第8話 南に美少女魔王候補メル


「でもまぁそれまで魔王不在ってわけにもいかないし、ボクと弟のどっちかが魔王継ぐ事になったんだけどウチの法律でね、王位継承者が未定のまま先代魔王が死んだら四天王達による投票を行ってより多くの票を獲得した人が次期王になるんだよね、ちなみに今回の選挙は一週間後」


「より多くのって言っても、四天王って四人だけだろ?」

「うん、だから二人で争う場合は三票手に入れないとダメだね」

「えーっと、メルちゃん、もしも二票ずつになっちゃったらどうなるの」


 アルムの質問にまたメルはジュースを一口飲んでから答える。


「そしたら半年後にまたやり直し、選挙は最大二回、二回やっても決着つかなかったら候補者全員によるクジでトーナメントやって優勝した人が魔王になるんだ、まあ今回はボクと弟のバトラだけだからボクとバトラの一騎打ちだね」


「って、今は一一月だから今選挙に落ちたら盟約に間に合わないぞ!」


 思わずオルファは握り拳を作ってしまう。


「ふむ、しかし半年とは長いな、それまで政治はどうするのだ?」

「四天王と魔王候補者全員での会議と多数決だね、四天王は一人一票、魔王候補者は一人で二票持ってるよ」

「ほお、四天王と魔王だけで会議か」


 サウザン王国の政治体制にややレアが疑問を挟む。


「うちは四天王が各大臣だからね、みんなのところは誰が四天王やってるの?」

「俺の東の国は俺の親衛隊長を筆頭にメイド長と執事長と将軍だな」

「わたしのところは政治と関係無いよ、わたしのファンクラブ親衛隊の本隊隊長を筆頭にA隊、B隊、C隊の隊長だよ」

「我のところは大将軍を筆頭に陸将、海将、空将が四天王を務めておる」

「へいストップ、レアレアのところは軍事国家っていう特色が出てるけどさ、アルアルとオルオルのところはなんでそんな基準になってんの?」

「『オルオル』って……まぁいいや、普通にうちの国で強い奴ベスト四がそうなっただけだぞ、ちなみに軍隊のトップを務める将軍が四天王一の小物だ」


「わたしのところは元々四天王は魔王の身を守る近衛部隊で志願制だったんだけど、そうしたらうちは代々アイドル魔王だから、選抜試験トーナメントで魔王様ファンクラブ会員が血眼になって死に物狂いで戦うから、普通の戦士系の人ってみんな怖くて逃げちゃうんだよね」


「確か今の四天王って元はアルムの母さんのファンだったよな?」

「うん、それでお母さんが魔王と一緒にアイドル引退した後はみんなわたしのファンクラブ会員に移行したの、今でもお母さん時々復活コンサートするんだけどね」

「ああメル、西の親衛隊すげーぞ、全員『アルムLOVE』って書かれたお揃いのシャツや剣装備してて攻撃方法は拳と呪文だからな」

「防御力は!? そして剣の意味は!?」

「いや、基本全員シャツが傷つかないよう凄い回避率誇るし剣が傷つかないようにしてんだよ、剣は空に向かって振り回すグッズだ」

「し……親衛隊だけだからいいけど軍隊までそうだったら国壊滅してるね……」


 メルの口元がひくつく。


「まあ西の魔王軍はみんな鎧の下にアルムTシャツ着てるけどな」

「どんだけ!?」

「西のウェスター王国って国民イコール魔王のファンだからな、さっき言った普通の戦士系も温度差あるだけでアルムのファンだし」

「で、でもそんなんじゃ結婚とかできないんじゃない?」


 ファンからすれば好きなアイドルにはいつまでも清らかでいて欲しいモノだ、男の噂などのスキャンダルはご法度のはずだが。


「いや、こいつの家系の女代々人気有り過ぎて引退宣言はするんだけど『魔王様が幸せなら俺らいいです』『お願いだから引退しないでください』って言って結局アイドル続けるんだよ」

「わたしも今のうちから結婚してもいいけど引退だけはやめてくださいって言われてるんだよね」


 苦笑するアルムに続けて、オルファがアゴに手を当てて唸る。


「それで何勘違いしてるのか知らないけど幼馴染の俺が西の国に行ったらみんなしてアルム様を嫁に持って行かないでくださいって言うんだよな」


 赤面するアルム、そして冷めた顔になるメル。


「オルオルもしかして鈍いって言われる?」

「それなら城中のメイドに言われているぞ、理由は知らないけど」

「……オルオル、君ってやつは」

「そうだな何を勘違いしているのやら、オルファとアルムは我の嫁だと言うのに」

「「それは違う!!」」


 オルファとアルムが揃ってレアにツッコンだ。


「あ、そろそろ会議の時間だ、それじゃあみんなも会議見てってよ、四天王の説明は歩きながらするからさ」



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