第854話 一転攻勢で突き抜けろ!
魔王が現れた!!
『―――さぁ、来るがいい勇者達よ。本来の”魔王”としてのチカラ、このマグマと共に存分にその身で味わうがいい』
全身を鎧で固めた巨体の魔王は、その両手に身の丈ほどもある大剣を携えて僕達に襲いかかってくる。
「一旦散開!! 作戦通りに行こう!!」
僕が叫ぶと同時に仲間達はそれぞれ散開して各々の立ち位置に移動を開始する。だが、僕は襲い掛かってくる魔王を迎撃すべく不動の状態で剣を構える。そんな僕を見た魔王は言った。
『ほぅ! 我を正面から止めようというのか勇者よ!! ならば、その傲慢、我が叩き切ってくれよう!!』
魔王はそう叫びながら速度を上げて襲い掛かる。
自身よりも数倍の背丈、更にそれと同等程度の長さの大剣と振りかざし走りながら右上から袈裟に剣を振り下ろしてくる。
その動作を見た僕は、魔王が振り下ろす前に自身も剣を横薙ぎに振るって魔王の剣を弾き返す。
「くうっ!!」
事前にレベッカの強化魔法で筋力を底上げしていたのだが、やはり力で到底及ばない。
打ち合った瞬間に鉄と鉄が激しくぶつかり合った衝撃の次に、自身の腕が軋んでヒビが入っていくような痺れを感じながらも僕はそのまま懐に入っていく。
『ぬ、何を――』「たぁぁぁぁ!!」
魔王が何か言おうとしたのを遮り、僕はそのまま剣を振り抜く。しかし力で劣る僕の一撃は、魔王の剣を逸らす程度で劇的なダメージを負わせることは出来ない。
それでも懐の魔王の鎧に剣を当ててその衝撃で魔王の体勢を僅かに崩す事は出来た。
『っ!?』
そして、一撃を当てられたのが合図となる。
最初の一撃を受け止めた後、散開した仲間達は左右背後上空から攻撃を加えて一転攻勢を開始する。もし力差がかけ離れていた場合、僕が即座に撤退を指示するのだが……。
「撤退はしない、行ける!!」
あえてそう叫びながら僕は再度魔王に攻撃を仕掛ける。
『何……!?』
魔王は僕の言葉に怪訝そうな声を出して僕の攻撃を受け止めるものの、次の瞬間には余裕が無くなる。何故なら、僕の今の『指示』を受けた仲間達が周囲から総攻撃を掛けるからだ。
「指示了解ですよっ、レイ!!」
「撤退しないというならこのまま一気に仕掛けてるわ!!」
エミリアとカレンさんがそう言いながら、エミリアは背後から中距離炎魔法、カレンさんは魔王の真横から一気に飛び込んで長剣による連撃を仕掛ける。
同時に僕は身を翻しながら魔王を軽く蹴って巻き添えにならないように距離を取る。
『ぬっ……同時攻撃か……だが、この程度……!!』
だがしかし流石は魔王。二人の攻撃をそれぞれ大剣と拳で受け止めて、兜の奥から威圧的な視線をこちらに向ける。だが、魔王は失念している。こちらは総勢9名の大所帯のパーティだという事を。
「ルナ様、合わせますよ……!! はっっっ!!」
「す、隙ありー!!!」
遠距離からレベッカとルナが矢と雷の攻撃魔法を同時発射する。魔王は自身に向かって飛んでくる矢と魔法を大剣で打ち払うが、そうすると他の仲間への注意が散漫になる。
「たああああっ!!!」
『っ!? ぐぁ!!』
そんな魔王の死角から、サクラちゃんの双剣による斬撃が鎧の隙間を的確に突いてくる。
「えいやっ!!」
『くうっ……小癪な!!』
サクラちゃんの攻撃に魔王は僅かに怯むものの、その体勢を立て直そうと再び僕の方に視線を向けて襲い掛かってくる。が……魔王の足元に植物のツタが巻き付き、その足が鈍くなる。
『なんだ、これは……!!』
魔王は植物のツタを剣で斬り裂いてあっさり抜け出すが、そこに今度は魔力の鎖が魔王の身体に巻き付いてその身動きを封じる。
「眠りなさい……!!」
姉さんの植物操作と束縛の魔法で動きを止めた魔王に対して、ノルンが近づきその目に魔力を込める。
『ぐうっ……、こ、これは……』
魔王は彼女の目を直視し、一瞬だけ完全な無防備な状態と化してしまう。
ノルンが使ったのは『眠りの魔眼』
本来なら格下の相手を眠らせる魔法なのだが、この時のノルンは事前にレベッカの強化魔法で魔力を大幅に底上げしていた。更にそこに彼女自身の強化によって最大限に高めた魔力の魔眼は、魔王がそう簡単に抵抗できるようなモノではない。
「今よ、アカメ!!」
「……!!」
ノルンの指示で、それまで上空から魔王の動きを監視していたアカメは、黒い剣を上に振り上げる。すると、剣から黒いモヤが放たれ、魔王の全身を包み込んだ。
『ぐっ!? これは……、我の動きが……』
魔王はアカメの拘束から逃れようと必死にもがくものの、手足が自由に動かないようで何も出来ない。僕はそんな動けない魔王に一気に接近して剣を振り抜く。
「これでも……くらえぇぇぇぇぇ!!!」
僕の剣は魔王の頭部に直撃し、その兜を切り飛ばした。
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