第22話 厨二に陰キャに一匹狼
しかし笑っている場合じゃない。謎の雑呪文とともに殴りかかってきた厨二をどうにかせねば。殴られるのは嫌だ。いや、そういえばこいつ。
ヒョイ。
「わぁぁ!?」
直前で避けると、厨二は自ら崩れて思い切り道端に倒れた。痛そう。片目が見えないと遠近感狂うよね。それ以前にこいつ、力がめちゃ弱かった。思い出してよかった。
「貴様、邪術を使ったな!」
「勝手に転んだだけだろう」
「何を言うか!」
「あ、おまわりさん!」
「卑怯者! 覚えていろ!」
いないおまわりさんに助けを求めたら、あいつは左目を押さえ文句を垂れながら逃げていった。左目設定最後まで忘れないのは立派だ。後は全部ダサい。二度と現れないでください。
「あの、有難う御座います」
「気にしなくていいよ。あいつウザかったし」
「あれ」
ッッあ~~~! 気を抜いて普段の話し方をしてしまった! バレる! ガバガバの俺、アホアホ!
「あはは~! さっきはあいつの設定に合わせてたんだよね~~~。そうしないと会話成り立たなさそうじゃん?」
すごい……人間って慌てるとどんどん悪い方向に進んじゃうんだ。せめて普段の俺と違う話し方をって思ったら変なチャラ男みたいになっちゃった。フルフェイスチャラ男、一体何なんだ俺は。
「では俺はこれで」
「待ってください」
がっしり腕を掴まれた。全然外せない。力強いねぇ~!
「お礼したいんで連絡先とか教えてください」
スマホを取り出そうと由奈が鞄を開けた隙に俺は逃げ出した。
「お礼なんかいいから! 変態野郎には気を付けてね~~~!」
「あっヘルメットさん!」
雑なあだ名を呼ばれた俺はそれを無視して爆走した。と見せかけ大回りして先ほどの木の陰に戻った。もちろん、ヘルメットを返すためだ。持ち主はまだ戻っていなかった。よかった。
「有難う御座います。バイクの人」
お礼を言って元の場所に置く。そして遠くに見える由奈とは違う通りを走り学校へ急いだ。
なんだかんだあったが、どうにか予鈴の五分前に着いた。初日から遅刻は担任に目を付けられるのでほっとした。横の席は空席だけどね。隣って誰だったかな~。
「席に着いてください」
隣が来る前に副担任が来た。担任は用事で遅れてるのかな。
確か名前は岡林なんちゃら。下の名前は忘れた。二十四歳男。常に敬語の眼鏡で注意してくるからドSキャラかと思いきや、緊張し過ぎて敬語になってしまう陰キャなのを俺は知っている。二十八歳の俺だから。この人一日に眼鏡くいってするの二十回はしてるんだよね。一回気になって毎日数えてたら、朝と帰り、担当授業だけで二十回だったんだよ。やばくない? つまり、実際はそれの倍はしてるってことだ。くいくいし過ぎて目元に擦り傷出来そう。
あ、隣の奴来た。
「道端君、もう少し早く登校してください」
「…………」
道端、そうだ道端だ。道端は岡林先生を人睨みすると、無言で席に座った。クラスの空気激重。先生も数秒黙って、結局注意することなく出席の続きを呼び始めた。怖いんだ。道端の身長百九十だから無理もない。陰キャには荷が重いよ。
ちらりと横目で見る。道端ってどんなキャラだったかな。いつも遅刻ぎりぎりに来て昼休みは教室にいなかったらから、ほとんど話すことなく席替えした気がする。誰とも話さない一匹狼って感じ。見た目が怖いもん。元々の知り合いじゃない限り進んで友だちになろうとは思わない。
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