を魔族の物にするみたい」
オルファとアルムが息を呑む中、レアだけは不敵に笑う。
「あの小僧、なんとも大胆な事を考えるではないか」
「でもメルちゃん、邪神の力って言っても邪神が魔族の言う事聞くの? たしか邪神て魔族を含めたこの大陸の全てのヒト族を滅ぼそうとしてたんでしょ?」
「バトラは自分が復活させるんだから自分の言う事を聞くだろうって、考えが甘すぎるよね」
「ガキの考える事は解らんな、邪神が恩義を感じるようなタマなら歴史にある悲劇は起きなかったろうに」
「レアレア、一応ボクの弟なんだから、いくら年長者だからって小僧とかガキはちょっと酷く無い?」
「年長者と言ってもお主らとさほど変わらんぞ?」
「あれ、そうなの?」
「我は今年で一九〇歳だ」
「俺は一八〇と五歳」
「わたし一八〇歳」
「へー、ボクとバトラは今年で一八三歳だよ」
「うそ!? メルちゃん、じゃないメルさんてわたしより年上だったんですか?」
身長的に年下と踏んでいたアルムは驚き、慌ててメルへの敬称を変える。
「別に三歳程度いいって、それにおっぱいはアルアルの方が大きいわけだし」
突然『にひひ』と笑って自分の平らな胸を撫でる。
「で、でも」
と、恥ずかしそうに自分の胸を見下ろしてからアルムは隣に立つレアの胸を見る。
「ふふん、どうかしたかアルム?」
わざとらしく自慢の爆乳を突き出し『どたぷんっ』と揺らす。
人間ならば胸の大きな人には『すぐ垂れる』と言って反撃できるが、魔族にその概念は無い。
強靭な肉体を持つ魔族のバストは年を取っても基本垂れず、ブラをしなくても一生安心な程だ。
というよりもバストを含めて年を取っても人間のように皮膚や肉がたるむ事じたいあまりない。
元から人間の数倍の身体能力や肉体強度を持つ魔族が老いたところで人間のトップアスリートよりも高い運動能力を持つ。
そんな体に筋肉の衰えからくるたるみなどあるはずもなく、天地を裂き一人で万軍をも凌駕する魔王ともなれば別格。
多少体力の衰えは感じても見た目の変化は少なく老年後期でも中年前期程度、元から肉体派であったレアの曽祖母(そうそぼ)に至っては生涯成人期の容姿を保っていたほどだ。
「まぁ数歳でも我が年長者なのは変わらんがな、それで本題だが、封印のし直しを勝手に行う事は無理か?」
「無理だね、うちの国で封印の塔は重要文化財でその扱いは魔王の意志が不可欠、魔王の意志によらずコレを破った者は重罪、例えそれが王族でも、ってわけでさ、魔王不在の今は逆に誰も何もできない状態だよ」
「ふむ、つまり封印のし直し作業をするには……」
「穏健派のボクが魔王にならないと、弟のバトラが魔王になったら確実に封印のし直しなんてしないだろうね」
だが現状では四対〇、選挙で勝ち目は無い。
八方ふさがりの状況にアルムとメルは溜息をつき、レアも無言になるが、
「なら決まりだな」
言って、オルファは立ち上がる。
「来週の選挙までに四天王を三人以上引き込む、それが俺らの仕事だ」
「オルファくん……うん、そうだね」
アルムが笑顔になって、レアも『うむ』と頷きアルムと一緒に立ち上がる。
「安心しろメル、お前は俺ら三魔王が必ず魔王にしてやるよ」
真っ直ぐに見つめてくるオルファにメルはしばし唖然として、そして明るく笑い始める。
「あはははは、三魔王が味方って、こんな心強い味方世界でもボクしかいないよ、そうだね、じゃあみんなで勝ち取ろうよ、魔王の座をね」
「よし決まりだ」
オルファ達はまた席について作戦会議を始める。
「それでまず誰から陥落するかだけど」
「オルファくん、やっぱりまずタウちゃんからがいいと思うんだけど」
「そういえばあの娘だけは乗り気には見えなかったな」
レアの言う通り、四天王の中で小柄で内気そうな少女、タウだけは自ら発言せず、手を上げるのもバトラ達の反応を見てからで、従わされているような様子だった。
「あータウね、あの子は去年四天王になったばかりでね、元から弱気な性格なんだけど他の四天王に遠慮がちで悪い子じゃないんだけど長いモノに巻かれちゃうタイプなんだよ」
「つうことは人間抹殺に関しては?」
「本当は反対だと思うよ、基本的に争いが嫌いな子だし、でもバトラや四天王が怖い以上他の四天王を味方につけてからじゃないと原因解決しないし、逆に難しいと思うなぁ、タウちゃんの性格改善も一週間じゃ厳しそうだし」
そうか、とレアとアルムが口を閉ざすが、オルファだけは口を開いた。
「いや、長いモノに巻かれるなら方法はあるぜ」
三人の視線を集めてオルファは自信たっぷりに笑う。
長いモノに巻かれるからダメ、ではない。
オルファは逆にその性格を利用する事を思いついたのだ。
「鍵は次の人間が侵攻して来た時だな」
アルム達が首を傾げると、
「伝令! バルトリア軍が我が領内に進攻、国境のリーベル高原にてまもなく交戦が始まります!」
「また!? どうしよう、今日もバトラの奴手当たり次第殺しまくっちゃうよ」
「噂をすればか、悪いけどアルム、四天王説得の為に俺は今日大量の人間を殺すぜ」
オルファの発言に、アルムとメルが絶句した。
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