第883話 ミリク様に相談しよう!

 前回のあらすじ。これ、一応エンディング後の話ですよね?

 ラスボス倒した後に魔王100回倒せとか聞いてないんですけど?


 事を済ませた後、僕達は宿に戻って今後の事を話し合う事になった。

 

 雑談室に集まった皆に向かって、僕は一言。


「ミリク様の策略によって『魔王の魂100回倒して世界を救おう作戦』を押し付けられたわけだけど、皆……何か言いたい事ある……?」


「……」


 皆の僕に向ける複雑な表情が胃にチクチク来る。


 頭ごなしに否定したり反対するような人達じゃないからこそ、この反応で「本当は嫌なんだろうなぁ」という感情が伝わってきてしまう。


「本当にゴメン」


「いや、別にレイのせいじゃないですし……」


 僕の謝罪でエミリアがフォローを入れてくれた。


「レイ様、わたくし達も覚悟を決めて返事をしたのでございます。ですので謝罪は必要ございませんよ。頭をお上げくださいまし」


「……その通り、お兄ちゃん。今はどうやって残りの魔王の魂とやらを全部倒すのかを考えるべき……」


「そうね。出来ることからコツコツとやっていきましょう」


「そ、そうしよう……うん……」


 僕は皆の前向きな発言にホッとしながら頭を上げた。


「それで、具体的に何をしたらいいのかしら?」


 カレンさんが僕達を見回しながらそう尋ねる。その質問に対して、僕ではなくエミリアが答えた。


「こちらから魔王の魂を探しに行くのは非効率ですね。アカメの所持する”白玉”を使えば居場所を見つけ出せるといえども、何処を飛んでいるかは分かりませんし、今まで通り白玉”が反応したら私たちが出向くって形になりますね」


「消極的ね……もっと効率よく魔王を潰す方法無いかしらね」


「言葉に棘が出てますよカレン。貴女、一応大貴族のお嬢様なんですから暴言っぽい言葉は控えた方が」


「エミリアがそれを言うの……?」


「私はカレンと比べて育ちがあんまり良くないので」


 普段のエミリアの口調は丁寧なんだけど、時々言葉が乱れることがある。あれが彼女の素なんだろう。


「うーん、効率よく魔王を見つける方法か……」


 僕達がこの街を拠点にする以上、あまり遠く離れた場所に向かうことは難しい。


 前回、世界を巡るとは言ったものの、僕自身は他にやることがあるし冒険者業を続けているエミリア達もこの街の専属のような雇用状態になってしまっている。


 数日街から離れるくらいなら問題ないんだけど、1週間2週間となると流石に手続きが面倒だ。


「……なら、お兄ちゃん。私とルナの二人で毎日周囲を捜索するのはどう?」


 アカメの提案だ。自分を指名されてルナも少し驚いてたようだけど、彼女の能力を考えるならば妥当な提案だ。


 ルナは僕を除けばアカメと一番仲が良いし、そういう意味でも相性は良いだろう。


「かなり面倒だと思うよ? 良いの?」


「私はいつも世話になってる身分だからこれくらい働かないと申し訳立たない。ただ、ルナには負担を掛けてしまう……」


 アカメは申し訳なさそうにルナを見つめるが、ルナは笑顔で答える。


「うん、大丈夫。どうせ暇だし」


「……なら問題ない。お兄ちゃん、そんな感じで良い?」


「……アカメの持つ”白玉”しか魔王を探す手段がない以上、アカメに動いて貰わないとどうしようもないか……」


 僕は渋々、その提案に同意する。だが……。


「僕がミリク様に掛け合ってみるよ。”白玉”が僕達全員分あれば全員別行動していても気配を感知できるし、その方がいいと思うんだ」


 以前聞いた話だと量産できるかどうかちょっと怪しいかもだけど、効率を考えるならそれが一番だろう。


 

 そして、次の日。僕は一人でミリク様に会いに行って頼みに行った。


 ◆◇◆


「……ということで、”白玉”の量産をお願いします」


『う、うむ……しかし、あれはあれで開発費が相当掛かっているのじゃが……』


「そこは神様の権能でどうにかしてくださいよ」


『お主、最近儂に対して遠慮がなくなってきたのう……』


 日常的に神様と顔合わせしてるからね、仕方ないね。


『まぁ開発費の方は、儂の力でレアアイテムを量産(コピペ)して色んな所で売買すればどうにかなるかもしれんが……』


 希少価値のあるアイテムを量産してしまうと、価格が暴落して市場が崩壊してしまうのでは?


『問題は時間の方じゃの……ううむ儂の囲いの信徒を増員して量産を急がせるかのう……』


「え、そんなあっさり出来るもんなんですか?」


『うむ。以前の儂であれば苦労したじゃろうが、今の儂の信仰はうなぎ登りに上がり続けておるからの。ちょっと奇跡を起こして信徒に騒がせれば、新たな信者を獲得できるかもしれんの』


「(こんな雑な神様の信者さん達が不憫だ……)」


『レイ、今お主が何を考えたかは手に取るように分かるぞ。だが仕方ないのじゃ……これも儂に出来ることを出来る範囲で頑張った結果じゃからのう……』


 それを言われたらこっちもそうですかとしか言いようがない。


「あの、信者さんを大切にしてあげてくださいね」


『うむ!』


「うむ!じゃないんですが……まぁ、僕が文句を言っても仕方ないか。量産の目途はつきそうってことです?」


『うーむ、信徒どもに発破をかけてみなければ分からんがの』


「ちなみにどうやって発破を掛けるつもりなんです?」


『ふふふ、儂は神であるぞ? やろうと思えば信者全員に心の中に話しかけたり、夜に化けて出たりと自由自在じゃぞ?』


「後半はそれ亡霊か何かですよね」


『あとは、そうじゃな……ううむ、神社を作ってお賽銭を増やして資金を増やすという手も』


 この人、本当に神様名乗って良い人物なのだろうか。


 その後、なんとか話が纏まって僕は宿に戻ってきた。それから二週間ほど経過し、僕達の元に荷物が届いた。大きな木箱に詰められていた荷物を確認すると、そこには複数の白玉が丁重に包装されていた。


「ええと、送り元は……『大地の女神ミリク様ファンクラブ事務所』……ファンクラブ……?」


 信者とは一体……。

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