第921話 苦しい戦い

 前回のあらすじ。


 ルナとレベッカの渾身の一撃で化け物のストックを1つ削った。だがそれで戦いが終わるわけもなく再び復活を始めた化け物を今度こそ仕留めるために、僕達が果敢に立ち向かうのだった。


 ルナとレベッカの全力の一撃により化け物の不意を突いた開戦の合図は無事に成功した。ここからは作戦通りに各々の役割と考えて動く。


「カレンさんと僕は最前線!! 隙が出来たら容赦なく斬り掛かるよ」


「任せなさいっ!!」


 僕とカレンさんは並んで化け物の正面に突っ込んでいく。


「レベッカとアカメはあの化け物をかく乱して注意を引いて!!」


「了解!」


「善処する……!」


 僕の声にアカメとレベッカは素直に応じる。


「姉さんとノルンは支援よろしく! 特にノルンの妨害を期待してる!!」


「任せて」


「ねぇレイくん。ノルンちゃん頼るのはいいけどお姉ちゃんももっと頼って……!」


 ノルンは僕の言葉に淡々と応じるのに姉さんは若干不満気だ。


「ね、姉さんの支援にも期待してるよっ!!」


「レイくん……♪」


 姉さんは僕の言葉に機嫌を良くしたようで、嬉しそうに微笑んでくれた。


「弟も大変ね……」


 横でカレンさんが微妙な表情をしていた。察してくれるだけでもちょっと嬉しい。そして僕は上空で待機しているルナに叫ぶ。


「ルナ、敵の動きをしっかり見てて! もし何か怪しい動きをしたら僕達に合図を送って!」


『分かった!!』


 ルナはそう元気に応えると、彼女は雲に紛れて僕達の戦闘をずっと見続けている。


「よし、カレンさん。あいつの再生が終わる前に追撃するよ!」


「ええ、相手に反撃を許さず、速攻で次の攻撃に移る。それが生き残るための鉄則だからねっ!」


 カレンさんはそう言いながら聖剣に自身の魔力を纏わせて化け物を斬り付け、カレンさんが一歩引いたところで僕が前に出て攻撃を仕掛ける。


 この化け物は復活する能力だけではなく元々の防御力の高さと攻撃力も厄介だ。通常のアカメの魔法程度では傷一つ付かず、レベッカの射撃も魔力で威力を底上げしないと傷を付けられない。


 正面から素でまともにダメージを与えられるのは僕とカレンさんかルナの魔法攻撃くらいのものである。


 かといって僕達二人だけで戦うというのも無理がある。


 こちらも姉さんの補助で回復能力を底上げしているといってもスタミナはそう長く続かないし、化け物が僕達二人を警戒して守りに入られてしまうと手数で押し切るのも難しくなる。


 そうなれば一撃必殺に頼るしか無くなるが、それではこちらが持たない。


「――っ!」


 攻撃の予兆を感知した僕とカレンさんは即座に化け物から距離を取る。予想通り化け物はこちらに攻撃を仕掛けようと触手を伸ばしてこちらを捉えようとしていた。


 だがそうは問屋が卸さない。


「はぁ!」


 化け物の左側からレベッカの矢が空気を切り裂きながら化け物の横っ腹に突き刺さる。


 こちらに攻撃を仕掛けようとしていた化け物は不意を突かれたせいで攻撃を中断してレベッカの方に向き直る。だが、その直後、今度は右側からアカメの魔法攻撃が化け物に飛んでくる。


 二人の支援により隙を晒したことで、僕とカレンさんは頷き合い今度は同時攻撃を仕掛ける。


「たあああっ!!」

「やああっ!!」


 僕とカレンさんの連携を意識した二段攻撃を喰らった化け物は、上半身と下半身を両断され再び残機を一つ失う。


 というわけで僕達が考えた戦術は、僕達が息切れする前に左右からレベッカとアカメに攻撃を仕掛けてもらい魔物を注意を引き付ける。そして魔物の注意が二人に向いた瞬間に僕とカレンさんが一気に殺しに掛かるというやり方だ。


 僕達の誰か一人に敵愾心が集中しないようにタイミングをずらしながら誰かが攻撃を仕掛けて注意を引く。これなら誰かに魔物の攻撃が集中する前に倒せるのでこちらが攻撃を受けるリスクも低下できる。


 最終的なトドメ要因は基本的に僕かカレンさんの二択になってしまうが、残りの二人も溜めさえあれば強烈な一撃で化け物に致命傷を与えられる。


 勿論、これだけで終わるとも考えずこちらの連携が乱れた場合の保険も考えてある。


 後方からのノルンの使用する妨害・弱体化魔法。上空から全体の動きを俯瞰して時折攻撃支援や敵の動きを見て指示を出してくれるルナ。


 緊急時には姉さんの結界魔法や防御魔法で致命的な攻撃を防いだり、一瞬相手を結界で固めて態勢を立て直す。


 それでも厳しいと判断した場合、僕かカレンさんの聖剣の力を解放した一撃を叩き込んで強引に化け物を仕留める。


 スタミナと魔力を大きく消耗してしまう事になるが、誰かが殺されてしまう事を考えたらマシだろう。


 この作戦は長期戦を前提にして極力リスクを減らすために皆で考えた戦術だ。


 そうして絶えず戦い続けられるのも皆の戦闘への知識と能力の高さがあるからこそである。


 そうやって僕達は三時間程この化け物相手に粘り続けた。


 ここまでで何度化け物のストックを削っただろうか。おそらく最初と合わせて既に十五回は殺している。倒しても放っておけば一分で完全復活を遂げるこの化け物を相手にする僕達の体力は当然有限であり、同時に集中力も相応に消耗してくる。


「……はぁ……はぁ……」


「……カレンさん、大丈夫!?」


「だ、大丈夫……ベルフラウさん、自動回復の掛け直しお願い!」


 息切れをしかけていたカレンさんに声を掛けて、カレンさんの要望で姉さんに補助魔法の掛け直しをお願いする。


「――彼の者に癒しの加護を……! <自動回復>リジェネレイト


 そして一〇秒も立たずに姉さんが補助魔法を掛け直すが……戦闘を開始して魔法の掛け直したのはこれが最初ではない。補助魔法は効果が発揮されなければ長持ちするが、持続的に戦い続けていればその分効果時間の消費も激しくなる。


 結果、二〇分に一回は僕達は補助魔法や強化魔法を掛け直している。長時間の戦闘で神経こそ使うが連携が取れている間は戦っていられるが、いずれこちらの体力が切れてしまう。


 どこかで勝負を決めないと……!


 不死身の化け物を相手にするプレッシャーの中、僕達は焦りが見え始めていた。

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