第8話 ししょおおおおおおおおおおおおおお!
「しっ、ししょうおおおおおおおおおおおおお!」
師匠は無慈悲に僕の左手首をつかむと、強引に引っ張りあげる。理不尽な性的虐待を受ける僕は、右手一本で股間を隠しながら、涙をこらえ辱めに耐えるしかなかった。
「この少女のように華奢な腕、十六歳でワキ毛も生えていないツルツルの白い肌。薄い胸板に細いウエスト。それで姫様、屈強な肉体がどうかしましたか?」
「どどど、どういうことですか? はうぅ――」
姫様は軽くパニックを起こしてから軽く失神。目覚めるまでの数秒、レムに体を支えられる。そのレムはアサガオの観察日記に書く内容を探す子供のように僕を観察していた。
やめて、見ないで、はずかしい!
「その話ですが、兄上から聞かれたのでしょう? あの人は、先代以前から魔王家の相談役を務めるあたしを買い被っているんですよねぇ。赤ん坊のレイヴを拾ったとき、心臓が未成熟で死にそうだったから、竜の心臓を移植しましたよ。でも人間用に加工して力を封印した、本当にただの代替臓器です。修行をつけているのも貧弱の極みだったんで、あたしの身になにかあってもひとりで生きていけるよう最低限の強さを着けるためです」
「え!? 師匠、僕の前からいなくなっちゃうんですか!? そんなのイヤです!」
僕はうずくまったまま、師匠の脚に顔をおしつけすり寄った。
そして師匠の容赦ない鉄拳が僕の脳天に落とされた。
「アホか。もしもの話だ、もしもの。この世の中に絶対なんてないんだよボケッ。まぁそんなわけで姫様、それは魔王様の過大評価です。『あのイアラ殿の弟子なのだからきっと凄い』っていう妄想の産物です。戦力として期待しないでください」
「えっ、あっ、はい、そそ、そうですか……はわわぁ」
姫様は額から汗を流しながら、指の隙間から僕を見つめ続けていた。
王族の前で裸にされて晒しものって、魔界の神様、僕が何をしたんですか?
「まぁ姫様には姫様なりの考えがおありのようなので、いいですよ。うちのバカ弟子で良ければ使って下さい。まぁそのときはあたしも行きますんで」
「イアラも来てくれるのですか♪」
姫様は顔から両手を離して、表情を輝かせる。
「ええ。あたしも元人間として、バカ共にはちょいとお灸を据えてやろうと思っていたんですよ」
「ありがとうございます。イアラに来て頂けるなら心強いです」
姫様が笑顔になると、レムが部屋の時計に視線を巡らせた。
「姫様。そろそろ昼餐の時間です」
「もうそんな時間ですか? ではイアラ、一緒に」
姫様の誘いに、師匠は首を振った。
「いえ、あたしはこれから魔王様と話があるので、昼はそのあと、魔王様と食べる予定ですので」
「それは残念ですね。ではレイヴ、貴方だけでもどうですか?」
「はい、喜んで♪」
こんなに可愛い女の子と、いやいや、お姫様と食事なんて、こんな機会一生ないよね。
心を弾ませる僕に、師匠が耳打ちをする。
「光栄に思えよレイヴ。姫との昼餐なんて貴族でも叶わないんだからな」
「は、はいっ! あとそろそろパンツをはきたいんですが」
「じゃあ姫様、あたしは魔王様のところに行ってきますんで」
「あの師匠、パンツ」
「ん、お前は姫様の前でいつまでそんな格好しているんだ?」
「師匠が脱がせたんでしょう! 早く着衣魔法でぱぱっと着せて下さい!」
「だまれ。ほら廊下で着ろ」
師匠は僕の服を回収すると、そのまま僕を廊下へと引っ張って行った。
「いやぁ! やめてぇ! 誰かに見られたらどうするんですかぁ!」
案の定、僕らが廊下に出た瞬間、若くて可愛いメイドさんの行列が廊下を通り過ぎて行った。メイドさんたちはクスクス笑いながら僕の着替えを観賞していた。
もうお婿に行けません。
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