第894話 神様談義
前回までのあらすじ。
ベルフラウの元上司の女神フローネとまさかの遭遇を果たしたレイだったが、
緊張する二人とは裏腹にフローネは穏やかな表情で二人を食事に誘い、魔王の討伐を労ってくれ楽しい時間を過ごす。
そして、二人は女神フローネと再び会う約束した後、別れを告げたのだった。だがフローネは何かしらの目的があるようで、何者かに連絡を取ってレイ達の監視を命令されていた。
―――そして、次の日。
時間は朝。いつものように皆と朝食を摂っていたレイとベルフラウは、昨日の事を皆に話すのだった。
「――って事が昨日会ったのよ、フローネ様。元気そうで良かったわ」
「びっくりしたよ。綺麗な人だなぁって思って見てたんだけど突然話しかけられてさぁ。まさかそれが女神様とは思わなくて……」
「一番びっくりしたのはお姉ちゃんだけどね~」
二人は昨日の出来事を楽しそうに語る。
「へぇー、そんな事が……」
「ふむ……ベルフラウ様のお知り合いの女神様とは……」
食事を摂っていたエミリアとレベッカはその話に興味津々だった。
しかしよく事情を知らないアカメやノルンはあまり興味が無さそうな態度だった。
そして、ルナはというと……。
「……そのフローネ様って人が、私はこの世界に転移させた人なんだね」
「……」
彼女がそう呟くと、レイ達は全員沈黙する。ルナは手違いでドラゴンの肉体に転生してしまったせいで、本人は詳しく語らないが相当悲惨な目にあった。その事をそれとなく知っているレイとアカメは彼女の言葉に重い空気を感じ、他の皆はルナを気遣った。
すると、空気が重くなってしまったことを自覚したルナが無理矢理笑顔を作って言う。
「あ、怒ってるわけじゃないよ。ただ、私もちょっと会ってみたいなって思っただけで……」
「そっか……『機会があれば食事でもしよう』って言ってたから何処かでまた会えるんじゃないかな」
「きっと、フローネ様もルナちゃんの事を気にしていると思うわ」
レイとベルフラウがそうフォローすると、ルナは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。そんな会話の後、話題は他に移っていくのだが……。
「フローネ様はこの街に滞在してるのかな?」
「そうなんじゃないかしら。多分、魔王が討伐されたことで世界がどうなったのか、情報を収集しているんだと思うわ」
「女神様ってそんな事もするんだ……?」
「もしかして、神って暇なの?」
僕の疑問にアカメが容赦ない一言を放つ。
「……アカメ、流石にそれは言い過ぎじゃないかな」
「でも……」
「正直、アカメの言いたいこともちょっと分かります……。女神とか神様の存在を知った今でも、具体的に何をしてるのかよく分からないですし……」
食事を先に追えていたエミリアは苦いコーヒーを口にしながら、本人も苦い言葉を口にする。するとベルフラウが苦笑しながら語る。
「よく分からない……これでも人々の事を考えて一生懸命仕事してるのよ?
世界を管理する『天界』という場所があって、当時の私とフローネ様はその所属だったんだけど……そこで世界各地で何が起こってるのか把握して、人間に対処が難しい事があれば事前に対策したりとかね」
「人間に対処出来ないって具体的にどういう内容なんですか?」
「例えばその星に隕石が落ちてきそうな時とか、海や砂漠に魔物の群れが現れたりとかそういうの。その世界の神様に情報を送信して現場で対処してもらうこともあるけど、規模が大きいと自分達に可能な奇跡を起こして対処するしかなくなるの。放置してしまえば世界に住む生き物たちが何千何万と被害が出てしまうこともあるから、私たちもかなり神経を尖らせて仕事してるのよ」
「へぇー……それなのに、わざわざ地上に降りて情報収集とかするもんなんですか?」
「基本的に滅多にすることじゃないんだけど……魔王が出現して世界が荒れた直後だし、多分何かしらの理由があって地上に降りたんだと思うわ」
姉さんがそう推測して話すと、今まで話に加わらなかったノルンが言った。
「……もしかして、『主神』とやらの命令かしら」
そのノルンの言葉に姉さんは驚いて聞き返す。
「ノルンちゃん、主神様の事を知ってるの?」
「いえ、あまり詳しくは……巫女をやってた時代に以前の神様にちょっとだけ話を聞いたことがあるの。その神は原初の神にして、神の中でも規格外の力を持っていると聞いたわ」
「まぁ間違ってはいないわ。主神様は当時神様だった私やフローネ様と比較しても、文字通り次元が違うの。『全ての神々の頂点に君臨する絶対神』とまで言われた事もあるのよ」
「神様って沢山いるんですね」
「ええ、神様は沢山居るわよ。レイくんが居た世界なんて『八百万の神』なんて言葉があるくらい。それに神様も人と同じく世代交代することもあるからね」
「神様って不老不死じゃないんですか?」
「殆どの神様は不老不死よ? でも、神様がずっとその世界に居るわけじゃないし、何かあった時の為の後継者を探すことがあるのよ」
ベルフラウはそういってパンを頬張っているレベッカに視線を移す。
「……? ベルフラウ様、わたくしの顔に何か付いていますでしょうか?」
「な、なんでもない……」
「まぁ話は分かりましたよ。要するに神様も人間と大差ないんですね」
僕がそう言うと、ベルフラウと姉さんは「まぁそんなところよ」と笑う。
そうしてこの話は一旦終わることになる。しかし、この時の話が後に意味を持つことになるとはこの時誰も思いもしなかった。
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