第5話 バレる秘密
二時間後。
寮の庭で散々打ち合った俺とエルは、鎧をはずしながら寮の行水場へ向かっていた。
行水場は、汗を流すための部屋だ。内装は大衆浴場に井戸を足した感じだが、あいにくとお湯を沸かす設備はない。
溜め水か、井戸から組んだ水を頭から浴びるだけの簡素な場所だ。
「やっぱエルは強いな。一本取るのも一苦労だよ」
俺が褒めると、エルはちょっと頬を染めながら首を振った。
「ううん、すごいのはレオンだよ。ハルバード最強論も、レオンの前じゃかたなしだもん」
ハルバードとは、斧と槍を合わせたような武器だ。
穂先の根元から左右へ、斧の刃とピッケルのような突起が伸びている。
槍のように突いたり、斧のように切り裂いたり、突起部分で叩き割ったり引っかけたりできる万能武装だ。
その分、重いしできることが多すぎて使いにくいという致命的な欠点がある。兵の多くが好んで使ってはいるが、使いこなせている兵は全体の一パーセントにも満たない。
エルは、その一パーセントにも満たない使い手のなかでも上級者で、達人の域に片足をつっこんでいる。
ていうか、エルって普通に俺より強くないか?
などと俺が疑いの眼差しを向けると、エルは胸当てをはずした。
「ふー、暑いねぇ」
胸当てから解放された胸が大きく揺れて、俺は眼を剥いた。
俺と一緒に村を出た頃から成長し続け、年々豊かになっていくエルの胸は、未だ発展途上のようだ。
メロン大のふくらみがふたつ、エルの胸元でやわらかくはずんでいる。
エルぐらい胸が大きいと、ただ歩くだけでも自己主張がはげしくなるようだ。
「じゃあレオン、またあとでね」
「お、おう……」
俺の視線に気づくことなく、エルは俺にやさしくほほえんでから背を向けた。
エルは女子用の行水場へ向かう。その後ろ姿を見ていると、自然と視線が下がり、エルの安産型のヒップを眺めてしまう。
向かうは行水場。ということは、このあとエルは下着も脱ぎ去り一糸まとわぬ姿になるのだろう。
あまりに魅力的過ぎるエルの肢体を想像して、俺は自分を叱咤した。
だめだレオン。お前は何を考えているんだ。
そんなよこしまな考えて勇者になれるか。
俺は、アーサーなんてどうでもいいけれど、勇者には憧れる。そうだ、俺はいつか魔王を倒して勇者になるんだ。
勇者たるもの品行方正で清廉潔白。うん、そうでなくちゃな。
俺は気を取り直して、男子用の行水場へと入った。
◆
汗を流した俺は、さっぱりした気分で自室へ向かった。
午後には念願のレプリカソードが届く。
さっさと昼飯を済ませてしまおう。
そう思いながら歩いていると、談話室が妙に騒がしいことに気づいた。
「どうしたお前ら?」
俺が談話室に入ると、俺の部下たちが一斉に振り返る。
そのなかで、最初に目が合ったのは、銀髪碧眼のスレンダー美人だった。
もうひとりの幼馴染で、一緒に村を出たアリッサだ。博識な上に弓の腕前は一級品。頭の回転も早く字が上手いので、事実上俺の秘書兼参謀と言っても良い。
「あらレオン。実は、ジュリアが妙な荷物を見つけたのよ」
俺の背筋を、嫌な予感がマッハで駆け抜けた。
「みょ、妙な荷物デスカ?」
「そうよ。ジュリア」
アリッサに呼ばれて、ボリューム溢れる赤髪が、ふわりとひるがえる。
「うん。これなんだけどね、宛先がうちの隊なのに肝心の名前が書いてないのよねぇ」
おっとりした声でそう言って、三人目の幼馴染、ジュリアが長い箱を抱えて振り返る。
俺へ見せつけられる箱には、エルをも凌駕するダイナマイトバストがずっしりと圧し掛かっていた。普段なら、その特盛バストに目を奪われるところだ。しかしいまは、いまだけは俺にそんな余裕はない。
なぜならその箱に、デパートのマークが焼印されているからだ。
ほぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!
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