第539話 学校10
僕はタイミングを見計らって次の魔法の練習に取り掛かろうと考えて子供達に声を掛ける。
「はいはい、皆、そこまで」
僕はパンと手を叩く。すると、向かい合って練習してた子供達の視線が僕に集まる。
「まだ練習が足りない子もいると思うけど、次の魔法を教えるよ」
「「「「「は~い」」」」」」
子供達は素直に返事をしてくれた。
「よし、いい返事だ。もしまた練習したいなら
……えっと、ハイネリア先生に怒られたから、階段降りて外に出ようね」
「窓から飛び降りてたのレイ先生だけだよー」
「先生、危ないからやめようね?」
「うぅ……」
子供達に注意されてしまった。
◆◆◆
そして、校舎の階段を降りて外に出る。
先に子供達を校舎の外に出てもらい、僕だけ職員室に寄ることにした。
理由はエミリアの杖を借りるためだ。僕は職員室の扉を開ける。すると――
「エミリアー、杖貸してほしいんだけどー――」ガラッ
「ハイネリア先生、もう勘弁してくださいよー!」
「いいえ、あなたは教師とは何か全く理解してません。いいですか、エミリア・カトレット。先程の口調もそうですが、あなたは子供に対しての態度が―――」
ギャーギャーと二人が話している。
「……うわぁ」
職員室に入ると、エミリアが正座で説教されていた件。
「あ、あのぉ……」
こっそり二人に近付いて声を掛ける。
「おや、レイ先生。子供達はどうしたんですか?」
ハイネリア先生は、何も無かったかのように僕に笑顔を向けて質問してきた。エミリアはちょっと涙目になっており、僕が視線を向けると彼女は恥ずかしそうに俯いた。
ひとまず、ハイネリア先生の質問に答える。
「はい、今は外で待機させてます」
「そうですか。それで、どうしてここに?」
「あ、その……エミリアの杖を貸してほしいと思いまして」
「……え、私のですか、それはまたどうして?」
エミリアは顔を上げて不思議そうな顔をする。
「
エミリアの得意なアレだよ。杖を地面に突き立てて、魔力を送るやつ。
アレなら分かりやすくていいかなって」
僕は杖を突き立てる動作をする。
「アレですか、子供達にはまだちょっと難しそうな気がしますけど……」
「でも、どの子も覚えが良いんだよ。殆どの子は最初の頃の僕よりずっと魔力が高いし、少し練習すれば多分行けると思うんだ」
「レイがそう言うなら構いませんが……」
エミリアはそう言って立ち上がり、
職員室の机に立ててあった自分の杖を手に取って僕に渡してくれた。
「ありがと」
「レイ先生、子供達の様子はどうですか?」
僕がエミリアにお礼を言うとハイネリア先生が気にして尋ねてきた。
「皆、良い子ですよ。素直に言う事聞いてくれるし、同じくらいの年頃の子達と比べると素行が良くて利口な気がします」
「それはよかった。ルウ君はともかく、他の子達はみな裕福な家庭に生まれた子達ですからね、教育が行き届いているのでしょう」
「……あの、ネィルって子供以外は、ですけどね」
エミリアは昨日の事を思い出して毒づいていた。
「エミリア・カトレット、そういう事を言ってはいけません」
「はーい……」
ハイネリア先生の言葉に、エミリアは子供みたいに返事をした。
「それにしても、レイは思った以上に子供達に懐かれてますよね……」
「確かに、レイ先生、実は教師が天職なんじゃないですか? 騎士とか冒険者よりも、こっちの道を本格的に目指すのも考えてみません?」
「い、いやぁ……子供達が可愛くて構ってあげたくなるだけなので……頭悪いから教師は無理ですよ」
僕は苦笑いを浮かべる。
「いえいえ、レイ先生は賢いですよ。勉学だって、時間を掛ければ十分間に合いますって」
「いや、でも……」
「ハイネリア先生、無理強いは良くないですよ」
「……そうですね、ごめんなさい」
ハイネリア先生はエミリアの言葉に素直に従い、僕に謝る。
「それに、子供が好きというより、小さい女の子が好きなんですよね?」
「えっ」
「ちょっ!?」
謝罪の姿勢からハイネリア先生が固まってしまった。
「……え、それってロリ――」「ロリコンじゃないですから!」
誤解されそうになったので、慌てて否定した。
「ま、まさか本当にそんな趣味が……」
「違いますって、誤解です! エミリア、先生に変な事言わないでよっ!」
「冗談ですよ、レイばっかり褒められてて気に入らなかっただけです」
エミリアは、舌を出して「てへぺろ」する。
ちょっと殴りたくなった。
「ああ、なんだ、驚きましたよ……」
ハイネリア先生は安心したように胸を撫で下ろす。
ったく、エミリアは余計な事を……。
「はぁ……僕はちゃんと男の子も好きですから安心してください」
僕はそう言ってエミリアの言葉を否定したつもり、だった。
だが、僕の発言を聞いた直後、二人がいきなり真顔になってしまった。
……………?
「……ん?」「え?」
……今、シャレにならない誤解をされた気がした。
「(やべぇ……)」
「お、男の子も好き……そうですか……」
「女の子みたいな顔立ちだとは思っていましたが、まさか先生にそういう趣味があったとは……」
エミリアとハイネリア先生は顔を赤くしてモジモジしていた。
その後、二人の誤解を解くのに、数分の時間を要した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます