第3話 ざまぁホイホイ
人をバカにした態度にエイリーンは拳を震わせる。
「何なのよ急に、さっきまでおとなしかったじゃない!」
「ああそうだ、俺や俺の国をバカにするのは超ムカつくけど我慢してやるよ、でもな」
と言って、義人はエレオアーヌの側に周りこむ。
「この国に来てから見てきた可愛い女の子番付け一位のこいつを虐めることだけは許さん!!」
再び世界が凍りつくが義人だけは軽快に動き、エレオアーヌをじっくりと鑑賞しながら後ろで一本に束ねた長い髪を撫でた。
「いやぁ、ヨーロッパに来てから金やら茶の髪に青や緑の目とか見てきたけど、まさかこんな綺麗な髪と目の女の子いるなんてヨーロッパ半端ねぇな、それにこの胸も尻も、イイ母乳出すしきっと安産だろうなぁ、こんなイイ女、高天ヶ原(たかまがはら)にだってそうはいねーぜ」
「ふえ! あの、そのわたし……」
「よくぞ言った東洋男子♪」
馬鹿に明るい声と一緒にどこからか飛び込んできたのは、日本では普通だがこの国では小柄な可愛らしい少女だった。
髪はエイリーンやエレオアーヌとは対照的に茶色い髪をショートカットに揃え、頭頂部からは一房の髪が冗談みたいにぴょーんとハネている。
明るいオレンジ色の動きやすそうなドレスを着て、短いスカート丈のおかげで可愛い膝小僧が見える。
袖は無く腕は露出しているのが、手首にはハンドウォーマーがつけられてそれがいいアクセントになっている。
小柄で童顔ながらプロポーションが良く、ドレスのスリットから程良く大きな胸の谷間が見えている。
さらに頭のデージー、日本名雛菊の花を模したヘッドドレスが実に似合っていて、ブラウンのくりっとした瞳が実に愛らしい。
「ボクのエレオちゃんの魅力に気付くとはすっごい眼力だねキミ、それでボクは番付け何位なの?」
「いや何俺は真実を言っただけさ、それとお前は四位だ」
「うわぁん! ベスト三からはずれちゃったよー! だけどベスト五には入っているからハッピー♪」
泣いたり笑ったり忙しいが表裏の無さそうな素直な女子である。
「クラス代表だろうと公爵家だろうとエレオちゃんを虐める奴はこのイタリアの四等貴族、子爵家五女、チェリスティーナ・アイマーロが相手だぞ!」
「アンタはパスタでも食べてなさいよアンテナ頭!」
「頑張れヨシト! 援護はボクに任せてね!」
エイリーンの一睨みでエレオの背中に隠れるチェリスティーナ、大したナイト様である。
「俺はアンテナよりもアホ毛っていう呼び方のほうが好きだな」
どうでもいい議論である。
「はんっ、アンタらアタシに勝てるとでも思っているの?」
「お前そんなに強いのか?」
また得意げに威張るエイリーンに合わせて、取り捲き連中が口々に語る。
「アンタ知らないの!? これだから極東のサルは!」
「召喚術大国アヴァリスの公爵家であらせられるエイリーン様は!」
「なんと既に霊力評価でAランク!」
「その上持ち霊の評価Aランク!」
「術師も持ち霊も共にAランク評価の!」
全員同時に、
『スーパーエリートなんだからぁー!!!』
わーわー ぱちぱちぱちー
無駄な歓声と拍手再び。
しかしそのアルファベットに義人は思い出したように懐(ふところ)に手を入れる。
「そういえば俺も霊力評価受けたな、えーっと確か若いアルファベットほど凄いんだよな?」
「そうよ、つまりAランクのアタシは最強なの」
「じゃあ俺なんか全然だな、俺のアルファベット全然爺ちゃんだし」
探すのにてまどい、なかなか紙が出てこない。
「さすがジャップね、身の程を弁えた霊力じゃない、それで何? Dランク? それともEランクかしら」
「いや、もっと下だ」
ようやくたたまれた一枚の紙を取り出し、目の前で広げていく。
「Fランクってあったかしら?」
「今年新しくできたとか?」
「低過ぎて評価対象外だったんじゃない?」
取り捲き達が話す間に、義人はみんなの目の前で霊力評価の結果を見せ、世界の時がまた止まる。
「ほら、Sって書いてるだろ? SってことはEよりえーっと一四も下だから俺よっぽど弱いんだな」
「あの、ヨシトくん……Sっていうのはね、スペシャルのSでAよりも上の、人間としては規格外の霊力を指すんだよ」
「えーっと確か王族でも数世代に一人出るかどうかで、ボクも見るの初めてかな……」
「マジで? じゃあ俺の方が格上じゃん」
エレオとチェリスティーナの説明に機嫌を良くする義人。
だがそんな不条理をプライドの塊であるエイリーン達が許すはずもなかった。
「フザけんじゃないわよ!!!」
エイリーンが叫ぶと同時に、取り捲き達から四人の生徒が飛び出して義人の着物を掴(つか)むなりそのまま三階にある教室の窓の外へと飛び出した。
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