第591話 国を巻き込んでも助けに行く 本文編集

 僕達は、すぐさま王宮に向かい王宮の門番さんに事情を話す。

 以前、僕が王宮の騎士を務めていたという事で、すぐさま玉座の間に通してもらうことが出来た。

 そして、僕達5人はグラン陛下と対面し詳しい事情を話す。


「―――カレン君が」

「……はい」


 まずはカレンさんが再び伏せてしまったことを最初に話す。彼女がどうしてこうなってしまったのかを話して、それから彼女を救うために神依木(かみよりぎ)の場所を調べたい事を告げる。


 同時に、彼女に呪いを掛けた旧魔王が未だに生きていることを伝える。


「……魔王アビスか。まさかまだ生きていたとは」

 グラン陛下は苦虫を噛み潰したような表情をする。


「アビス?」


「二代前の魔王の名前だ。二度も倒したというのにまだ生きていたとは……奴の居城は私も知っている。もし奴が変えてなければ、その大陸に間違いあるまい」


「では、すぐに調査をお願いできますか?」


「任せたまえ。近隣の大陸に魔法で連絡を送ろう。そうすればここから船を出すよりも遥かに早く情報を知れるだろう」


「ありがとうございます!」



 僕は頭を下げる。これで、準備さえ整えばなんとか情報を得られそうだ。


「それで、その神依木かみよりぎとやらが問題か……どんな形をしているのだ? 見た目だけでも教えてくれないか」


「いや、それが詳しいことが分からなくて……。女神様の話では、ずっと昔の人間同士の戦争で樹が滅んでしまったらしくて、もう元の場所には無いって話です」


「ふむ……そうなると、打つ手無しとしか言いようが無くなるのだがな。勿論、諦めるつもりはないが……」

「いえ、そうとは限りませんよ、グラン陛下」

 その時、横から声が聞こえてきた。

 そちらを見ると、そこには一人の緑髪の女性が立っていた。


「あ、ウィンドさん」

「ししょー、おひさですー」


 僕とサクラちゃんが彼女にそう話しかけると、彼女はこちらを向いて軽く会釈をする。


「皆さん、お久しぶりです。本日は、我が弟子のカレンの件で相談に来たと聞きました」


 彼女はウィンド。サクラちゃんとカレンさんの魔法の師匠にして、この王宮の王宮魔道士として陛下の補佐を行っている。ちなみに、普段は王宮図書館の司書さんをやってて本に囲まれて幸せを満喫しているらしい。


 なお、彼女の外見は20代くらいなのだが実際の年齢は違うらしい。


「ウィンドさん、何か案があるんですか?」


「ありますよ。レイさんはご本はお好きですか?」


「本……? まぁ、嫌いではないけど……」


「では、ちょうど良いですね。私は自分の知識を深めるために普段から世界中の本を漁っていまして……」


「あ、なるほど」

 ウィンドさんが司書やってる最中でも常に本を読んでた理由がそれか。


「中には数百年前に記された歴史の本、世界創生に纏わる本、世界に点在するマナが深い場所を記す書物など、いくつか興味深いものを見つけました。

 神依木かみよりぎの場所やカレンの呪いの緩和の方法を見つかるかもしれません、図書館に一度来てみませんか?」


 自分達で方法が見つからないなら、他の手段で知識を得ようという事か。

 確かに、今はそれしか方法が無いかもしれない。


「ふむ、ちょっと興味ありますね……強力な魔法の記された魔導書もあるかも……」


「エミリア、今はカレンさん事が最優先だからね」


「分かってますよ、もう」


 僕の注意に、エミリアは不満げに頬を膨らませる。


「それで、どうします?」

「行きます」


「即答ですか、結構です。

 というわけで、グラン陛下。地下図書の閲覧許可お願いできますか?」


 ウィンドさんは僕の返事を聞いて満足そうな表情を浮かべて、グラン陛下に向き直った。


「うむ、許可しよう。それと、私の方で例の場所に連絡を送っておく。仮に魔王アビスの居城に兵を送る場合、どうしても力を借りなければならないからな」


「………仕方ありませんね。私もあまり彼らと関わりたくないのですが……」


 ウィンドさんは渋い顔をして返事をして、ため息をついた。


「何の話?」


 姉さんはその会話の意味が分からないようで首を傾げる。というよりは全員二人の会話の意味が分かっていない。一体誰の力を借りるつもりなのだろう?


「……いえ、今すぐ必要な話ではありません。それよりもグラン陛下の許可が下りたので王立図書館に向かいましょう。ここにいる全員で1日調べれば、いくつか有用な情報も手に入るはずですよ」


「ししょー、また隠し事ですか?」


「サクラ、これは隠し事ではありません。優先順位を決めて効率よく行動するための情報整理です。……という訳なので、私達は失礼させていただきます。グラン陛下、また後程」


「ああ、分かった。気を付けて行ってくるといい」

「はい」


 こうして、僕達はウィンドさんに連れられて図書館に向かった。

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