第920話 再戦、合成生物
前回までのあらすじ。
久しぶりに訪れたレイ達は旧友の冒険者ギルドの事務員のミライと再会する。
彼女に依頼を頼まれたレイ達は北の山にて魔物の掃討を正体不明の魔物の調査を依頼される。
しかし、その正体不明の魔物は魔王軍すら手を焼く恐るべき存在。
もはや魔物と呼ぶには生ぬるい化け物だった。
レイ達はその化け物と交戦するのだが、何度倒しても即時再生するその異様な能力に苦戦する。
空間転移で現れたベルフラウとノルンと共に一旦撤退して作戦を練ることに。
そして、作戦を立てたレイ達は今度こそ不死身の化け物を討伐すべく戦いを挑むのだった。
「……そろそろかな。ルナ、少し高度を落としてゆっくり進もう」
『はーい』
頂上が近くなったので化け物に見つからない様に指示して、ルナは低空飛行をして山頂に近づく。
「レベッカ、ノルン。今の内に僕達に強化を掛けてくれる? 姉さんも防御魔法をお願い」
今回の戦い。はっきり言ってこちらに余裕はない。
体力も万全では無い僕達は、打てる策を全て打って挑まなくては勝ち目がない。
その為、強化魔法の効果時間をギリギリまで有効活用できるために戦闘の直前に魔法を掛けて優位な状況を作らなければならない。
そして三人は承諾五分程掛けて三人は僕達総勢七人に魔法を付与してくれた。
「レイ様、掛け終えました」
「ふぅ……戦う前から一仕事ね」
「二人は役割を分担できるからまだ良いじゃない……お姉ちゃんなんか一人で全員の防御魔法を掛けてるんだからね……っと」
最後に姉さんが僕に自動回復の魔法を掛けてくれる。これで今できる範囲では万全なはずだ。
「それじゃあルナ……頂上に近付いて。化け物の姿が見えたら、事前の打ち合わせ通り行くよ」
そして……。
「―――レイ様、姿が確認出来ました!」
先頭で正面を睨んでいたレベッカが化け物の姿を確認した。
「よし……それじゃあ、作戦開始。レベッカ、ルナ。最初の一撃はよろしくね……!」
僕はそう言って二人の名前を呼ぶと、ルナはドラゴンの首を大きく振って自身の背に乗っているレベッカに言う。
『じゃあレベッカちゃん、最初は私から行くね』
「お願いします。ルナ様」
二人はそうやり取りをしてまずはルナが魔法の準備を始める。
今回のルナは人間の姿ではなくて基本ドラゴンの姿を維持して僕達をサポートするのだが、最初だけは彼女は攻撃役だ。
『……炎よ、風よ、氷よ、雷よ……全部集まって集え……!!』
通常とは異なる彼女オリジナルの詠唱を行い、彼女は口に可能な限り魔力を集めていく。
集めた四属性のエネルギーはそれぞれ別種の魔法陣に供給されて更に力を増して彼女が可能なレベルにまで威力を底上げする。
その間に、レベッカの方も準備を整える。
レベッカは振り落とされないようにアカメに下半身を支えてもらいながら弓を取り出して矢を番えて準備を始める。
「(二人とも……頼むよ……!!)」
攻撃の主軸は僕とカレンさんだが、この距離で気付かれない位置からの攻撃が出来るのはこの二人だけだ。最初に二人の全力攻撃で敵に不意打ちを行いそれを起点にして一気に攻める。
こちらの余力が残っている間に可能な限り相手の残機を削り切る。
向こうが何度復活するかは定かではないが、それでも五十や百は無いと断言できる。
僕達の体力と魔力が尽きる前に可能な限り有利な状況を作り出す。
レベッカが弓矢を番えると、それに合わせて彼女の周囲の空間が少し歪む。
その揺らぎは時間と共に次第にその大きさを増して彼女が放つ攻撃の準備が整う。
彼女の得意とする魔法の影響が周囲にも出ているのだろう。
それとほぼ同時、ルナもその準備を終えたのか四つの魔法陣がルナの正面に集まり一か所に重なる。
『サクライくん、準備完了だよ!』
「レイ様、準備完了でございます」
ルナとエミリアは同時に僕に準備完了の合図を送る。
「……よし、皆。絶対に勝つよ……! ……戦闘、開始!!!」
僕はそう叫んで剣を化け物の方向に突き向ける。
そして、それを合図としてルナは今まで集中させていた魔法を解き放つ。
『これが今の私の全力――――!!!
四つに重なった魔法陣から赤、青、緑、黄の四色の極大のレーザーが撃ちだされる。
そして、そのレーザーは狙いを誤らず不死身の化け物に向けて直進する。彼女の放った魔法のエネルギーが化け物の肉体を包み込むとその肉体を削り取り確実にダメージを与えていく。
そして、彼女の攻撃が収まる寸前にレベッカが今まで構えていた矢を解き放つ。
彼女の矢は空間をルナの放った魔法のレーザーを斬り裂きながら突き進み、徐々に轟音を上げながら化け物へと到達する。そして、その矢の一撃は見事に化け物の脳天を貫いて奴の頭を吹き飛ばして地面に縫い留めた。
……おそらく、これであの化け物は命を失ったはずだ。
……あくまで、一つだけだが。
レベッカの矢によって破裂した化け物の頭は時間の逆戻しのように再生を始め、ルナの魔法によって削り取られていた肉体も元通りの戻っていく。
このふざけた回復能力は織り込み済みだ。
しかし、奴が回復している間は反撃が来ない事は1戦目で理解している。
だからこそここから可能な限り反撃を許さず攻め続ける。
「皆、畳みかけるよっ!! ルナ!!」
『うん!!』
僕がルナに指示を出すと彼女は一気に速度を上げて魔物に急接近して高度を落とす。そして僕達はそのまま地上に飛び降りて魔物に攻撃を仕掛けるのだった。
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