第888話 ミリク様と征く③
前回のあらすじ。廃墟の王国で宝物探し中。僕とミリク様は王城の地下へと降りて、その最深部にある頑強な鉄格子に囲まれた場所にやってきた。
ミリク様は鉄格子を指差して言った。
『レイよ、この鉄格子斬ってくれんか』
「鉄格子を剣で斬れって無茶言いますね」
『出来るじゃろ?』
「まぁ……出来ますけど」
僕は仕方なく剣を鞘から取り出して鉄格子の一部を切り飛ばす。
『うむ、流石じゃな。では中に入るぞ』
ミリク様はそう言って僕の肩をポンと叩き、スタスタと鉄格子の先にある部屋へと入っていく。僕もミリク様の後ろに付いて中に入っていく。
「うわ、埃だらけ……」
中は随分と埃っぽく、僕は口を押えながらミリク様の後を追う。部屋の中は他と比べて頑強な造りの壁に囲まれており、先に進むと鎖で縛られた頑丈そうな木箱などが置かれていた。
他にもよく分からないものが沢山あるが、どれも埃や錆が酷くて分からない。
箱の中の一つを開けてみると、中には金貨らしきものが沢山詰め込まれていた。しかし年月が経ち過ぎているようでどれも錆びてボロボロだ。
他にも剣や盾なども詰め込まれているが、こちらはどれも風化していて殆ど使い物にならない。
『ふむ……どうやらここは宝物庫のようじゃの』
「宝物庫っていうと宝物がいっぱい置かれている場所ですよね。随分あっさり入れてしまいましたけど……」
『……しかし放置されて数百年経っておるからどれも風化して完全に使い物にならんの。
その金貨も磨けば使えるものもあるやもしれんが……いや、今流通している金貨とはデザインが大分違うから無理があるか……』
「そうなんですか?」
『旧暦の時代に使われていた金貨じゃからの。今使われてる金貨はこの頃のモノよりも貴金属の加工技術が数段上がっていて純度も高い。まぁ考古学者からすれば喉から手が出るほど欲しい代物じゃろうが、今の儂らには無用の長物じゃな』
「そうなんですか……それで、目的のモノはありましたか?」
『うむ、こっちじゃこっち』
ミリク様はそう言って部屋の隅にある石柱のようなものを指差した。そこには布に包まれた2メートルくらいの大きさの何かがあった。
僕はその布を取ってみるが、そこにあったのは……。
「鏡……ですね」
『うむ、目的の物に相違ないの』
見た感じ何の変哲もない
「本当にこれなんですか? ごく普通の鏡に見えるんですけど?」
『普通? 鏡の部分をよく見てみよ。儂らの姿が映っておるか?それとも消えておるか?』
ミリク様にそう言われて僕は鏡に映るミリク様の姿を見つめる。すると、そこに映っていたはずのミリク様の姿がぼやけていき、最終的には何も見えなくなってしまった。
「あれ? なんで?」
『この鏡は普通の物とは違うからのぅ。ともあれ、別に壊れているわけではないぞ。今は待機状態……お主の世界のPCで例えるなら、電源は入っておるが立ち上がっていない状態じゃの』
「この鏡で何をするんですか?」
『うむ。お主の今の状態を確認する。この鏡は”真鏡”といって鏡に映る者の詳細なデータを映し出す特殊な魔法が込められた魔道具である。
身長や体重、スリーサイズ、血液型、脂肪率、一日の平均睡眠時間等々、そして体内に存在する魔力量なども詳細に分かる優れものじゃ。アナライズの完全上位互換といってよいぞ』
「へぇー」
『では早速やるか。鏡の正面に立ってみよ』
「あ、はい」
僕は言われるままに鏡の正面に立つ。ミリク様がそれを見届けると、僕らから少し離れた場所に移動して手を翳す。
『――真鏡よ、彼の者の情報を我に示せ』
ミリク様がそう唱えると、鏡が光って僕の姿を映し出す。そして数秒後、その光は徐々に収まっていき……やがて完全に収まった。
しかし次の瞬間に、宝物庫の天井に何らかの文字がズラッと浮かび上がる。
「うわぁっ!? な、なんですかこれ!?」
『古代文字で書かれておるからお主には読めんか……ええと、何々……?
ほうほう……実は最初に女性を意識したのは小学三年生の時の新任女教師であったか……名前は……』
「ちょっ!? なんで知ってるんですか!?」
『いや、ここに書かれておるからのぅ……他にも、お主が初めておねしょした時とか……ふむ、性に目覚めたのは中学時代の―――』
「ああーーーーー!!!!」
僕は思わず大声を上げてミリク様の口を両手で塞ぐ。
『んむむっ!? んーーー! もがーーっ!』
「な、なんてことしてるんですか!? 人のプライバシーを無断で覗き見しないで下さい!!」
『むぐぐぐ……ぷはっ! いや、待て待て。勝手に浮かんだから儂は悪くないぞ!』
「じゃあ見ないでください!!」
『見んとお主の今の状態が分からんじゃろうが!!』
「ならどうでもいい部分は読み上げなくてもいいから、必要な部分だけお願いします!!」
『えぇ……? 儂、つまんないのぅ……』
「ミリク様だって、自分の事を勝手に全部知られてたら嫌じゃないですか?」
『いや、儂は隠す様な事は何もないぞ? 何ならこの場で全裸になっても何ら恥じることなど無い!』
ダメだ、この人は特殊過ぎる。僕は内心ため息を吐く。
「とりあえず……必要な部分だけ読み上げてください」
『むぅ……仕方ないのう……』
そう言ってミリク様は渋々と僕の真鏡に浮かび上がった文字を読み上げていく。そして、それらを読み上げ終わるのに大体15分くらい掛かったのだった……。
『……よし、お主の状態が大体分かったぞ。お主、儂以外の女神に”勇者”としての加護を与えられておったのじゃな』
「え……? それって、どういう意味ですか?」
『お主は最近まで三人分の女神パワーを受けておったということになる。
人間が勇者に極限進化する為に必要な女神パワーは上位女神一人分で十分なのだが、儂がパワーを与える前に誰か別の女神が半端にパワーを注ぎ込んだせいで中途半端な状態になっていたのじゃ。
だが今は儂の力が消えたことで以前よりも出力が安定するようになったと……まぁそういう事じゃろうな』
「……それってもしかして、姉さん……ベルフラウ様が?」
『十中八九、一人はベルフラウじゃろうな。……しかし、それ以外に別の女神の力も注ぎ込まれているらしい……うーむ、分からん。レイよ、何か心当たりはあるか?』
「僕が知ってるのは姉さんとミリク様、イリスティリア様の三人だけですよ」
『もう一人がイリスティリアではないのは確かじゃぞ。あやつのパワーはサクラの方に全振りしておるからの。それに、あやつのパワーは儂と同程度じゃからお主に注ぎ込む余裕はないはず』
「そうなんですか……」
『うーむ……ここに来れば全部分かるかと思ったんじゃが……謎が増えてしまったのぅ……』
「まぁ僕としては別になんでも良いんですけど」
『神様側からするとかなり面倒くさいのじゃがな……死んだ後の転生先の手続きとか……』
「あー……大変そうですね」
『まぁ良いわ……用事も終わったことだし、名残惜しいがそろそろ帰るとするか』
「はいはい」
僕はミリク様に同意して立ち上がる。そして僕らは宝物庫から出ていき……そのまま王城の外へと出るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます