第14話 師匠のカラダがすごすぎる
「あ、冷たくてきもちぃ」
「ピムのスライムボディなら、どんな衝撃も和らげてくれるだろう。それに激しい運動で上がった体温も吸収して、体力の消耗を抑えてくれるはずだ」
襟もとから顔を出してピムはぼくにほおずりをしてくる。
「ピム、ますたーのやくにたつよー」
「それはありがとうね、ピム」
ピムの小さな頭に、ぽんぽん、と二度、やさしく触れる。
「この衣装といい、使い魔といい、ありがとうございます師匠。僕、きっと姫様のお役に立ちますね」
「そんなに張りきらなくてもいいぞ。お前はあくまでも広告塔なんだからな」
「それでもですよ。でも、どうしてピンクスライムなんですか?」
スライムには、色ごとに生まれ持った能力がある。ピンクスライムは、あまり大きな声では言いたくないけど、人をエッチな気持ちにさせる媚薬能力を持っているらしい。
「いや、お前の血というか、厳密にはお前があたしの裸に興奮して噴き出した鼻血を触媒にしているからな。むしろ必然だろう」
「な、なるほどぉ……」
僕は恐縮しながらうつむいた。
夢のなかでは、師匠の鼻血もたくさんイヤリングに吸収されていたけど、あれは夢だから関係ないよね。
「あと、ミスリルで剣を作っておいた。神の金属オリハルコンやヒヒイロノカネという例外を除けば、これより丈夫な素材はない。名前はそうだな、ノクトと呼べ」
師匠が投げ渡したのは、黒い鞘と柄のロングソードだった。鞘から刀身を引き抜くと、不思議な光沢を持った黒い刃だった。
黒いのに、僕の顔が鏡のように綺麗に映る。白銀ならぬ、黒銀と呼べる、不思議な色だ。普通、ミスリルは銀色なんだけど、きっと師匠がいろいろと手を加えてくれたんだと思う。
なるほど。ノクトは古代語で『夜』『空』『光』を意味する単語だ。夜のように黒く、空のように澄んだ光を放つ剣ていう感じかな。
「ありがとうございます。ところで師匠、質問なんですけど、僕の心臓はドラゴンの心臓なんですよね? ドラゴンの力を解放してパワーアップ、とかはできないんですか?」
「無理だな」
「即答ですね」
僕は、への字口になった。
「人間の体に負担をかけないよう、心臓の力の大半は力を抑えることに使うよう魔法の術式を組みこんである。自分で自分の力を抑え込んでいる状態だな。余剰分の力はない」
「師匠ならその術式を取り除けるんじゃないんですか?」
「即死だな」
「また即答ですね」
僕は、口のなかで唇を噛んだ。
「ドラゴンにとって心臓は、魔力を産み出す核となる魔力動力炉。その力が解放されたらドラゴンの魔力がお前自身が持つ人間の魔力と反発しあってお前の体はバラバラだ。ミチミチミチ、ばっつーん、てな」
「効果音まで決めないで下さい!」
「…………ミリミリミリ、ぱっちーん」
「そういう問題じゃありませんから! あとそれ師匠が先月ブラジャー壊しちゃったときの音そっくりですよ!」
師匠の額に、青筋が浮かんだ。
「言っておくがレイヴ。その衣装にはもうひとつ弱点があってな……」
師匠の全身からわき上がる殺意に、僕は背筋が伸びて背中から体温が抜けていく感覚に襲われた。
「伸縮性の高い布だから打撃だけでなく……関節技に対しても無力だ!」
師匠は一瞬で僕のバックを取ると、僕をベッドの上に押し倒して、逆エビ反り固めをキメてきた。
師匠の大きなお尻のお肉が、僕の背中に押し当てられる。両足が、師匠の脇にはさまれて横乳が押し付けられる。
師匠のお尻とおっぱいの感触を同時に押し付けられて、僕は情けない悲鳴をあげた。
ああ、師匠のやわらかいお肉がどれだけ押しつぶれているかわかる。
ごめんなさい師匠。
僕は師匠にこんなによくしてもらっているのに、僕は師匠を汚してばかりいます。
「どーしたのー、ますたー?」
僕の服のなかから出てきたピムが、元の姿に戻って僕の顔を覗きこむ。
ピムの無垢な表情は、いまの僕にとっては罪悪感を増長させる燃料にしかならなかった。
その日、僕は自分という人間のありかたを、深く深く反省するのだった。
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