第499話 守りたい、この笑顔
王都で起こった失踪事件の解決に乗り出した僕達は、王都から離れた廃屋敷の中で、主犯格の3人と遭遇し返り討ちにした。そして、廃屋敷の中で失踪していた三人の子供をようやく見つけ出すことに成功した。
「それでね、リリエルを助けてくれたのがこの人たちなの♪」
僕達が最初に助けた金髪少女のリリエルちゃんは、他の二人に僕達の事を紹介してくれた。リリエルちゃんは安心したのか、さっきまでの怯え顔から一転、楽しそうな表情をしていた。
緑髪のボーイッシュな雰囲気の女の子は、僕達に礼儀正しく言った。
「リリエルを助けてくれてありがとう。ボクはコレット・ルフトと言います。一応リリエルと同年代だよ。よろしくね、お兄さん達」
そして、これコレットちゃんの次に、リリエルに泣き付いてたもう一人の青髪の少女は、モジモジした様子で僕達に挨拶をする。
「あ、あの…………メアリー・フランメといいます。
その、リリエルちゃんを助けてくれてありがとう……ございました」
そう言って、彼女は深々と頭を下げる。
この子は三人の中でも背丈が低く、一番幼く見える。
三人共、年齢の割に礼儀正しく良い子達だ。
二人の女の子達は疲れ切った様子だったけど、怪我はないようだ。
僕は少し安心して、彼女達に声を掛けて自己紹介をする。
「僕はレイ……後ろの皆は僕の仲間だよ、みんな挨拶してあげて」
僕は振り向きながら、彼女達の様子を伺ってた三人に声を掛ける。
三人は僕に頷きながら前に出る。
「ベルフラウよ、三人とも怪我はない?」
姉さんは女の子達に近付いて、念の為に回復魔法を使用し始める。
「エミリアです。私達が来たからにはもう安心ですよ」
エミリアも少女達に近付き、三人の頭を撫でる。他の二人は嬉しそうだったけど、コレットちゃんだけ少し恥ずかしそうだった。
「わたくしはレベッカと申します。
リリエル様、コレット様、メアリー様、ご無事で何よりでございます」
レベッカはずっと年下の少女達にも、いつも通りの丁寧な口調で話す。
「もっと色々話したいところだけどここは危ない。君達だけでも、屋敷の外まで送っていくよ」
「ですね。あの男達がまたいつ邪魔しに来るか分かりませんし」
僕は提案すると、エミリアは賛成する。
すると、コレットちゃんは挙手しながら僕に質問をする。
「あの誘拐犯たちはどうするんですか?」
「勿論捕まえるけど、まずは君達の保護が最優先。今から三人を屋敷の外まで送っていくよ。そこに、僕の友達がいるからその子に王都まで連れていってもらうよ」
「で、でも迷惑じゃ……?」
「ううん、そんな事ないよ。
それに君達の両親も凄く心配してる、早く帰って安心させてあげて?」
「……わかりました。それじゃあ、お願いします!」
こうして、僕達は犯人の確保は後回しにして、まずは子供達を連れて廃屋敷の外に出ることにした。……しかし、物事はそう上手くは行かない。
僕達は来た道を後戻りしていくと、出口の場所に人影があった。先頭を歩いていた僕はそいつから見えないように、一歩下がって相手から見えない位置に隠れる。
「……みんな、立ち止まって」
僕は、静かな声でみんなに静止を掛ける。幼い少女たちはビクッと肩を震わせるが、大人しくいう事を聞いてくれてその場で立ち止まってくれた。
「……レイくん、どうしたの?」
「……誰か入り口の前に立ってる。多分、敵の一人だ」
僕は、相手の気配を感じ取りながら静かに語る。
すると、レベッカが足音を立てずに、僕の傍に来て、入り口の方を覗きこむ。
僕は彼女に譲るように後ろに下がる。
「……あれは、名前は確か……ルビー・スーリア。
<黒檻>という厄介な魔法を使用する魔法使いでございますね」
「なるほど、私が子供達を連れて逃げ出さないように見張りというわけですか」
僕達は、侵入者を取り逃がさない為に待ち構えている人物の姿を見て、 お互いに納得したような表情を浮かべる。
しかし、姉さんだけは納得いかなさそうな顔をしていた。
「どうしたの、姉さん」
「いえ、随分余裕があるわね、と思って……。厄介な魔法を使用する強敵ではあるけど、私達全員を相手にして勝てると思ってるのかしら?」
僕はその姉さんの疑問に、「確かに」と頷いた。
「姉さんにしては挑戦的なセリフだね。でも、その通りだ……」
あの魔法使いの使う<黒檻>の魔法は脅威だ。
一度捕まってしまうと動きを制限されてしまい戦うことも出来なくなる。
実際、僕達は初戦はそれが理由で苦戦してしまった。
だけど、それはビレッドという男が、前衛を務めていたのが理由だ。
あの魔法使いだけならさほど苦戦する相手じゃない。
僕は思案していると後ろから僕の太もも辺りを指でツンツンされる。後ろを振り返って下に視線を向けると、リリエルちゃんが僕の足を指でつまんでいた。
「ねえねえ、お兄さんたち強いんでしょ?」
「んー、まぁね」
僕がそう答えると、リリエルちゃんは目をキラキラさせながら言った。
「それならこんなところで話してないで、
皆で一斉に走っていって、あのムカつく冒険者達をタコ殴りにしちゃおうよ」
「り、リリエルちゃん……そんなの無茶だよぉ」
「リリエルが変な事言ってごめんなさい、レイお兄さん……。ほら、リリエル、お兄さん達困ってるよ」
「ええー、でもお兄さん、強いって言ってるもん……」
コレットちゃんとメアリーちゃんに諭されても、まだ諦めていないようだ。この三人のやり取りを見て、僕達はちょっと微笑ましい気分になってしまった。
僕は彼女達の目線まで腰を下ろして言った。
「えっとね、リリエルちゃん。あいつら見た目以上に危険人物だから僕達でも作戦を練らないと無傷ってわけにもいかなくてね」
リリエルちゃんを納得させるために、思ったことを言ってみる。
「確かに、そのやり方も場合によっては有効かもだけ……ど……!」
しかし、途中、気配を感じて少女達の後ろに視線を移すと、暗闇から何かか光り輝くものが見えた。
そしてそれは、一番後ろにいたメアリーちゃんに向けて振り下ろされ――
「―――!!」
僕は殆ど無意識に駆け出し、腰の剣を抜いて、その振り下ろされた光の刃を弾く。
ガキンっと刃がぶつかり合い、火花が飛び散る。
「きゃあ!?」
メアリーちゃんは突然の出来事に驚いて尻餅をつく。
「大丈夫かいっ!?」
僕は視線を目の前から外さないまま、メアリーちゃんに声を掛ける。
「う、うん! ありがとう、お兄ちゃん……」
メアリーちゃんはリリエルちゃんとコレットちゃんの手を借りて立ち上がり、三人はすぐに姉さんの後ろに隠れる。そして、少女達を庇うようにエミリアがこちらに向かってくる。
僕は、僕と剣を交えている人物に向かって言った。
「残念だったね……ビレッド!!」
「……ちっ!!」
僕は目の前の男、ビレッドを睨み付けた。
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