第24話 バレりーな
二時間目三時間目とどうにかこなし、昼休みになった。由奈は探りに来なかった。当然だ。こっちは一度も会ったことがない上ヘルメットを被った状態だったんだから。もし顔見知りだったとしても、あれで分かったとしたらとんだ変態だ。
「…………」
間田と学食で食べて廊下をふらついていたら道端に会った。やっぱでかいな……向こうから歩いてきただけなのに、廊下を塞がれているみたいに感じる。
なんていうか、ゴーレム。そうだ、ゴーレムっぽい。顔つきもごついし。さしずめここはダンジョンか。俺は勇者っていう柄じゃないからゴーレムに押し潰されてすぐゲームオーバーだけど。
隣の席だけど話したことはないので、道端が俺のことを認識しているか怪しい。ここはスルーして通り過ぎるか。目を合わせないよう体をずらして距離を取りつつ通ろうとしたら、道端が俺の通り道を塞いだ。わざわざ一歩横にずれて俺の前に立ちやがった。なんで。
「…………当たり」
何が!?
怖いよぉ……俺の周り変なのばっかり集まってくるよぉ……。当たりって何、懸賞にでも応募してたの……。
でも、俺を見てるよね。俺を見て「当たり」って言ったよね。つまり、俺が当たりなわけだ。全然分からないけどハズレがよかった。当たりでも景品はもらえそうにない。
「えーと、俺に用事?」
「…………」
こくり。
無言で小さく頷かれた。
これが犬とかだったら可愛いのかもしれないけど、いかんせん目つきの怖い百九十の大男だもんなぁ。しばかれる未来しか見えない絵面だよぉ。何もしてないよね、隣の席に座ったことが気に食わなかったの? でも加害者の気まぐれってそんな小さいことから始まるらしい。俺は平穏に過ごしたいだけなのに!
「そうなんだ。何かあるなら聞くよ」
「……あっち」
窓の外を指差された。
……あ~~~~~~体育館裏。
なるほどね! うん。なるほど。
分かった。帰ろう。家に帰ろう。
「えーと、ここじゃダメな感じかな?」
「…………」
「何もしない?」
道端は五秒待って頷いた。
その間何ィ~~~~~!?
やっぱり何かされるんだろうか。というか何もなかったら体育館裏に呼び出さないもんね。家に帰る暇も与えてもらえず、俺は食べられるために車に乗せられた牛の如く道端の前を歩いた。後ろ歩こうとしたのに、俺が動くまで道端は動いてくれなかった。逃げるのを見越したプロの行動だ。無理。
「――あっ」
間田が階段を下りてきた。間田! 助けて! 間田! 俺のヒーローになって!
「うんうん」
俺の願い虚しく、間田は両手でサムズアップして教室に入っていった。助けろ!
数時間前の俺、ダメだったわ。やっぱ十五歳でも人による。
昼休みあと十五分か……十五分なら死なないで済むよね……ね……?
体育館裏はうまい具合に誰もいなかった。まあ、いないよね。不良がたむろしているのはマンガの世界だけだった。不良マンガ好きなのに。
道端を見上げる。ねえ、十五歳、もうちょっと可愛げあるよね。家では「お母さん、ご飯まだ~」とか言ってる年齢じゃん。道端だって可愛い頃があったでしょ。十八歳までは可愛くていいと思う。世の中疑って一人生きていくのは成人してからでも遅くないよ。
「それで、あそこでは言えないことって何かな」
いつまでも口を開けてくれないから俺から聞く羽目になった。言いにくいんならもう止めよ。
「朝」
「朝?」
予想とは違う出だしにオウム返ししてしまう。同じこと言ってんじゃねぇって殴ってこないよな。反射で両手を挙げて変なポーズになっちゃった。恥ずかし。
「してた」
「何を?」
無口なのか単純に言葉が足りない人間なのか定かではないけど主語や目的語って大事だなって思いました。
全然分からない。脈絡が無い。通訳を! 誰か通訳の方いらっしゃいませんか!
「ヒーロー」
「わああああああ!」
急に核心ついてくるやん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます