第882話 魔王狩り、始めます
前回までのあらすじ。
魔王を無事に倒したと思ったらまだ100体も残っていると告げられた。以上。
「ミリク様、流石にそれは無茶振りが過ぎるのではないでしょうか」
ミリク様の魔王100体ぶち転がせ宣言に、信徒のレベッカですら苦言を呈す。ミリク様も流石に悪いと思ったのか、少し焦ったような声で言う。
――ううむ、そうは言うがのぅレベッカよ。
――魔王をどうにかしたいと言っていたのは元々お主らであろう?儂はお主らの言葉を受けて神として出来る最大限の努力をしたまでじゃぞ。
「し、しかし……」
「……駄目よ、レベッカちゃん。その神、ムカつくけど一応神様だから意見を変えるのは無理よ」
よりにもよってミリク様にもっとも当たりが強い姉さんがそんな事を言う。
「ベルフラウ様……」
「多分、最大限の努力というのも嘘ではないと思うわ。神は下界に直接手を出せないルールがあるから、自分の及ぶ範囲で情報を集めて、魔王を倒す手段を模索して考えたのは間違いないと思う。それにしたって無茶ではあるけど……」
「……とはいえ、100体倒すってなかなか骨が折れるわね……」
姉さんとカレンさんの意見に僕も同意だ。そこまで苦戦しなかったとはいえ、それなりの強敵を相手に命を賭けてあと100戦するというのはしんど過ぎる。
――ううむ、不満かの? 儂もお主らを酷使するのは少々気が引けるのじゃが、仮にも魔王クラスの相手とまともにやり合えるのはお主しかおらんからのぅ。あと可能そうなのは、お主らと別行動を取っておるサクラくらいのものか。
――少なくとも騎士団長クラスではどうにもならん。力を失った前勇者のグラン王も無理じゃろう。お主らが出来ないとなれば、魔王を完全に消滅させる作戦は諦めるしかないが……。
ミリク様がそう言って僕達に問いかけてくる。
「う……」
そう言われてしまうと僕も断り辛くなってしまう。
何せ、魔王を完全に倒せないかと相談を持ち掛けたのは僕自身なのだ。だが、ここで僕が「はい、やります」と答えてしまうと、仲間まで巻き込んでしまうことになる。
だからといって僕一人で魔王を倒せるかというと……正直、無理だろう。
僕が頭の中でどうしようか迷っていると、
――パチン!
「よし決めた」
「!」
突然、姉さんが自身の頬を叩いて言った。
「私、レイくんと最後まで戦い抜くわ!」
「姉さん、良いの?」
僕がそう質問すると、姉さんは僕にガバッと抱き付いて頬ずりする。
「なーに言ってるの。私は貴方の為に一緒に異世界に来たのよ。今更このくらいどうってことないわ!」
「ね、姉さん……」
その一言に感動して思わず涙が出そうになる。しかし、姉さんと二人だとしても……。
だが、続いて カレンさんとアカメが言った。
「……大丈夫よ、レイ君。私も手伝うわ」
「……私も、お兄ちゃんがそうしたいのなら努力する……」
「カレンさん……アカメ……」
二人の優しい言葉に思わず胸が熱くなってくる。
そして、今度はエミリアとノルンとレベッカが僕に言った。
「私も付き合ってあげますよ、レイ」
「将来的に見て、魔王が今後生まれないなら頑張る価値もあるでしょう」
「レイ様、私も微力ながらお手伝いさせて頂きます」
「みんな……」
仲間の言葉に思わず心が動かされる。
「ルナは……?」
「うん、私もやるよ? というか、私が居ないと魔王が現れても飛んでいけないしね」
そう言ってルナは悪戯っ子のように舌を出す。
――どうじゃ?これでもまだ不満かのぅ? 僕達がそんな会話をしていると、ミリク様が再度そう尋ねてきた。
「……分かりました。魔王を全部倒すまでお付き合いします」
――よう言うた!それでこそ男の子よの!では、頼んだぞ?
こうして僕達は魔王を全て倒すまで世界を巡ることになったのだった。
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