第622話 実はお疲れノルンちゃん
レイ達はエミリアの姉のセレナと、神依木の捜索の為にフォレス大陸の森の奥地へと進む。
しかし、闇ギルドが彼らの行く手を阻む。最初の方は丁寧に相手をしていたレイ達だったが、あまりにもうっとおしい連戦が続き、温厚なレイもついに切れた。
「――
レイの聖剣技により、黒装束達は破壊の光を浴び続ける。だが、多少精神が崩壊していてもレイは手加減を忘れないため死にはしない。そして、レイが敵を殲滅した後に、ノルンがパンと手を叩くと森の地面が割れる。
こうして、闇ギルドの構成員は森の深淵に落ちていくのだった。
「大丈夫、私は彼らを殺してないわ」
「僕も聖剣は使ってるけど、手加減してるからセーフ」
抑揚のない淡々とした声のノルンと、疲労で色々と壊れてるレイ。
二人がこの森で手を組めば、並み居る雑魚敵など物の数にもならないのだ。
ここにレイと謎の新キャラによる最強タッグが結成された!!
「ベルフラウ、面白がって変なナレーション付けないでください」
「えへっ♪」
エミリアにジトーっとした目で睨み付けられ、元女神様でベルフラウは茶目っ気全開で自分の頭をポカリと叩く。
「……それで、次はどっちに行くの? さっきから見てたら、道らしい道が無いんだけど……」
ルナは辺りをキョロキョロと見渡す。そこには獣道を外れた木々や草花しかないため、次に向かうべき地点が分からない。
「それは大丈夫、私が居るかぎり迷うことはないわ」
戦闘が終わると、ノルンは前に出て再び僕達を先導する様に前を歩いていく。
「……ストップ、ノルン」
エミリアは疲れた表情で彼女を呼び止める。
すると、相変わらず無表情でノルンをこちらを振り返って言った。
「なにかしら、エミリア・カトレット」
「流石にここまで連戦しながら森を歩き回ってクタクタです。今日はもう休みましょう」
エミリアはそう言いながら空を見上げる。
空は既に暗くなっており、あと数時間もすれば日を跨ぐことになるだろう。
「……そうね。今日は休みましょうか」
ノルンはそう呟くと、近くにあった大きな大木に腰を下ろす。
「そうですねー。わたしもちょっと眠いですよ~」
サクラちゃんもそう言って目を擦る。
「なら、ここをキャンプ地という事にしましょうか」
レベッカはそう宣言し、僕達は彼女に同意。早速、テントを張って夜営の準備を始める。
◆◆◆
それから半刻ほど経過し――
「ただいまー」
「一応、結界は張っておきましたけど……」
周囲に結界魔法を張り巡らせていた姉さんとエミリアが戻ってくる。
「お疲れ様、二人とも」
「うん、疲れたー。お姉ちゃん、テントでゴロゴロしてていい?」
「いいよ。ゆっくりしてて」
「わーい」
僕が頷くと姉さんは返事をしてテントの中に入っていった。僕とエミリアはそれを見届けると、エミリアは「はぁ~」とため息交じりで言った。
「魔物は結界があれば問題ないけど、闇ギルドの連中はどうします? あいつら魔法の知識あるみたいですし、結界を解除されて侵入してくる可能性がありますよ」
「なら何人か見張りが必要かな。順番だけ決めておこうか」
僕はそう提案した後に、先程姉さんが入っていたテントに視線を移す。
「……ベルフラウは後回しですね」
「まぁ、姉さんはのんびり屋だからねぇ……」
僕とエミリアはそう言って笑い合う。
「おや、二人ともどうなさいましたか?」
「わー、夜の密会ですかー?」
僕とエミリアが話し合っていると、サクラちゃんと焚き木の準備を行っていたレベッカが声を掛けてきた。サクラちゃんは僕とエミリアを見て顔をニヤニヤさせている。
「そういうのじゃないですよ」
「闇ギルドの連中が心配だから見張りを立てようかなと相談してたんだ」
僕は苦笑して二人にそう答える。
すると、レベッカは納得して僕達にこう言った。
「そうでございましたか。では、お二人は先に休んでくださいまし、最初はわたくしが見張りに行って参ります」
その言葉に、サクラちゃんが「あ、それならわたしもー♪」と言って彼女の手を掴む。
「ふふ、ならば最初はわたくしとサクラ様という事で」
レベッカはそんな風に微笑む。
「じゃあ、その次は僕とエミリアかな?」
「その場合、最後の戦力にちょっと不安が残りますし、レイと私は別々にした方が良いでしょう」
「うーんと、それなら僕とルナ……エミリアと姉さんかなぁ?」
「戦いに慣れてないルナを見張りに立たせるのもどうかと……」
「そうなると……」
エミリアの提言に僕は頭を悩ませる。
すると、奥の方から小さい人影がこちらに歩いてきた。
さっきまで大木の傍で小さくなってウトウトしていたノルンだった。
「……私がサクライ・レイと見張りをするわ」
「え、ノルンがですか……?」
エミリアは意外そうに返す。
「助かるけど、ノルンは大丈夫なの?」
「……言ったでしょう? この森は私にとって庭みたいなものよ」
ノルンはさっきまで眠っていた為か、いつもよりもジト目が細くて眠そうだった。
「……本当に大丈夫?」
「……あなたこそ、もうちょっと私を信用しなさい」
ノルンにジトーっとした目で睨まれてしまう。
「……分かった。じゃあ、よろしくね」
ノルンの言葉に僕は頷く。そして、見張りの組み合わせが決まった。最初はレベッカ・サクラ、次に僕とノルン、最後にエミリアと姉さんだ。
ルナは戦闘が得意じゃないし、人間の身体で歩くのにもまだ慣れていない。その為、今回は見張りに参加せずテントに休んでもらうことにした。そして、僕達は持ってきた食材や飲料水で食事を済ませ、順番に眠りについた。
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