第554話 休日1
【視点:レイ】
ここしばらく魔法学校でずっと頑張ってた僕達だけど、今日は久しぶりの休みだ。普段子供達と接して癒しては貰っているのだけど、書類仕事や小道具の調達に授業の準備など、意外とやることが多くて休む暇がなかったのだ。
そんなわけで、今日は一日ゆっくり休もうと思っていたのだけど……。
「れいさまー、えへへへへへ……♪」
「……レベッカ、朝から何してるの?」
休日の朝、目を醒ますと我がパーティのマスコットであり、妹ポジションのレベッカが僕のベッドに入り込んでいた。
「レイ様、そっけない態度止めてくださいまし……。魔法学校の生徒たちにはあんなに親身に接していたではありませんか」
「いや眠いだけなんだけど……っていうか、まるで見てきたように言うね」
「そ、そうでしょうか?……(まぁ、実際に見てきたわけですが……)」
今、ボソッと何か呟いた気がするんだけど……。
「しかし、お疲れならば仕方ありませんね……わたくしはレイ様を癒すために、添い寝を続けますので、どうぞ二度寝を堪能してくださいませ、さぁどうぞ」
レベッカは高揚した表情で僕の枕をポンポンと手で叩く。
早く横になれと言いたいらしい。
「いや、二度寝したいわけじゃないんだけど……」
どうやら、レベッカはとにかく僕に甘えたいようだ。思えば、ここしばらくは子供達につきっきりでレベッカや姉さんと話を出来てない気がする。
「……うーん、どうしようかな(゜-゜)」
「レイ様?」
今日一日ぐーたら過ごそうと思っていたけど何処かに遊びに行こうか?
王都巡りとか、大通りで買い物に行くとか、他にも何処かにピクニック行くとか、いろいろ考えられる。
「よし、決めた。レベッカ、ちょっと出かけよう」
「え、本当でございますか!? 」
レベッカは嬉しそうにベッドの上で飛び跳ねる。普段のレベッカは物静かで母性に溢れている少女という印象なのだけど、今日は妙に子供っぽいなぁ。
「(……まぁ、そういう日もあるよね)」
僕は離れようとしないレベッカを部屋の外に一旦追い出して、鍵を閉めてから着替えを終えてから二人で一階に降りていく。するとそこには既に起きていたエミリアの姿があった。
「おはようございます、レイ、レベッカ。朝から上の部屋でギシギシ音がしてたんですが、如何わしいことしてませんよね?」
「してないよ。レベッカがベッドに潜り込んで飛び跳ねてただけだから」
「嘘つかないでください。清楚系美少女代表みたいなレベッカがそんなことするわけないでしょう」
「僕もその認識だけどマジだよ」
今朝起きたらレベッカが僕のベッドに潜り込んで人の身体に抱き付いてスクリュー決めてきた。最初自分の目を疑ったんだけど、目を凝らしてみてもレベッカだったので三度見してしまった。
「ね、レベッカ?」
「わたくしはただレイ様にマーキング……ではなく、スキンシップを取っていただけです」
「猫ですか」
「今のわたくしは家猫でございます、にゃんにゃーん」
レベッカは猫のように鳴きながら可愛らしくポーズを取った。
「(可愛い……!)」
「(可愛いです……!!)」
僕もエミリアも思わず顔を綻ばせてしまう。ちなみにレベッカはポーズを取ってた時も無表情だったのだが、元が可愛いから何やっても可愛いのだ。
すると、食事の準備をしてたと思われる姉さんがエプロン姿でやってきた。
「おはよう三人ともー、もう朝食出来てるわよー」
「おはよう、姉さん。今行くよ」
「では冷めないうちに行きましょうか」
「ベルフラウ様、おはようございますですにゃん(無表情)」
レベッカの挨拶を聞いた途端、姉さんの笑顔が固まってしまった。
「……? どうしたの姉さん?」
「レイくん、レベッカちゃんがなんか変」
「知ってる」
最高にハイってやつなのだろう、知らないけど。
「可愛いからいいじゃないですか」
「それはそう」
こうして、僕ら三人はレベッカの奇行についてはスルーして、食卓についた。
そして食事を始める。
僕とレベッカは隣同士、机を挟んで向かいには姉さんとエミリアが座っている。
こうしてると家族団らんって感じで好きだ。
食事中、さっき思い付いたことを皆に切り出す。
「姉さん、エミリア、よければこの後、何処かに遊びに行かない?」
「んー、構わないけど、いいの?」
「私も予定はありませんが……意外ですね。疲れて、今日一日は中でゆっくり過ごすつもりだと思ってましたよ」
「にゃんにゃん(真顔で頷く)」
レベッカは無言で頭を撫でて欲しいと要求してきたので、僕はそれに応えた。
「まぁ、最近はずっと頑張ってたしね。レベッカはともかく、姉さんとエミリアは大丈夫?」
「私は問題ないですよ。たまには家族みたいにのんびりするのも悪くないですし」
「………そうねー、もう何十年も一緒だものね」
………?
「(いや、まだ二年弱くらいなんだけど……)」
「(元神様のせいか時間感覚がずれているのでしょうか……)」
「(ベルフラウ様もお疲れなのかもしれませんね………あ……にゃん?)」
姉さんの呟きに僕を含めた全員突っ込む。
レベッカが思わずネコ真似を忘れるほどである。
「ま、まぁ姉さんもOKって事だよね。じゃあ、何処かに遊びに行く?」
「うーん、ならカレンの家に行くとか? サクラも一緒に居るでしょうし」
「もちろんその二人も誘うつもりでいるんだけど、折角だから外出でもしないかなーって思って」
カレンさんはまだ魔力が戻っていないけど、普通に日常送れるくらいには回復してきている。エミリアが隠れてサポートしているようだけど……。
「エミリア、大丈夫かな?」
「最近は元気そうですし、大丈夫だと思いますよ」
エミリアは僕の質問に頷きながら言う。
「ではでは、何処に行くのかしら?」
姉さんの質問に僕達は、各々考えて意見を出す。
「実はノープランなんだけど……そうだなぁ……」
「皆でショッピングとかどうですか? 調合の材料で掘り出し物とか出てるかもしれませんからね」
「ピクニックついでに冒険者ギルドで依頼を受けるのも悪くありませんね。カレン様は、わたくし達が守れば問題ないでしょうし……にゃん(付け足し)」
「お姉ちゃんは食べ歩きとかしたいわねー」
皆の意見を聞いてみると、概ね賛成のようだが意見はバラバラだ。
「なら、カレンさん達を誘って全部やってみる?」
「それは、ショッピングしながら食べ歩きして、その後冒険者ギルドで依頼を受けてピクニックをすると?」
「楽しそうだけど丸一日掛かっちゃいそうね」
「にゃんにゃん(こくり)」
レベッカが同意するように首を縦に振った。さっき普通に喋ってたよね?
「良いんじゃないですかね、ついでに薬草採取出来そうです。最近、ハイネリア先生に説教されてばかりなので魔物でも討伐してストレス解消したいです」
「魔王を倒したお陰で魔王軍の動きも鈍くなって平和だものね」
「にゃにゃん(肯定)」
「レベッカちゃん、そろそろやめない?」
姉さんはテーブルから立ちあがり正面に座っていたレベッカの柔らかいほっぺたを両手でプニプニと弄って遊んでいる。レベッカはされるがまま無表情だが、少しだけ頬が赤くなっている。
「(可愛い……!)」
「(可愛いですね……!)」
僕とエミリアはそんなレベッカを見て和んでいた。
「じゃ、そういう事で決定。外出の準備が出来たらカレンさん達を誘いに行こう」
「おー」
「さんせーい」
「にゃーん(はい)」
こうして僕らはカレンさん達の家に向かうことにした。
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