第41話 魔王最終形態
「もうやめろフィリア、俺達が戦っても意味は無い」
その言葉にフィリアが爆発する。
「フザけるな!!」
一度の跳躍で雲まで跳び上がり、天に立って全身に邪気を滾らせる。
「魔王よ! 歴史上最強の大魔王バルアードよ!! 貴様が本当に魔王なら、貴様が本当に歴代最強の魔王ならば私に力を寄こせ!!! 今以上の! あの憎き男以上の力を!! この私に!!!」
全身を巡る邪気が噴き上がりフィリアの姿を変貌させる。
邪悪な黒光が背中にコウモリのような翼を六枚形作り、頭には牛のような二本のツノを形成する。
鎧とドレスはより禍々しく、剣は巨大になって肌を黒い文様がすみずみまで覆って真紅の髪がゆらめく。
その姿はまさに大魔王。
たった一人にしてその威容はまさしく天を突き上げる高山が如し。
並の勇者ならば一睨みされただけで呼吸困難を起こすであろう威圧感を放つフィリアの姿を見上げながら、ウィルトはさらなる闘志を滾らせて飛び上がる。
「すっかり魔に呑まれちまってるなフィリア」
「当たり前だ、魔王の力をナメるな! もはや貴様のシャイニング・カリバーでも私は止まらん、今の私はバハムートすら足元に及ばぬ! 無論、貴様もだ!!」
「シャイニング・カリバー? そうか、お前まだ気づいてないんだな、魔王の右手に聞いてみろよ、俺の力をよ」
フィリアの鎧の中で魔王の右手が蠢く。
憎らしげに、憎悪を込めてウィルトを包む光に対抗するようにして邪気を強めていく。
「まさかウィルト、その光は……」
「今の時代、白魔術師以外に使える奴がいねーからな、気付かなかったんだ。そうだよ、これが天の属性だ」
「バカな!」
フィリアが剣を一振りして黒い雷が放たれる。
「ヘブンス・エッジ!」
魔の属性を孕んだ雷を、ウィルトが放った光の刃が斬り裂く。
すんでのところでフィリアはかわす事に成功するが、喰らえば重傷だったに違いない。
「勇者が天属性だと!? バカな! 天の力は白魔術師がアンデット系モンスターに使う清めの呪文以外に存在しない! まして天属性のエッジだと? そんな事ができた者は今までの歴史上、魔王を倒した勇者レギスだけ……!!?」
どうやら気づいたらしい。
フィリアはツバを呑みこみ今一度ウィルトを見直す。
バハムートを倒し、魔王の力を持つ自分になお食い下がるこの戦闘力。
『勇者レギスの再来』そんな言葉がフィリアの頭に浮かぶ。
「行くぞフィリア、魔王の力だかなんだか知らねーが、右手だけで勝てると思うなよ」
「…………最強は、私だぁああああああああああああああああ!!」
黒雲たちこめる空で勇者と魔王がぶつかり合う。
今までの戦いをさらに超える過激さに天が叫び地が吼える。
遥か上空にあっても戦いの衝撃で高層ビルの上部が砕け散り、地上に降り注いだエッジや攻撃呪文、カリバーが延長線上の全てを消し飛ばす。
地上で戦っていたCランク勇者達はとっくに避難していた。
黒い小型ドラゴンは戦いの余波で全滅している。
これでもまだ救いがある方だ。
もしもウィルトとフィリアが地上で戦えばエデンガルドは五分と経たず更地だろう。
そんな戦いも終局は近い。
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