第847話 ある意味テンプレ
前回のあらすじ。アカメちゃん超怖い。以上。
魔王城更に奥に進むレイ達。
迫りくる魔物達と皆と共に戦い抜き、ついにレイ達は魔王城の玉座の間に辿り着いた。
だが、しかし……。
「……これは、どういうこと?」
玉座の間に居ると思っていた魔王は何処にもおらず蛻の空だった。
「……アカメ、魔王は一体何処に行ったのですか?」
エミリアは、この中で最も魔王城に詳しそうなアカメにそう質問をぶつける。
「……ここに居ないということは、この城の地下の何処かに居ると思われる」
「地下……なるほど、私達がここまで迫ってきて慌てて逃げたというわけですか……」
エミリアが魔王を見下したように鼻で笑うと、アカメは首を横に振る。
「それだけとは限らない。魔王様……いえ、もう様付けは不要ね……。『魔王』は狡猾で残忍な存在……地下に私すら知らない凶悪な罠を張り巡らせている可能性が高い。ここから先は注意して進むべき」
「ふむ……アカメ様の言葉も尤もでございますね……ですが……」
レベッカはアカメの諫言に頷きながらも周囲を見渡す。
「……注意するにしても、一体何処から地下へ向かったのか分かりかねますね……」
「ねぇアカメ、貴女なら魔王が何処に隠れたか分かるんじゃない? 今まで、この城を拠点して暮らしていたんでしょう?」
ノルンはアカメにそう質問する。が、アカメは少しだけ頭を悩ませたような素振りをして、こう答えた。
「……確かに、私達はこの城を拠点に活動していた……。
だが、私は幹部ながら大した権限を持っていなかったのでこの城の内部を網羅しているわけではない。いくつか地下へ向かう経路は知っているが……そこに魔王が潜んでいるとは……」
「ふむ? アカメ様は魔王軍の軍勢を率いる魔軍将の立ち位置だったと記憶しておりますが……」
「肯定……。しかし、私は元人間で魔軍将ロドクの支配下に置かれていた……。実質的な魔軍将の権限は彼の方にあり、私は必要なこと以外は教えられていない……」
「……ということは当てずっぽうで探すしかないわけですか……。アカメを味方に付けることが出来たのは行幸だと思っていたのですが、その様子だとあまり情報は持っていなさそうですね……」
エミリアは、当てが外れたと思い溜め息を吐く。エミリアの言葉を聞いてアカメは黙り込んでしまう。
「……エミリア、言い過ぎだよ」
レイは落ち込んでいるように見えたアカメの気遣ってエミリアに注意する。
「……あ、別に責めてるわけでは……」
「……構わない、レイ。彼女の言葉は事実……」
そういう彼女は露骨に落ち込んでいた。そこで、ベルフラウは軽く手を叩いて言った。
「まぁまぁ……それよりも、ここで魔王討伐を諦めるわけにもいかないし、とりあえず探してみるしかないんじゃないかしら?」
「そう、ですね。……アカメ、何か心当たりは?」
「……無い。ただ、この城には隠し通路が幾つかある……」
「隠し通路? そんなのがあるんだね……」
ルナはアカメの言葉に目を丸くして驚くが、カレンは涼しい顔をして言った。
「まぁ魔王の城だもの。そういう陰湿な仕掛けがあっても不思議じゃないわ」
「先輩、先輩。王都にもその陰湿な仕掛けがいっぱいありますよー。しかも考案してるのはグラン陛下とウィンド師匠です!」
「……コホン。……まぁ隠し通路が陰湿は言い過ぎたわね。前半に多かった即死トラップの事を言ってるのよ、私は」
珍しく失言をしてしまったカレンだが、サクラに突っ込まれてそう誤魔化す。
「で、アカメ、その隠し通路って何処にあるの?」
「……それなのだけど、私が知っているのはこれまで進んできた通路の途中にあるものが多い」
「一度引き返さなきゃならないってことかぁ……どうするかなぁ……」
アカメの言葉を聞いて頭を悩ませるレイ。
「ちなみに、その隠し通路ってどんな風に隠されているの?」
「錯覚を利用したモノや薄い鉄板に加工を施した偽の壁……それ以外に一定以下の魔力の持ち主が触れてしまうと、通路が作動して閉じ込められるトラップも……」
「ギミックだらけね……これは見つけるのも苦労しそうだわ……」
「いや、でももしかしたら意外と近くに隠し通路があるかもしれないし……例えば……」
「例えば?」
「えーっと……」
いざ口を開いたものの、中々思いつかないレイ。だが、そこで閃いた。
「そ、そう……! 例えば、玉座の後ろに隠し階段があるとか……!」
「……」
「さ、流石にそれは……」
「安直過ぎじゃないかしら?」
エミリアとカレンは、レイの言葉に呆れてしまう。しかし……。
「……」
アカメは無言で玉座の後ろに回り込むと、その場で膝を突くような姿勢になり、しばらくしてから立ち上がった。
「どうしたの? 何かあったの?」
「……見つけた」
「え!?」
レイが驚いてアカメにそう問うと、彼女は一言そう答えた。
結論:本当に玉座の後ろに隠し階段がありました。
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