第929話 ソロ戦闘開始
前回までのあらすじ。
エミリアの危機に駆けつけるレイ。何気にブチギレモード。以上。
【視点:レイ】
彼女が戦線から遠ざかるのを気配で感じた僕は小さく息を付く。
「……さて」
僕は対峙する化け物……アカメは
下半身は獰猛な野生動物だが上半身はスケルトンのように肋骨がむき出した形状の化け物を見つめて剣を構える。この世界に転生して色々な魔物と遭遇してきたがこれほど奇妙な魔物は見た事が無い。
近くに居るだけで鼻をつまみたくなる悪臭と瘴気をまき散らすキマイラを視界に収めた僕は細心の注意を払いつつ戦力分析を開始する。
僕の所持する技能……”心眼看破”は敵の行動パターンをある程度予測する以外にも、自身を基準に相手の能力を測る事が出来る。
前者の使い方ならともかく、後者はパーティ戦だと常に入り乱れて戦う事になるので滅多に使用できないが、この状況下ならば問題なく使用可能だ。
「―――技能、心眼看破」
僕は神経を尖らせて心眼看破を使い、キマイラの戦力と特性を測り取る。
攻撃力分析:
奴の牙や爪は人間相手なら直撃すれば全て即死級の威力を持つ。背中から飛び出してくる触手は神経を麻痺させる毒を分泌しており、また数十メートルの距離を一瞬で駆け抜け獲物の脳幹を撃ち抜く攻撃を繰り出してくる。
事実、僕はこの触手によって腹を貫かれて瀕死の重傷を負ってしまった。
防御力分析:
並大抵の攻撃では弾かれてしまう硬質化した皮膚を持つ。オリハルコン級の素材の武器でないとまともなダメージを与えることが出来ない。貫通力に特化した弓矢の攻撃、または上級攻撃魔法でないと有効打にならないだろう。
しかしそれ以上に厄介なのは再生能力。多少ダメージを与えても数秒後には治癒が始まり、即死級のダメージを与えても復活を繰り返す。おそらく制限があるはずだが……。
素早さ分析:
アカメやレベッカほどではないが、強靭な獣の半身を持つだけあって機動力はかなり高い。また背中から飛び出している触手を束ねて翼のように空を飛ぶことも可能。その瞬発力は侮れない。
ただし、万全の今の状態であれば基本的な速度はこちらが上回る。
魔力分析:
滅多に使ってこないが闇属性の攻撃魔法をいくつか使用する。威力そのものは低くないが、どちらかといえばその付与効果の方が厄介。
必要以上に警戒する能力ではないが、浴び過ぎると魔力を削られてしまう可能性があるため注意。
総合分析:
単純な攻撃力と防御力においては魔王をも大幅に上回る。魔力に関しては魔王に及ばないものの、見た目の大きさに反して俊敏であり機動力においては同格、瞬発力はこちらが圧倒的に上だ。
僕が今まで戦った魔物の中で最も強い。しかし―――
「―――勝てない相手じゃない」
僕はそう一言呟くと、初速の技能を用いて瞬間加速してキマイラの懐に潜り込み、剣の連続攻撃を叩き込む。
「剣技――<五連斬撃>」
以前の三連斬を更に進化させた連続攻撃。
本来は対人用の技で初撃に相手の顔面相手にフェイントを掛けてから、急停止からの踏み込みに力を込めた上で四連撃剣技を放つ攻撃である。
だが今回の相手は対人でなく魔物。故に一撃の威力を重視して五連続の斬撃に魔力を乗せて放つ。
一撃一撃の威力が上がった超高速攻撃によりキマイラの身体は切り刻まれていき、トドメに炎魔法で追撃を行う。
「
通常の火球の三倍程度の熱量の炎がキマイラの再生した部分を焼き尽くす。
『GAAAAAAAA!』
悲鳴が木霊し、キマイラの身体からコゲ臭い匂いが周囲にまき散らされる。
しかし、キマイラも一方的にやられるわけじゃない。炎に焼かれながらもキマイラは急速に再生を開始し、すぐに前脚の鋭い爪を僕の顔面めがけて突き出してくる。
その攻撃を剣でガキンと受け止めるが、次はキマイラの背中から引き伸ばされた二つの触手が僕の死角から襲い掛かってくる。
「!」
だが目の前の化け物の殺意が強いせいで逆にこちらはその攻撃の気配を正確に捉えることが出来る。触手の一本がこちらの背に直撃する寸前に僕は一瞬だけ反転してその攻撃を迎撃し斬り飛ばす。
更に背後に気配を感じて軸足で地面を強く蹴って前進してジャンプし、空中で一回転してキマイラの方に向き直る。
そして剣を袈裟に構えて自身の魔力を集中。同時に聖剣の力の一端を開放する。
膨大なエネルギーを放出する聖剣の力により、僕の身体は飛行魔法を使わずとも落下の速度が緩和されてスローモーションのようにゆっくりと地上に落ちていく。
そして集中した魔力を聖剣に転化。
僕の魔力を受けた聖剣は光のエネルギーを天高くに放出し―――
「――聖剣技
技の発動と同時に、地上に蒼く煌めく浄化の波動がキマイラを包み込んだ。
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