第740話女神様といっしょ!

 魔法都市エアリアルの協力を得ることに成功した僕達。ウィンドさんも家族とのわだかまりが解けて、仕事また終えたら帰る事を約束した。


 僕達は協力関係を得た四賢者の内の三人を引き連れて地上に戻ることになった。そして、僕達の拠点は再び王都イディアルシークに戻る。


 王都の賑わった光景と発展した街並みを見て賢者の一人であるミントさんは行った。


「ここが、あなた達の、住んでる街……なのね?」


 相変わらずミントさんは途切れ途切れな独特なイントネーションで喋る。


「ええ、そうなんですよー♪」

「どう、感想は?」


 ミントさんの質問に答えたのはサクラちゃんとカレンさんだ。カレンさんは彼女に笑顔で質問を投げかける。


「魔法都市と違って、街並みが綺麗で、良い街ね……」


 ミントさんは穏やかに笑ってそう語る。その言葉を聞いた僕達も安堵して微笑む。


「さて、あなた達をグラン陛下の元へ案内します。付いて来て下さい」


 ウィンドさんはそう言って彼ら三人に背中を向けて、歩き始めた。

 そして僕達も彼らと一緒に王宮まで足を運んだ。


 そして王宮で待つグラン陛下と謁見の間にて。三人の賢者は、グラン・ウェルナード・ファストゲート国王の前に跪いて各々自己紹介を行う。


 そして、彼らはこう締めくくって言った。


「「「我ら三賢者。魔王討伐の戦いに助力することをここに誓います」」」


「……うむ、エアリアルが誇る賢者達よ。貴殿らの協力に感謝しよう。共に、この魔の時代を平和に導こうぞ」


「「「はっ!!」」」


 こうして、彼らも正式に戦列に加わることになった。それから賢者三人は、王宮の兵士達に王都を案内されることになり、僕達は一時宿に戻ることになった。


 ◆


「……あー、やっと帰ってきた……」


 久しぶりの慣れ親しんだ宿の戻った僕達は、一つの大きめの部屋に集まって、溜まった疲れを解放する様にため息を吐く。


「……今回はいろんなことがありましたからねぇ」

「だね……」


 僕はエミリアの呟きに相槌を打つ。カレンさんの手伝いをしようという思い付きのために随分と大変な思いをしてしまった。


 そのカレンさんやサクラちゃんも今は自分の家に戻って休息を取っている。今、ここにいるのは、僕、エミリア、レベッカ、姉さん、ルナ、ノルンの六人だ。


「陛下もまだしばらくは身体を休めて欲しいって言ってたし、しばらく僕達は自由かな」


「あのね、サクライくん。私、王都観光したいから案内してほしいな」

「……私も、折角だから頼もうかしら?」


 ルナとノルンは少し乗り気でそう言った。二人と出会ってからここまで忙しい日が続いてたからゆっくり観光もする時間が無かったね。


「僕は構わないよ。少し休んだら外に出ようか」

 僕はそう答えて二人の頼みも了承する。ルナはすごく嬉しそうな顔をしている。


「……でも、ここまで来たらいよいよって感じね」


 姉さんは少し真面目な顔で呟く。


「街の中を少し見てたんだけど、前よりも冒険者達の数が随分増えてたわ。おそらく魔王との戦いの為に陛下が呼び寄せた戦力として彼らがやってきたんでしょう。それに魔法都市の協力を得られたことで、空を飛ぶ魔導船も入手出来た。そうなると後は戦うだけって感じね」


「……魔王討伐か……」


 最後の大仕事を目の前にして、僕達は軽く緊張した表情で話を始める。


「……今更ですが、しがない冒険者だった私達が、まさか魔王を討伐するためにこうして戦うことになるとは思いませんでしたね」


「ふむ、思えば遠くへ来たものでございます」


 エミリアとレベッカの言う通り、僕達は元々魔王討伐なんて大それた目的を持ってたわけじゃない。


 僕はただの転生者としてこの異世界に来ただけだし、姉さんは事故で僕に巻き込まれて一緒にここに飛ばされただけだ。


 エミリアやレベッカも、その旅の途中で出会った仲間だ。レベッカの言う通り、僕達は随分と遠くへ来たものだ。


「今まで聞いたことなかったんだけど、サクライくん達はどういう風に出会ったの?」


「あ、それは私もちょっと興味あるわね」


 ルナの質問に、眠そうだったノルンがベッドから身を起こして便乗する。


「ふふ、知りたいですか?」


「……といっても、さほど込み入った内容とかじゃなくて、成り行きで一緒に旅してただけなんだけどね」


 エミリアの意味ありげな笑いに、僕は苦笑してそう話す。


「なら、ここでちょっと思い出話でもしましょうか。魔王討伐の命令が下ったらこうして、ゆっくり話が出来なくなるかもしれないし……ね」


「良いんじゃないですかね。ここまで怒涛の展開でしたから、ルナやノルンの事も色々訊きたいですし」


「あはは、私は記憶があんまりないから話せることは多くないけどね……」


「……ま、興味があるなら聞かせてあげるわ。これでも1000年くらいは生きてるし……900年以上は寝てたけど」


 エミリアの提案に、ノルンもルナも頷いた。


「ふむ……では、思い出話に華を咲かせましょう……レイ様、まずは何処から話をしますか?」


「うーんと、そうだねぇ……」


 レベッカの問いに、僕は床に転がって思いを馳せながら、姉さんの方を見る。


「……じゃあ、僕がこの世界に転生して、初めて姉さん……いや、女神様に会った時かな?」


「あら、私と会った時の話? ……ふふ、あの時はレイくんは幼くて可愛かったわねぇ……」


「いや、当時も15歳で幼いって言われるほどの年齢じゃないけど……コホン、じゃあ話すね……」


 そう言って、僕達はこのつかの間の休息を楽しんだ。

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