第432話 久しぶりの勇者二人組
【視点:桜井鈴】
僕が気が付くと、そこはメカメカしい研究所ではなくダンジョンみたいな場所だった。
「???」
僕は、さっきまで何をしていたんだ……?
記憶が曖昧だ。確か、吸気口に入るために身体変化の指輪を使って、それから……。
「変身、終わりましたか?」
僕は背後から突然話しかけられて、驚きで僕の身体をビクンと跳ねる。
「わぁっ! ビックリした……! って、サクラちゃんかぁ」
そこにいたのは、不思議そうな表情をしたサクラちゃんだった。
サクラちゃんは、クエスチョンマークを浮かべて言った。
「ビックリって、待ってて言ってのはレイさんじゃないです?」
「え………あ、そっか……」
そうだ、思い出した。僕は吸気口に入るために女の子の姿になって、それから危ない場面に陥りながらも何とかここまで来たんだった。
その後、捕まってる人達を探すために、二手に分かれて行動することになった。
……何故だろう。どういうわけか一部の記憶が抜け落ちている。
「(……今までは、こんなことなかったのに……)」
特に女の子に変身した直後の記憶が殆ど抜け落ちている。途中、吸気口内部でレベッカと行動してたはずだし、何かすごく重要な話をしたような気がする。
………駄目だ、全く思い出せない。
「……レイさん、どうしたんです。もしかして、気分、悪いです?」
「……だ、大丈夫、ちょっとド忘れしちゃってて」
サクラちゃんも心配そうな顔をしている。
「気にしないでサクラちゃん。ちょっと疲れただけ、それより早く行こう」
「う、うん……そうですね!」
僕達は、囚われた人たちを探しに行くことにした。
この階層は広大だが、魔物の言葉をそのまま信じるならここに人が囚われているはず。
魔道製造機も残り一つだ。
この階層にあるかは不明だけど、人命優先ということで捕らわれてる人の救出優先だ。
その後、彼らを避難させたのちに、残った製造機を見つければ良い。
僕達二人はそのように方針を決めて進むことにした。
「魔物と鉢合わせしたらどうします?」
「戦闘は避けたいけど、下層で色々あったから侵入してるのはバレてるし、魔法があっても難しいかもね」
下手に時間を掛けると下層から魔物の追手が来る可能性もある。
「その場合、もう遠慮せずに斬り掛かろう。
下手に隠れるよりも多分、そっちの方が早いよ。サクラちゃん強いし」
「えへへ、わかってるじゃないですかぁ~」
僕の褒め言葉にサクラちゃんは嬉しそうに頬を緩ませる。
そんなことを話しながらしばらく歩いていると……。
「……む、気配」
僕とサクラちゃんは、足を止める。
すると、前方からガシャガシャと鎧を着たような足音が聞こえてきた。
「あれは……スケルトン……。あ、違う、スケルトンナイト、かな」
「……ですね」
前に現れたのは、骸骨のような見た目をしている騎士型のアンデッドモンスター。
その剣には黒いオーラが纏っており、一目見てかなり危険な相手だとわかる。
「僕にとっては初見の相手だけど、サクラちゃんは?」
「戦ったことないんですか? 結構、強いですよ。あの剣の攻撃を喰らっちゃうとマナにもダメージを受けちゃうんです」
「それは、厄介だね……」
肉体に受けるダメージは勿論致命傷だけど、マナが減らされると僕達はまともに動けなくなってしまう。それは最悪行動不能になると同義だ。動けなくなったらそのまま死ぬ。
「とにかく、攻撃を絶対受けちゃダメですよ!」
「分かった」
僕はサクラちゃんの忠告を頭に入れて、剣を構える。
サクラちゃんも双剣を構えて、臨戦態勢を取る。
「それじゃあ、行きます!」
サクラちゃんはそう叫んでから、先行して飛び出していく。
「はぁああ!!」
まずは通路を疾走して左の短剣でスケルトンナイトを攻撃する。
スケルトンナイトはそれを左手に持っていた盾で防ぐ。そして、防いだところで魔物の右手の剣でサクラちゃんに斬り掛かる。
しかし、そこに僕が割って入る。
「ギッ!?」
スケルトンナイトの声か、それとも骨が軋んだ音なのか分からないが、割って入ったことに驚いたのか、スケルトンナイトは奇妙な音を出しながら後ずさりしようとする。
「隙ありっ!」
そこに、サクラちゃんが回し蹴りを入れて、スケルトンナイトの腰の骨を叩き折る。
突然蹴りを入れられたスケルトンナイトは、骨の一部を砕かれてバランスが取れなくなり隙が生まれる。
「よしっ! 後は任せて」
僕はサクラちゃんと入れ替わるようにして前に出て、スケルトンナイトの頭蓋骨を聖剣で貫く。聖剣の一撃をまともに受けたスケルトンナイトは、骨一つ残らず一瞬で浄化された。
「よし、倒した」
「ふふん、正義は勝つんです!」
「あはは‥…」
得意げな表情をするサクラちゃんに苦笑しながらも、僕達は先に進むことにした。
予想通りここの階層は魔物の巡回が多かったものの、他の施設と比べると相対的な魔物の数はそこまで多くなかった。
しかし、厄介なことに一部の魔物には
とある魔物と遭遇し、消失の魔法が掛かった状態で横切ろうとしたのだが―――
「―――――!!」
目の前のスライム系の魔物は、僕達が横切ろうとする瞬間、ブヨブヨのジェル状の身体の一部が、鋭利なスピアに変わり、突然僕に攻撃を仕掛けてきた。
「おわあっ!?」
咄嗟だったので、思わず身体を逸らすことで何とか魔物の攻撃を回避する。
「れ、レイさん、無事です!?」
僕は、スライムから距離を離しながら返事をする。
「なんとか……ってか、こいつ
「スライムだから目とか無いのかな。……とりあえず、汚物は消毒です!」
サクラちゃんは世紀末な発言をしながら、炎の魔法を発動させてスライムの身体を溶解させていく。
「びっくりしたぁ……気を付けなきゃね」
「思ったほど万能じゃないですね、この魔法」
視覚に頼る魔物には効果あるが、それ以外には通用しない。
そのような相手には別の方法で上手く躱すか戦って倒すしか無さそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます