第6話 疲れた時は猫を吸うとイイらしい

 それにしてもカメラか。仕事じゃなくて趣味だった。いつの間に。人間、変わるもんだな。楽しそうで何より。一人で出来る趣味っていいなあ。あれ、俺って、趣味無いな?

 山手線を逆戻りしながら考える。趣味……欲しい。今まで生活がイコール由奈みたいな感じだったから、夢中になるものを作りたい。

 と言っても、カメラは軍資金が必要そう。インドアだから旅行も難しい。もっとこう、近場か家で出来るような。


「はッ!」


 ドアが開いたと思ったら降りる駅だった。慌ててホームに降りる。もし乗り遅れても三分待てば逆の電車に乗れるけど、そこは気分の問題だ。

 乗り換えて三駅、最寄りに着いた。もう二十二時過ぎちゃった。一人ラーメンは気分じゃないからこのまま帰って寝よ。それで明日は九時までごろごろしてやる。


「あ~~~疲れた」


 部屋に入り、ベッドに倒れ込む。お風呂入らなきゃ。めんど。スマホスマホ……。


「スマホォ!?」


 画面を見たら、着信が十件着ていた。全部由奈。ぜ~~~~んぶ由奈!

 嘘ォ……バイバイしてまだ一時間じゃん……あっちはとっくに帰宅してるだろうけど、こっちは途中まで送ったからやっと今着いたんだよ。


「まさか何かあった……?」


 万が一を想像して電話する。一秒で出た。


『どこ?』

「家だけど。GPSで分かるじゃん」

『そうだけど、ちゃんと蓮君の声で聴きたかったの』

「そう。大丈夫、ちゃんと家着いたから」

『分かった。おやすみ』

「うん。おやすみ」


 終了ボタンを五連打した。


 ベッドの上で体育座りする。


 顔に力が入らない。


 あれ、由奈って五年前でこんなんだったっけ。もっと自由だったと思う。

 もしかして、すでに歴史が変わってきてる? 俺が同じ行動しないから。そういえば、よっしーのカメラ趣味も初めて知った。たまたま今回あそこに俺がいて、よっしーと会ったから。二人の間だけじゃなくて、他の人も巻き込んでいる。

 これはどうすればいいんだろう。良い方向に行っているのかすら判断つかない。でも、距離を置くのはバッドエンドに一歩近づいたよな? 誰か肯定してほしい!


「よっしーに相談……頭の病院紹介されるだけか」


 しかも、ループした理由がおそらく由奈から逃げたいという気持ちが強かったから。多分これ。そして死んでこっちに来ている。信じてもらえたとしても、今度はよっしーの心が折れそう。よっしーを当事者に入れるわけにはいかない。共通の友人ですらないんだから。

 この時点で出来ることはない。とりあえず寝よう。寝不足で判断が鈍っているだけかもしれない。そうだそうだ。


「お風呂は明日~……」


 かろうじてスーツをハンガーに掛けて、薄手の毛布にくるまった。五月で暖かくなったけど、このもふもふ具合が手放せないんだよね。猫飼おうかな。

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