第808話 ドラゴンライダー・レイ
「副砲四十門、うてぇぇぇぇぇぇい!!」
「「はっ!!」」
ダガールの指示と共に、魔王軍に向けて小型魔導砲の砲撃が放たれる。それに気づいた魔物達が散開するのだが、すぐに隊列を戻して向かってくる。
「砲撃手は撃ったら一度交代して次の弾の準備を行え! 副砲一門に対して常に三人以上交代しながら撃つのだ! 魔導砲の残り弾数が少なくなる前に補給を急がせろ!!」
「了解!」
ダガールの指示に騎士達が統制のとれた動きで行動を開始していく。
「始まったわね……ここからは如何に敵を魔導船に近付かせずに撃退するか……さ、私達も行動に移らないとね」
「うん……エミリア、セレナさん。多分、ここに居るメンバーで一番空中戦で戦えるのは二人だと思う。クロードさんの部隊の人達も前線で頑張ってるけど、あの敵の数だとそう長くは持たない。僕達も後ですぐに向かうから二人は先に行ってくれる?」
「ええ、そのつもりですよ。とはいえ、私達でもあの数は流石に辛いですからすぐ助けに来て下さいね」
「任せなさい、義弟くん……。ふふ、姉妹揃って肩を並べて戦うなんてね……。さ、感傷に浸ってないで行きましょう、ミリーちゃん!!」
「いえ、感傷に浸ってるのはセレナ姉だけでは……」
二人はそう言いながら自前の謎の箒を何処からか取り出して、颯爽と跨って空に勢いよく飛んで行った。僕達は二人を見送ると、次は自分達がどう動くか即座に話し合う。
「ルナ、竜化した状態で僕達を何人か空に運んでほしい。飛びながら戦闘になるけど、何人くらいなら振り落とさずにスピード出せる?」
僕がそう質問すると、残ったメンバーの視線が全員ルナに向く。
「うーん……運ぶだけならここに居る全員行けなくもないけど……飛びながら戦闘ってなると、せいぜい三人くらいかなぁ?」
「分かった。じゃあこの中で三人だけ空に向かってエミリア達を追おう。後のメンバーはここに待機して、魔導船まで迫ってきた敵の撃退をしてほしい」
「レイさん、エミリアさん達みたいに飛行魔法で戦わないんですか?」
サクラちゃんが首を傾げてそう質問してくる。
「勿論、いざとなれば飛行魔法で戦うことになるけど、僕達はエミリア達ほど自在に飛べるわけじゃないんだ。空中だと上手く身動きが取れないし足場も確保も出来ない。
エミリア達みたいに飛べる人が先行してもらって、僕達はルナに乗って移動した方が乱れず動けて確実だと思う」
「なるほど、ドラゴンライダーレイさんですね!!」
「何がなるほどなのか分からないけど……とにかく、早くメンバーを決めよう。僕は行くつもりだよ」
僕がそう言うと、レベッカが即座に挙手する。
「レイ様、わたくしも連れてってくださいまし!!」
「うん、それなら二人目はレベッカだ。じゃあ三人目は――」
「はいはいはーい! わたし、サクラが出撃しますー♪」
「そっか……それなら僕達三人で……」
三人で早速行こうと口にしようとするのだが、その前に姉さんが言った。
「ある程度自在に空を飛べるし、やっぱり私も行くわ」
「姉さん? でも、姉さんはどっちかというと支援が得意でしょ。こっちに残った方が良いんじゃ……?」
「それは大丈夫よ。ノルンちゃんが残るし……ね?」
姉さんはそう言ってノルンの方を振り向いて問いかける。ノルンはいつも通り眠そうな目を……。
「って、眼鏡掛けてる!?」
「……何よ。貴方が私に買ってくれた眼鏡でしょう。支援に関しては私が居るから、ベルフラウはレイ達に付いて行っても大丈夫よ」
ノルンは少し前に僕がプレゼントした眼鏡を掛けてジト目で言う。眼鏡を掛けても目が細いのは相変わらずのようだ。
「……分かった。ノルン、眼鏡気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」
「何よ、それ。良いから行ってらっしゃいな」
「あ、その前にノルン様、カレン様、一つだけお願いが……」
「ん、どうしたのレベッカちゃん?」
「一応、わたくし、こういう多人数を相手する時に使用できる切り札の魔法があるのですが……」
そう言いながら、レベッカはカレンさんとノルンに近付いて小声で話す。二人は了承し、レベッカは二人に対してとある魔法を使用する。
「ではお二方……その魔力、わたくしと共有してください……
次の瞬間、レベッカ、カレンさん、ノルンの周囲が光ったかと思うとすぐに光が止んで元通りになる。
だが、魔力の流れをよく読むと、カレンさんとノルンの魔力が僅かにレベッカの方に流れているのが見て取れた。
「……これで準備完了でございます」
「レベッカちゃんの活躍、楽しみにしてるわよ」
「はい、ありがとうございます、カレン様」
レベッカは二人に丁寧にお礼を言って、タタタッと小走りでこちらに向かってくる。
「お待たせしました」
「うん、じゃあ行こう。ルナ、変身よろしく」
「……<竜化>!!」
ルナが僕の言葉に頷いて、魔法名を唱えるとその身体が竜に変化していく。
そして空に飛びあがると、そこには美しい竜の姿があった。
『サクライくん、準備出来たよ!!』
ドラゴンになったルナは大きな翼をはためかせて僕達のすぐ横にゆっくり着地する。
「ありがと、ルナ」
そう言いながら竜のルナの頭を撫でる。こうして近くに見ると以前の竜の姿よりも丸みが増えて、顔立ちも可愛らしい姿になった。
『えへへ』
「じゃあ、ここは任せたよ。カレンさん、ノルン」
「勇者らしくカッコよく戦ってきなさい!」
「あまり無茶はダメよ」
「うん。……じゃ、ルナ。背中に乗るよ」
僕はそう言いながらルナの背に乗って首の近くに抱き付く。するとレベッカとサクラちゃんが同じような形で背に乗って準備を整える。
「姉さんはどうする?」
「お姉ちゃんは尻尾の方を掴ませてもらうわ」
そう言いながら姉さんは女神パワーで宙に浮かんでルナの尻尾の先に軽く抱き付く。
『皆、行くよー!!』
ルナはそう言って、一気に翼を広げると急上昇して空高く飛翔していく。僕達は、ルナに振り落とされないようにその身体にしがみつくのだった。
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