第477話 番外戦術

【視点:エミリア with ???】

 私、エミリアはレイの居場所を突き止めるために、

 カレンから情報を得た後に、ベルフラウ達の後を追いました。


 洞窟に向かい、仲間の名前を叫びながら進んでいると仲間とようやく合流。仲間達に一時的に休憩してもらう間、私は得た情報を仲間に共有することにしました。


「か、神隠し? 何それ?」

 ベルフラウは、私が伝えた言葉に戸惑った様子だった。

 私はそれに答える。


「ええ、神隠し。つまり、レイは魔物に倒されたわけでも生き埋めになったわけでもなく、【次元の門】に近い場所に来てしまったが為に、神の目に留まり、神の手によって浚われてしまったのではないか、という話です」

 私は、カレンから聞いた話を手短に纏める。

 自分で言っておいてなんですが、普通は信じないですよね、こんな話……。


「普通に考えるなら、信じられない話ですけどぉ……」

 私の話を聞いたサクラは、彼女にしては真面目な表情をして答える。


「ですが、わたくし達は既に女神様と対面しておりますし、事実なのでしょうね」

 そしてレベッカは、彼女の言葉を続きを引き継いだかのように言う。


「うん……うん、そうよね。

 レイくんが突然いなくなったなんて信じられないし……」


 ベルフラウも、レベッカの言葉を聞いて同意する。

 彼女に関しては、願望も混ざっているだろうが、それを指摘する意味はない。


「でも、ここが次元の門に近いっていう証拠はあるんですか?」


「証拠はありませんね。カレンの話もあくまで推測でしたし、ですが……」


「ですが?」


「何かしら異常を感じませんでしたか?

 次元の門は、現実と異次元の境界が曖昧になる場所だそうです。

 例えば、特に変わった様子はないはずなのに、空気が違うとか、奥に進むほど徐々に意識が遠のいていくとか……。

 次元の門は外界と領域のちょうど真ん中に当たる場所だそうで、近くに居ると眠気に近い何かを感じたり、誰も居ないのに気配を感じるなど、そういった感覚があるそうです」


「エミリアちゃんの話、まるでホラーみたいな場所ね」

 ベルフラウは私の話を苦笑しながら聞いている。


「うーん、話を聞いてると気味の悪い場所って事ですね……ですけど、わたしはそんな――」


 と、サクラは言い掛けたところで、レベッカは言った。


「――感じました。途中、わたくしは周囲に誰も居なかったはずなのに、誰かに見られているような気がしたり、途中で一瞬、意識が途切れかけて足を止めてしまったことがあります」


 どうやら、レベッカだけは感じ取れたようです。

 この中で最も五感に優れているレベッカだからこそでしょうね。


「レベッカちゃん、もしかしてそれって、わたしが肩をぶつけちゃった時?」

 サクラはレベッカにそう質問すると、こくんと首を縦に振って頷く。


「おそらく、レベッカが感じた場所が【次元の門】に近いのだと思います」

「なら、そこに行けば―――」

 ベルフラウは、私の言葉に喰いつくように反応するが、それを手で制して一旦抑えさせる。


「……ですが、カレンの話だと、仮に次元の門に近付いたとしても、私達の意思で自由に行き来出来るわけじゃないそうです。あくまで神様に『招待』されなければダメらしいので」


 私は、ベルフラウ達に言い聞かせるように語った。


「……じゃあ、私達はやっぱりレイさんの所に辿り着けないんですか?」


「いや、そうとも限らないですよ。確かに、私達の意思では行き来は出来ませんが、レイと同じく注目されれば『招待』してもらえる可能性があります」


「注目されるって、どういうことですか?」

 サクラが首を傾げて言った。


「例えば、サクラは【勇者】で、神様の知り合いですよね」

「え、まぁそうですけど」


 サクラの言葉を聞いた私は、レベッカを指差しながら、こう言った。


「では次にレベッカは、大地の巫女、つまり女神ミリクの信奉者ですよね」

「ええ、間違いございません」


「で……最後に」

 私は、ベルフラウを指差しながら言った。


「ベルフラウは、今は違うかもしれませんが、元、神様ですよね?」

「……それはそうね」


 私の問い掛けに、ベルフラウは渋々といった様子で答えました。


「……? それで?」

 ベルフラウは、私が何を言いたいのかわからないという顔をしている。


「三人は、注目するには十分な存在だと思いませんか。三人共、全員、人智を超えた力を持っていることになります。あなた達三人が【次元の門】の前で騒ぎ立てたら―――」


「「「!!!!」」」


 3人の表情が驚きに染まった。


「ええええええ!?」

「―――まぁ、騒ぎ立てるってのは比喩ですが、神様だって気になって仕方ないんじゃないかと思いますよ。一度、招待されてしまえば、少なくともレイのいる場所には行けると思います」


 まぁ、その後、どうやって帰るかっていう別の問題があるわけですが。

 それに、レイが無事かどうかもまだわかりませんからね。


「なるほど……」

「でも、本当にそんなことでいいんですかね……」

「……やってみる価値はあると思うわ」


 どうやら彼女達を焚きつけることに成功したみたいですね。私一人では、どうやっても注目されなかったでしょうが、神に近しい存在の彼女達がいれば別でしょう。


 特にサクラは、レイと同じく【勇者】だから、神様だって注目せざるおえないはず。


「……休憩はそろそろいいでしょう。レベッカ、その例の場所に案内してもらえますか?」

「はい、お任せくださいまし」

 レベッカは、私の言葉を聞いて微笑みながら先導して歩き出した。

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