第4話 いざ魔王城へ
お昼前。魔王城の光景に、僕は圧倒されていた。
「す、すごいなぁ……」
高さ十メートルの分厚い城門をくぐると、そこは見渡す限りの美しい庭園だった。
城門からまっすぐ伸びる道は、大きさの違う白系統の敷石を何種類も使い、見事な模様を描き出している。
道の左右では、高さの揃えられた芝生、季節の花が咲き誇る花壇、色とりどりの花とたわわな実で飾られて木々が僕らを出迎えた。
街の公園や広場の庭園もすごいけど、さすが王様のお城。レベルが違うなぁ。
景色のなかでは、何人もの女の子たちが笑顔で作業にいそしんでいる。
庭師、植木職人として働いているのは、木人族だろう。
髪が葉っぱみたいで、頭に綺麗な花を咲かせている女の子たちはアルラウネ。
緑色の艶やかな髪をしているのは進化系のドリアード。
そんな彼女たちを監督している長身の女性は、さらに進化して第三形態にまでなった木人族、トレントだろう。
僕らと眼が合うと、木人族の人たちは軽く会釈をしてくれた。僕も、ちいさくお辞儀をしておく。
人間の僕や元人間の師匠と違って、魔族のみんなはその才に合わせて進化する。
進化は第一形態から第四形態まであって、進化するほど強力な力を身に着けるらしい。
一番わかりやすいのが、
吸血亜人のグール↓
空を飛び死者の血肉を操るヴァンパイア↓
太陽を克服したデイウォーカー↓
絶大な魔力を持つ不死者ノスフェラトゥ。
という感じだ。
て言ってもほとんどの魔族は一生、第一形態のままだし、第四形態なんて魔界にひとりいるかいないかって話らしい。
「きょろきょろするなバカ弟子」
師匠は僕の頭を叩くと、強引に僕の手を握って引っ張った。
そのまま、師匠は僕の手を強く握りしめたまま、ずかずかと庭園の奥を目指す。
「あの、そんなに引っ張らなくても、ちゃんと歩きますから」
なのに師匠は、鼻で笑った。
「はん、お前みたいなガキの言うことが信用できるか。お前なんか注意されてから三歩も進まないうちにチョウチョや小鳥を追いかけるだろう」
「それはないですよ! あぐっ!」
僕の手を握る、師匠の手によりいっそう強い力がこめられた。
「お姫様だっこで入城したくなかったらキリキリ歩け」
ドスの利いた声に、僕は泣く泣く黙った。
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