第809話 カトレット姉妹
【三人称視点:エミリア】
魔物の軍勢の襲撃を受けた魔導船を守るために、飛行魔法を使って船から離れて魔物に果敢に向かっていくエミリアとセレナの美少女姉妹。姉のセレナは自分の実力に自信があるためか、その表情は笑みを浮かべていたが、一方エミリアは敵の数の多さに内心では焦っていた。
エミリアは余裕の表情を浮かべて先行するセレナに声を張り上げて話す。
「セレナ姉、あんまり飛び出さないでくださいねっ! この数が相手だと囲まれたらどうしようもありません!」
対するセレナは、魔物達の集団から放たれる魔法を軽く迎撃しつつ、余裕の表情でエミリアに返事する。
「もう、ミリーちゃん。そんなに大声出さなくても聞こえてるわよ。大丈夫よ……っと!」
不意に襲ってきた魔物の突進を、見事な飛行魔法の操作で軽やかに回避して見せるセレナ。
「ほらね?」
「そういう問題じゃないんですけどね。はぁー、頼もしいですねぇ……
「グギャアアアア!!」
エミリアもそんな姉に呆れながら襲ってきた魔物を得意の炎魔法で燃やし尽くし、エミリアの魔法の餌食となった魔物は意識を失いそのまま落下して地上に落ちていく。
「流石私の妹ね。昔はミリーちゃん魔法があんまり得意じゃなかったのに」
「私だって成長してるんです。いつまでの落ちこぼれの魔法使いじゃありませんよ……!!」
二人はそんな会話を交わしながら、周囲の魔物達を次々と魔法で撃破していく。その強さはまさに鎧袖一触、彼女達と相対した魔物達はまともな反撃を許されずに次々と地上に落ちていく。
仮に不意打ちで攻撃を仕掛けたとしても―――
「ミリーちゃん、危ない!!」
背後から奇襲を掛けてきた敵の動きを察知したセレナは、エミリアの愛称を呼んで危険を伝えるが……。
「……大丈夫ですよ!」
エミリアは振り向きもせず、何の攻撃動作も行った居ないはずなのに、エミリアの半径二メートルに近付いた魔物は、突然その身体を硬直させる。
魔物の姿をよく見ると、体中に魔力の鎖が巻き付いてまともに身体が動かなくなっていた。
「ぐぎゃっ!?」
「魔法使いの弱点は、魔法が間に合わない距離に迫られてしまう事……ですが、私はとっくにその弱点を克服しています」
そう言いながらエミリアは杖を頭上に掲げる。すると、杖から稲妻が拡散し近づく魔物を一瞬で撃墜していく。
「わぉ♪ エミリアちゃん、やるわねー!」
「言ってないでセレナ姉も働いてくださいよ。囲まれたら危ないことには変わりないんですから!」
「ふふ、可愛い妹に頼まれたら、姉としては張り切らないとねー……さぁ、愚かな魔物共、この黒の魔女と呼ばれた私の魔法、とくと味わいなさい!!」
セレナはそう言いながら杖を振るうと、正面に半径二メートル強の大きな黒い魔法陣を展開、そこから黒いレーザーを照射して、それが扇状膨れ上がっていく。
巻き込まれた魔物は一瞬で身体が溶解し、無残極まりない姿で地上へゴミのように落ちていった。
「うわ、エグ……」
あまりに魔法の容赦なさに思わず顔が強張るエミリア。
「魔物なんて死んだら消滅して煙になるんだし、同情なんて要らないわよねー」
「……まぁ私も同意ですけど、ね!!」
姉のセレナに対抗する様に、エミリアは大量の魔法陣を同時展開し、そこから槍のような長さの氷の槍を雨あられと降らせる。あまりにも凄まじいスピードで放たれるエミリアの氷の槍は、魔物達を容易く貫き次々と屠っていく。
二人の強さはあまりにも別格で、魔物達も思わず進軍を躊躇して前列の動きが鈍くなっていた。
「あの二人……とんでもない実力者だぞ……」
「まるで四賢者様達のようだ……だが地上の魔法使いに、選ばれし我らが劣るような事はあってはならない!」
「そうだ。我らの強さを魔物どもに見せつけてやるのだ!! いくぞぉぉぉぉ!!!!」
「うおぉぉぉぉ!!」
それを見たクロードの部下達に動揺が走るが、同時にその戦いぶりに感化されて士気が上昇していく。
「あらあら……弱いのに随分とやる気になっちゃったわね」
「セレナ姉、あれでも精鋭らしいですし、もう少し手心加えてあげてくださいよ」
「そうなの? 確かに感じる魔力も中々高いし、魔法の威力も洗練されてるけど、あんな弱い魔物に手間取ってるようじゃねぇ……経験不足なんじゃない?」
「まぁ動きは確かに素人臭いですけど……」
エミリア曰く、直線的すぎるとのこと。動きが丸わかりで少し魔法を知るものであるなら何がしたいのか遠めでも分かってしまうそうだ。
「ほら見てミリーちゃん。あの先頭の魔法使い。ちょっと強い敵に魔法を耐えられたくらいで怖気づいてるわよ。さっきの勢いは何処に行ったのかしら?」
「いやいや、見てないで助けましょうよ!?」
「あら、そうだったわね。じゃあちょっと助けてあげるわ……」
セレナはそう言って敵の方にさっさと向かって飛んでいく。
「ちょっと、先に行かないでくださいよ!!」
エミリアは慌てて姉の後を追ってその後を追うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます