第871話 無事に家族入り
その後、元の場所に帰還した僕とアカメは王都に正面から堂々と入ることにした。
「大丈夫?」
「平気だよ。アカメはもう普通の人と変わらないんだから」
僕は彼女にそう笑い掛けながら、王都の正面入り口の男性の兵士さんの所まで歩いていく。この兵士さんとは以前に会話を交わしたことがある。おそらく、彼も僕の事は知っているだろう。
「お疲れ様です、兵士さん。何か変わったことはありましたか?」
「おお、レイ殿。いえ、特に変わったことは。レイさん達が魔王を倒してくださったおかげで毎日平和で……見張りが退屈で仕方ないくらいですな」
「あはは、それなら良かったです」
「ところでレイ殿、お隣の女性は? レイ殿のお知り合いですか?」
「……っ」
兵士に視線を向けられて、アカメは顔を隠すように僕の背中に隠れる。
「あ、この子は僕の妹です」
「ほほう、妹さんですか……なるほど、よく見ればレイ殿に顔立ちがそっくりですな」
「!」
「でしょう? 僕達双子なんですよ」
「そうでしたか! ……と、長々と立ち話をして申し訳ない。どうぞお通り下さい」
「ありがとうございます。……アカメ、大丈夫?」
「……平気」
僕とアカメは頭を下げて王都の中へと入る。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「……緊張した」
「あはは」
アカメは僕の背中に隠れながら歩いている……ちょっと可愛い。
「それじゃあ宿に戻ろう」
僕はアカメにそう言って彼女は頷いた。
それから宿に戻ると、カウンターにいた宿主さんに声を掛けられる。
「お帰りなさい、レイさん。……おや、アカメさんはハロウィン衣装を止めたのですね」
「あ、えーっと……流石に外であの衣装は色々誤解されてしまいますので……」
忘れてた。アカメの身なりを誤魔化すために、宿主さんにはそういうことにしてあるのだ。
「皆は帰ってきていますか?」
「ええ、皆さんお部屋にいらっしゃいます」
「分かりました。じゃあアカメ、皆に顔を見せに行こうか」
「………」
アカメは無言で頷く。ちょっと照れているらしい。
「そうだ、宿主さん。アカメを正式にこの宿の仲間に迎え入れたいので、空いている部屋の準備お願いできますか?」
「おお、それは有り難い。分かりました。アカメさん、部屋のご希望はございますか?」
「お兄ちゃんと一緒の部屋がいい」
「あ、いや……気持ちは嬉しいけど……」
アカメは僕の背中にくっついている。
「では、レイさんの隣の空き部屋が残っておりますので、そちらで宜しいですか?」
「ん……分かった」
アカメはそう頷いた。
「宿主さん、お願いします」
「いえいえ、準備には数日時間が掛かると思うので、それまではレイさんのお部屋にお泊りという形で構いませんか?」
「構わない……何なら永遠にお兄ちゃんの部屋でいい‥…」
「いや、それは僕が困るというか……」
「……(少し怒り気味)」
無表情で睨むのは止めてほしい。
「では、私は業者の方に連絡を付けてきますので」
宿主さんはそう言いながらカウンターの奥の部屋に引っ込んでいく。
「それじゃあ僕の部屋に戻ろう」
「……うん」
僕はアカメの手を引いて、僕の部屋に戻っていく。
その後、仲間達に声を掛けて僕の部屋に皆を集めることにした。
◆◇◆
「おお……」
「ふむ……」
「アカメちゃん、ツノと悪魔みたいな翼が無くなってる!!」
「雰囲気も変わったわ……」
「肌の色もちょっと白くなった気がする……」
仲間達は外見がちょっと変わったアカメを見て感想を漏らしていた。
見つめられてアカメもちょっと恥ずかしそうだ。
「レイくん、一体何があったの?」
「うん、ミリク様にアカメを普通の人間に戻してもらえるように頼んだんだ」
「頼んだって……」
「まぁ……ちょっと揉めたけどね」
ミリク様に対してかなり力押しの説得だったのは否めないが、それでもアカメが元の姿に戻れたので無問題だ。代わりに勇者としての能力を返上してしまったけど、さほど問題ではないだろう。どうせ、これ以上僕が戦うことなんてないだろうし……。
「(……?)」
そこで僕は少し疑問を覚えた。勇者としての能力を返上することでミリク様に願いを叶えて貰ったはずなのだが、僕自身に特に変化が感じられない。
まだ戦闘を行っていないから実感が湧かないだけかもしれないが。
「アカメちゃん。身体の方は大丈夫なの?」
「今のところは特に……」
「何も無ければいいんですが……まぁ困ったことがあったら頼ってくれても構いませんよ」
「あ、そだ! アカメちゃんこの街に詳しくないだろうし、明日一緒に外に遊びにいこっ!」
「……うん、ありがとう……エミリア、ルナ……」
僕の事はともかく、アカメは順調に仲間と打ち解けられていっているようで安心だ。こうして、アカメは元の人間の姿へと戻り、僕達と一緒に暮らすことになった。
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