第991話 新婚生活スタート
結婚式を終えて一週間ほど経過したある日……。
僕とレベッカの二人は長老様からのお屋敷を出て村で使われていなかった空き家に移り住むことになった。
「今日からレイ様との新婚生活が始まるのでございますね……♪」
「そ、そういう事になるのかな……」
「レイ様、まずは村の道具屋さんに参りましょう」
「うん。必要な物は……」
キラキラ目を輝かせるレベッカと僕は、長老様に言われた通りの場所に向かいながら村を散策していた。生活の為に必需品となる道具を村の人達から取り寄せて、その後僕達の仮の新居に向かう。
ちなみに姉さん達は引き続き長老様の屋敷でお世話になる。
先の結婚式は村の人達には僕とレベッカ二人で結婚したことになっており、姉さん達と結婚したことは伏せられている。これはウィンターさんの要望であり、少なくともこの村に滞在している間はレベッカの事を優先してほしいとの事だった。
ちなみに、ウィンターさんに頼まれたことは他にもいくつかあり……。
①レベッカの花嫁修業を兼ねて、彼女に家の雑務や家事全般を任せてほしい。
②僕は村の人達と積極的に交流を交わし狩猟や狩りにも積極的に参加して、神子レベッカの伴侶として相応しい人物であることをアピールしてほしい。
③プライベートの外出の際はレベッカとなるべく共に行動して、仲睦まじい姿を村人達に見せつけてやってほしい。
……とまぁ、そんな感じだ。
実は他にもレベッカ絡みの事で頼まれたことがいくつかあるのだが、それに関してはとても口には出来ない。
ウィンターさん……。
まだ見た目こんな幼いレベッカと子づ……ゲホンゲホン……。
レベッカの不老不死化を止める為に必須とはいえ、そういった知識も乏しい今の彼女とそのような行為をするのはまだ早いと思う。
っていうか色んな意味で僕が持たない気がする……。
ちなみに長老様の家を出る前に姉さん達に如何わしい行為は禁止と強く言われてしまっている。
そんな事分かってるよ姉さん……。
「レイ様……?」
「あ、ごめんごめん」
僕は慌ててレベッカの手を握って二人で再び歩き出す。そして数分後、村で唯一の道具屋さんに辿り着く。村の人達が共同で運営しているお店で、ここで日用品や生活に必要な物を購入しているそうだ。
僕はレベッカと共に店の中に入ると、店員さんらしき男性が出迎えてくれた。
「いらっしゃい!……って、神子様……! それに神子様の伴侶の……」
「レイです。結婚式に来て下さってありがとうございます。これはお礼の品です……お納めください」
僕は前に出て事前に用意してあったお礼の品を男性に渡す。
「こ、これは……ありがとうございます! それで今日はどのような御用で……?」
「実は新居に移るために入用な道具がいくつかありまして……。それに新居に持っていきたい物もありますので、それの相談もしたいのですが……」
「分かりました。ではご案内します」
店員さんはそう言うと僕達を店の奥へと案内してくれた。
それから一時間程、僕とレベッカは必要な物を見繕ってお店を出た。
「よし、じゃあ次は……」
「ベッドやテーブルなどでございますね」
レベッカと相談をしながら必要な物を考えていく。
その過程で色々な場所に立ち寄り、村の人達に僕の顔を覚えてもらって、交流を深めていこうとウィンターさんからアドバイスを頂いている。
長老様やラティマーさんは村の人達も僕達に対して好意的だと言っていたが、果たしてどうなのだろうか……。
しかし、そんな不安は杞憂だった。
何故かというと、長老様が以前から僕の事を『婿殿』と大声で散々村で宣伝していたのもあって十分に村人達から認知されていたからだ。
そして長老様から事前に話を伺っていた村の人達は僕の事を快く受け入れてくれて、道具屋さんで買い物をする際にも『神子様の伴侶として頑張って』や『神子様を幸せにしてあげてね』など温かい言葉をかけてくれた。
そんなこんなで僕達は新居の為の準備を整えて、少し村から離れた空き家へと足を運んだ。空き家だった場所は僕達が住むために多少修繕されたのか、外観はある程度綺麗になっていた。
「ここが私達の新居でございますね♪」
レベッカはそう言って空き家の中に入っていく。僕もその後についていく。
中はあまり広くなくて、玄関と台所にリビングそして寝室があるだけだった。二人で暮らすには問題ないが、姉さん達が遊びに来た時は少々手狭になることが予想出来る。
とはいえ仮の住居であり、数カ月後には王都に帰るので一時的な住居だと考えれば十分だろう。
「まずは掃除かな?」
「はい。頑張りましょう、レイ様♪」
「うん」
僕とレベッカは張り切って早速掃除に取り掛かる。まずは僕達の寝る寝室を綺麗に掃除して、新居に持ち込んだ家具類を配置していく。
「ふう……これでよしっと」
作業開始から数時間後、ある程度家の体裁が整ったので休憩することにする。
そうして小休憩を挟んで、今度は新居のお風呂とトイレを掃除する。
こちらも特に問題なく終わったので、次は生活に必要な消耗品などを購入してこようと外出の準備をしようとしていたその時だった。
「……ん?」
外からこちらに向かってくる足音が聞こえてきたので、いったん外に出てみると―――
「あ、みんな」
そこには、僕達を心配して様子を見に来てくれた仲間の姿があった。外に出た僕の姿を見ると、一番前を歩いていた姉さんとカレンさんが手を振ってくれた。
「やっほー、レイくん」
「お疲れ様。きっと忙しいと思って、生活に必要そうな物をいくつか買ってきたわよ」
「ありがとう、姉さん。カレンさんもありがとう」
僕は二人にお礼を言うと、一緒に来てくれた仲間たちも僕達に声をかけていく。
「サクライくん、大変だと思って手伝いに来たよー」
「ちょっと来るの遅れてしまったので、もしかして殆ど終わってたりしますか?」
次にルナとエミリアが声を掛けてくる。ルナとエミリアはこっちにはまだ置いてなかった箒とちりとりを持参してきていた。
「いやまだ途中」
「そうですか、なら私たちも手伝います」
「うん。ありがとう二人とも」
そうして他の皆も次々と家の中に入ってくる。僕も家の中に戻ると手狭な家の中が随分と窮屈になってしまっていた。
「皆様……もしかしてお手伝いに来て下さったのですか?」
「うん。これならきっとすぐに終わるね」
そうして僕達は皆の手を借りて一日で家の掃除をほぼ終わらせることが出来た。
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