第12話 師匠の本性がドスケベすぎる
僕は、夢を見ていた。
夢のなかで、僕は小さな子供だった。
夢のなかで、師匠はいつものように怒っていた。
僕をバカ弟子と罵り、殴って、叩いて、踏みつけてくる。
僕は何度も謝るけど、師匠は許してくれない。
かと思いきや、師匠は突然背を向けた。
僕は泣きながら、師匠のあとを追いかけるけど、師匠は振り向かず、そのまま歩いて行ってしまう。
何故か僕の足は重くて、師匠の背中はどんどん小さくなってしまう。
夢のなかの僕は泣きながら、必死に師匠を呼ぶのに、師匠はどこかへ行ってしまった。
誰もいない空間で、小さな僕はいつまでも泣き続けていた。
僕の夢はそこで終わった。
どうしてこんな夢を見るのか、冷静になると心当たりはあった。
勇者のせいだ。
師匠は勇者と戦うために、僕とは違う戦場へ行かなくてはならない。
しかも相手は、数ある勇者のなかでも特に強力なひとりらしい。
先代魔王を討った勇者の仲間、シグムント率いるゲルマリア王国の勇者一行。
シグムント、シグルス、スキールニル、ベオウルフ。
聖剣グラムを持つシグムント率いるこの四人は、魔王軍の中隊長や大隊長を何人も討ち取り、ゲルマリア軍の士気も高まっているらしい。
師匠は凄い魔女らしいけど、それでも心配だ。
だってシグムントは、先代魔王様を討ち取った勇者の仲間で、シグルスはそのシグムントの息子。シグムントの持つグラムは鉄を空気のように切り裂く伝説の聖剣だし、そんな怖い人たちと戦って、師匠は大丈夫かな……
昼間に、師匠は言った。
『あたしの身になにかあってもひとりで生きていけるよう』
そんなの嫌だ。
師匠は怖いけど、それでも師匠がいなくなっちゃうなんて嫌だ。
悲しさのあまり、胸が痛くなってくると師匠の声が聞こえた。
師匠のことが恋しくて、僕はゆっくりと目を開けた。
「弟子かぁあああいぃいいいよぉおおおおおおおおおおおおおお❤❤❤」
師匠が、そう叫んでいた。
僕が寝ているのは師匠の部屋のベッドで、師匠はひとり、部屋のなかを転げまわっていた。
「かぁいいよぉ❤ かぁいいよぉ❤ 弟子かぁいいよぉ❤ ああもおダメ❤ だめなのぉおおおおお!」
師匠は古き良き魔女の証、三角帽子を投げ捨て、真っ赤な顔でなおも狂乱する。
「拾ったときはぁあああ! 本当にちっちゃくてぇええ! いつも『ちちょう』とか言いながらうしろをちょこちょこついてきてぇえええ! それだけでもご飯百杯食べれちゃうのにぃいいい! 最近は美少年ぶりにますます磨きがかかって、しかもあたしが教えることをどんどん吸収して少しでも失敗すると『ごめんなさい師匠』って、ガハァッ! 死んじゃう! もおイアラ死んじゃうのぉおおお!」
師匠は服をゆるめながら、歓喜に沸いていた。ドバドバ鼻血を流しながら、流す血が全部イヤリングに吸収されていく。
「昼間も『え!? 師匠、僕の前からいなくなっちゃうんですか!? そんなのイヤです!』とかぁ❤ とかぁ❤ とか言っちゃってぇ❤ ひゃっふぃー❤ バカぁ❤ レイヴたんのバカぁ❤ あたしがレイヴを置いてどこかに行くわけないのに、レイヴはずっとあたしの手元に置いて寿命で死んだら魂を精霊化させてあたしの使い魔にするんだもん❤」
師匠は服を脱ぎ捨て、感涙にむせぶ。
「ああもおレイヴかぁいいよレイヴ! マジあたしの小悪魔ちゃんんんんん! んっんっあっ❤ んっ❤ あっ❤ リビドー滾るぅううううう! ダメよ! ダメよイアラ! レイヴは純真なんだから! でも❤ でも❤ でもぉおおおお!」
師匠は下着を脱ぎ捨て跳躍。
「レイヴきゅんが可愛過ぎて生きるのが辛いのぉおおおおおおおお!」
師匠は僕に、覆いかぶさるようにして抱きついてきて、頬ずりして、頭をなでて、全身で絡みつかせてきて、獲物を捕食する触手系マンイーターも裸足で逃げ出すような勢いだった。ていうか、いつのまにか僕はパンツ一枚だった。
師匠の肌の感触が、全身に生で伝わってくる。
「くそぉ❤ 魔王のクソガキめあたしからレイヴきゅんを奪うとは憎たらしい奴だ。戦場で会ったらお前のところに勇者が行くよう戦場をコントロールしてやる! でも大丈夫だよレイヴぅ❤ レイヴは初陣までにいっぱいいっぱい鍛えて強くしてあげるからね❤ 好き❤ 好き❤ レイヴ大好き❤」
師匠は、僕の顔にキスの嵐を降らせ続ける。
師匠のみずみずしい唇の感触が気持ち良くて、僕は夢心地になってしまう。
そう夢心地だ。これは夢だ。
師匠は僕との夜の特訓では、必ず最後は眠り呪文で終わらせる。
昔は目が覚めると、師匠の部屋で介抱されていた。
でもここ最近は、途中でこんなハレンチでいかがわしい夢を見るようになってきた。
しかも、頻度は増えるいっぽうだ。夢の内容もどんどん過激になっていく。
「はうぅう❤ 生まれてこのかた男とは手を握ったこともないのに、レイヴにはこんなに大胆になれちゃうのぉ❤ 登っちゃう❤ イアラ永遠の十八歳❤ 大人の階段登っちゃううぅうううう❤」
あぁ、いったいなんて酷い夢だろう。
あの、厳格で勇ましくて凛とした偉大なる魔女、イアラ師匠が、こんなことをするわけないじゃないか。
これも全部思春期のせいだ。
思春期になって心が汚れたせいで、その、師匠の大きなおっぱいとか、セクシーなヒップとかにドキドキするようになったせいで、こんなハレンチな夢を見ちゃうんだ。
これは僕の願望の現れだ。
こんな妄想はしたことがないけれど、きっと自分でも気づかないだけで深層心理とかなんとかそういう心の奥底で、僕は師匠を汚しているに違いない。
「エクスプロージョーン❤❤❤ レイヴー、あたしのおっぱい飲む? レイヴを育てるときに母乳の出る薬を飲んでから元に戻る薬飲んでないからまだでるんだぞ❤」
師匠は僕の顔におっぱいを押し当てながら、狂喜乱舞し続けた。
きもちぃ。おっぱいのやわらかい感触までするなんて、なんて酷い夢だろう。
僕は全身から力を抜いて、再び意識を失った。
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