第9話 覚醒

「坂本龍馬殺人事件の犯人がぁああああああああああ!」

「凄い寝言ね」

「あれ? 俺どうしてたんだ?」


 気がついたら寝ていたらしい。

 なんだろう、記憶が混乱している。


「確か如月さんが俺の頭に手を置いてそれからなんかすっごい衝撃が体を貫いて……」


「成功したみたいね、無理に門と回線開いたショックで気を失っていたけど大丈夫、一〇分しか経っていないわ」


「え? じゃあもう俺歴史召喚できるのか?」

「そうよ、でも感覚つかむのも時間かかるから手っとり早く……」


 また如月さんが俺の頭に手を置き、


「うお!?」


 次の瞬間、頭の中がどこか巨大なモノと繋がった。

 言葉がおかしいが、そうとしか言えない。

 例えるなら、国立図書館の巨大な本棚に囲まれているような、と言えば近いかもしれない。


「これが歴史召喚の第一工程、接続よ、長谷君、刀の情報を検索できるかしら?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 俺は目をつぶり、平安時代の太刀を想像し、強く欲した。


 刃長が二尺以上で、腰から下げる形で装備して、馬上で使う事を想定して反りが大きく長い事が特徴。


 如月さんが検索には知識が必要だと言った為、太刀の知識を頭の中で反芻してみる。


 すると、何かの塊りが一つ手に入った気がする。

 さっきの図書館で言うなら、目当ての本を見つけ、手をかけているような感じだ。


「第二工程の検索は済んだ?」

「おう」

「そのまま、検索した物を召喚する感覚を作って」


 手にした塊りが手に移って、それが太刀になる姿をイメージする。

 それに合わせて、体の中を何かが通り、腕へと流れ、


「成功よ」


 確かな重みを右手に感じて目を開けると、そこには資料で見た通り、否、資料や博物館で見たソレよりもはるかに真新しい、本物の太刀が握られていた。


 博物館の太刀は年代物だが、どうやら歴史召喚は新品の状態で召喚するらしい。


「実感無いって顔してるわね」

「ま、まぁ、なんかまだ夢の中にいるみたいだよ」


 気が抜けると、アカシックレコードとの接続が解けて、いつもの感じに戻るが非日常過ぎて頭がいまいちついていけていない。


「これが歴史上の物を召喚する遺物召喚よ、凄いのになると安土城をまるごと召喚するような人もいるわ」


「へぇ、それでこれは誰の刀なんだ?」


「誰のでも無いわ、さっき言ったでしょ、歴史でもなんでもない物は召喚できないって、だから歴史召喚で中世時代に使われていた、武器の歴史の一つの刀や槍を召喚するとその時代の平均的な物が召喚されるわ。

 だから太刀は太刀でも何年のどこに住んでいた誰々が持っていた太刀、とかは召喚できないわね」


「へぇ」


「他にも信長様とか偉人英雄を召喚する英雄召喚。

 織田鉄砲隊とか集団を召喚する団体召喚。

 歴史上の戦場や街を召喚する環境召喚とか、色々な種類に分かれるけど、環境召喚は消費霊力が莫大すぎるから長谷君には無理ね」


「でも情熱レベルが九九あれば一〇〇分の一の霊力で召喚できるんだろ?」

「それはそうだけど、そこまで情熱ある人はまずいないわね、そもそも歴史師は全員異常なまでの歴史オタクで歴史に愛を捧げる人だから、それでも平均的な情熱レベルは三〇か四〇くらいじゃないかしら」


「ふーん、まぁいいや、なんにせよこれで俺は歴史師になったんだろ? よろしく頼むぜ、如月さん」


 俺が手を差し出すと、如月さんは少し驚いたような表情をしたが、すぐに優しい目つきで手を握ってくれる。

「舞華(まいか)でいいわよ、歴人(れきと)君」

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