第23話 二十四時間オンライン野郎

 でも、今の俺は違う。高校生二度目の俺だ。友だちになる必要はないけど、どんな奴なのか観察しても面白いかもしれない。所詮高校生、俺より十歳も年下なんだから。


 エセドSがいなくなり、教室がざわざわする。次は一時間目か。授業。授業……? 勉強するの……? 高校の勉強の記憶なんか卒業とともに破り捨てたんだけど?

 一時間目は国語か。国語なら大丈夫だな、日本語だし。数学と物理になった瞬間詰む。大学も商学部だったから。というか大学の勉強の記憶も無いな。何して生きてたんだっけ。


 国語の授業が始まる。さっそく飽きた。教科書でも眺めてるか。お~~~羅生門、これは覚えてるぞ。芥川だろ。なんかばあちゃんが出てくるやつ。確か。後は忘れた。ダメだ、五十分授業なんて耐えられないよ……大学の講義の方が長いけど、語学以外はぼーっとしてれば過ぎるからマシだった。高校はクラスが決まってて、教師が全生徒の授業への姿勢を見てるから本当キツイ。教室が狭いんだよ。スマホ弄られないし。席が一番前じゃないのが救いか。


「ふぅ~……」


 やっと五十分過ぎて息を吐いた。


 ガタンッ。


「うお」


 急に大きな音がしたから振り向いたら、道端が立ち上がっただけだった。恥ずかしい。ごめんね。目が合う。ガタイもいいけど、目も一重の切れながら雰囲気あるぅ。


「……」

「何でもない。びっくりしただけ」

「……」


 道端はそのまま廊下に行ってしまった。無視かい。別にいいけど。傷ついてないけど。因縁つけられるよりはいいや。ケンカ強くないし。やっぱ見た目通り不良だったりするのかな。隠れて煙草吸うとか、はないな。いつの時代だよ。


 あ~~~~~ケンカって言えばヒーローやっちゃったんだ。由奈、もう忘れたかな。忘れないよな、あんな変態。変態を変態がやっつけたみたいな光景だったもんね。五年は忘れないわ。

 まあでも、変な輩に絡まれることは生活しててそうそう無いから大丈夫だろ。これから大人しく生きよ。決してフラグじゃない。


「堀塚~」

「ん?」


 後ろを向く。おッ間田まだだ! 俺の親友~!


 中学と大学はよっしーといたけど、よっしーがいない高校では間田といることが多かった。入学式の日に話しかけられたのがきっかけ。流行ってるゲームソフト全部買う姿勢がとても好感の持てる男だ。多分結婚式も来てくれてるんじゃないかな。


「道端に目ェつけられないようにしろよ。あいつやべぇよ。今日も一人病院送りにしてきたらしい」

「多分嘘でしょ」

「俺もそう思うけどさぁ、顔がやべぇじゃん。三人はあの世行きにさせてる顔じゃん」


 そうっぽい顔はしてるけど! 相手十五歳の未成年だからね。ちょっと可哀想になってきた。


「大丈夫だよ」

「堀塚実は強い感じ? 道端如きワンパンみたいな?」

「それはない」


 どうやったら身長二十センチ負けてる相手をワンパン出来ると思うんだ。でもこのどこまでも軽いノリが間田って実感する。こいつは多分彼女に浮気されても「マジやべぇ~。俺浮気されたんだけど、記念にパーティーしない?」みたいに誘ってきそう。このくらい適当だと人生楽しそうだよね。俺ももうちょっと不真面目に行きたいな。


「ちぇ~~ッもっとギャップ培えよ~」

「それより、いつ暇? ゲームしない?」

「するするぅ! 二十四時間暇じゃん! 常にオンラインだから、堀塚が暇になったらすぐしよ」

「いくらなんでも盛り過ぎだろ! 分かった。帰ったらやるね」

「よっしゃ!」


 二十四時間暇なのは詐欺だけど、間田ゲームガチ勢だから一緒にやってると俺もかなり成長出来ていいんだよね。アクションもパズルも何でも強い。その代わり勉強は出来ない。勉強時間ゼロって言ってた。


 二年で赤点が過ぎて会議にかけられて、補習に次ぐ補習と仲の良い連中でテスト範囲詰め込んでどうにか進級した伝説を持っている。それでも家では勉強しなかったらしい。頭おかしい。高校側もへたに留年すると一生いられると思って焦ったんだろうな。先生たち必死だったもん。

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