第18話 美人パーティー
ガタタン!
スレイプニルが大きく揺れる。
「ちょっとウィルト! ちゃんとハンドル握っときなさいよ!」
エリカに責められてウィルトは素直に「すまん」と謝る。
「いや、えっとその、クロエは美人だし、髪も肌も綺麗だし、そもそもミス勇者学園で準優勝しただろ?」
「ボ、ボクだって男が大きな胸が好きだって事は知っている。だから、ボクに票が入ったのは……そういう」
「いや、本当に胸だけで準優勝したらそれはそれで凄いけどな」
「その通りよ牛魔女!」
急に話に割り込んできた腹黒シスターがそのまままくしたてる。
「ミス勇者学園はこのアタシ、アンタは準優勝、これぞ大衆がグラマーよりスレンダーを望んでいる証拠!
脂肪細胞の無駄遣いに過ぎない駄肉野郎なんてアタシの魅力の敵じゃないわ!
まあ普乳で二五位のエリカより順位は上だし、アンタの美貌がアタシの足元ぐらいに及んでいる事にはしてあげるわ」
「嫉妬は見苦しいぞ貧乳シスター」
「何か言ったかしらゲス勇者?」
背中に寒いものを感じてウィルトが固まると、サーシャは薄い笑みを浮かべて。
「アンタのエロ本全部クロエの部屋に移動させましょうか?」
「いやちょっとソレは……」
「だ、大丈夫だウィルト、君がベッドや机の下、そして引き出しの二重底や本棚の奥に大量に巨乳爆乳本を持っている事は一三歳の時から知っているし、パソコンに八ギガバイト分のエロ画像がある事も知っている。
今更その程度でボクはウィルトを嫌いになったりしないから安心してくれ」
そんな握り拳で熱弁されても涙しか出ません。
「そ、それからボクのブラジャーを二枚ほどくすねているのも知っている、仕返しに君のパンツを二枚ほど持っているから返して欲しかったらボクの下着も返してくれ」
頬を染めながらこの娘は一体何を口走っているんだ。
後部座席からエリカとサーシャの絶対零度視線を感じるじゃないか。
まあクロエの事だからサーシャの罰を防ぐ為の嘘だろうけどなんでクロエの言う嘘は毎回マトを射ているんだろう。
まるで俺の部屋を普段から漁っているみたいじゃないか。
「つうかウィルト、あんたどんだけ巨乳好きなんだよ! クロエの胸にハァハァなのか!? あたしとサーシャの胸はアウトオブ眼中か!?」
うおぉ! 何故エリカがここまで怒る、絶対零度の眼差しがマグマのごとしだ。
「いやでもお前らは元から違うっていうか、サーシャの魅力は美脚だしお前は鎖骨と童顔じゃね?」
「鎖骨か……」
赤いバトルドレス越しに自分の鎖骨を撫でて怒りを沈下させるエリカ。
普段女として褒められる事がないズボラ娘もまんざらでは無いようだ。
「ていうか牛魔女、アンタいい加減女子用の制服来なさいよ、いつまでその黒スーツに黒コートでいる気?」
「いや、それは」
女剣士のエリカは昨晩会ったフィリア同様、装飾性の高い真っ赤なバトルドレスの上にプロテクターのような鎧を着ていて、女白魔術師のサーシャは金刺繍をあしらった純白の僧衣を着ている。
男勇者のウィルトは黒いスニ―キングスーツの上にプロテクターのような鎧を着ていて、これはセイバーグループから支給される職業男女別の制服である。
これを基本に後は個人の自由で装備品を付け足しできるので個人差はあるが、クロエが着ているのは男黒魔術師用の黒スーツの上に魔導道具を内ポケットに仕込んだ黒コートで、エリカやサーシャに比べるとかなり地味である。
「そういえばなんでクロエみんなみたいなゴシックドレス着ないのさ?」
エリカの言う通り女黒魔術師の制服には漆黒のゴシックドレスが支給されるはずなのだが、
「いや、ボクはその、ああいうヒラヒラしたのは……胸目立つし」
頬を染めて、キュッと自分の胸を抱くクロエ。
ただし、ウィルトから言わせれば黒スーツは黒スーツで胸が悪目立ちしている気がしてならない。
男性用の黒スーツは華やかさや色気こそないが体にフィットしたタイトな作りだけに、不自然に盛り上がって今にもボタンが飛びそうな胸がいやでも目につくし、コートを一枚脱げばズボンを押し上げる丸いヒップのラインが良く見える。
もっともこれはこれでゴシックドレスに無いエロさがあるのでウィルトが指摘する事はない。
「まあクロエがドレスなんて着たらアーレイさんが何するか分からないしいいじゃねえか、それより今の俺達はアーレイさんをトラブルに巻き込む事なく無事警察へ送り届け――」
車の通信装置が起動したのはその時だった。
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