第十一章 魔王編?
第413話 内心嫌な予感を覚えるレイくん
第十一章です!!!
戦勝祭から三日後の朝―――
僕は自由騎士団の団員として朝から厳しい訓練に参加していた。騎士としての基本的な戦闘技能を学ぶための訓練であり、基礎的な身体強化魔法を使った模擬戦を行う。
以前と比べ、王宮騎士団のダガール団長が指示をしているせいか、アルフォンス団長の時よりも参加の人数も多く、また本格的な指導が行われている。
僕は訓練用の木剣を持って、目の前に立つ大柄な男性と対峙していた。
「行くぞ」
「はい」
その男性は、僕の返事を聞くと一歩下がる。
そして、開始した瞬間、一瞬にして距離を詰めて斬りかかってくる。
「(速いっ!)」
攻撃に反応して即座に木剣を合わせ防御を行うが、あちらは即座に後ろに跳んで距離を取り、片方の手から魔力を集約させる。
「
いきなり放たれた火球の魔法は一切の遠慮なく解き放たれる。
実戦形式に近いと聞いていたけど、本気の魔法を使用してくるとは。
僕は驚きながら、その攻撃に合わせて同種の魔法で相殺を行う。
「!!!」
魔法を即座に相殺されたのが意外だったのか、相手は驚愕しながらも更に追撃の攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を自身の木剣で防御しながら、僕は一歩ずつ下がって隙を伺う。
「(自分の実力を過信してたわけじゃないけど……)」
相手は王宮騎士団の中の、精鋭部隊と言われてるうちの一人だ。
他の団員と比べても明らかに錬度が違う。剣技も魔法においても大会本戦に参加した戦士たちと比較しても遜色が無い。
聞けば、彼らは長期の遠征にして遠方の魔物達と戦い抜いた猛者達だそうだ。その点で言えば、僕ら冒険者と同じく戦いの中で鍛え上げられた戦士と言えるのだろう。
「(……よし)」
相手の攻撃を受けきったところで、
僕は力を込めて相手の剣を押し込む形で弾く。
「くッ!?」
相手が僅かに体勢を崩したところで、今度はこちらから仕掛ける。
狙うは、相手の右胴。
武器を弾いて態勢を崩したところで、素早く急所を狙う。だが、
「甘いわ!!」
相手は瞬時に反応し、振り下ろされる僕の一撃を防ぐ。
しかし、同時にこちらが動く。今の一撃は止められる前提の攻撃、その為、剣撃が軽めで、相手が防御した瞬間に剣を戻して即座に左銅を狙い撃つ。
「なっ!?」
完全に意表を突いた筈の不意打ちだったが、それでも彼は対処する。左手に持った盾で僕の剣を受け止めて防ぎ、そのまま剣を横薙ぎに振るってくる。
しかし、盾を併用する場合、剣一本の時と比べて攻撃範囲が限定される。
攻撃射程と死角になる位置が予測出来たため、彼の反撃を剣で防御しながら、剣が向かってきた逆の方向に足を一歩動かし彼の側面に入り込む。
側面に回り込まれた彼は盾を前に突き出して、僕を押し出そうとするが、
「―――はああっ!!」
そのまま、僕は敢えて盾に向かって剣撃を放つ。
今までよりも力を加えたその一撃を受け止めてしまった相手は衝撃で盾を弾き飛ばしてしまう。そして、仰け反り無防備になってしまった相手の首筋に木剣を当てる。
「――俺の負けだ……」
相手の降参の言葉を聞いて、僕は彼から距離を取る。
「――ありがとうございました」
そして、一礼をして、僕はその日の朝の訓練を終えた。
◆
「おうお疲れ、レイ」
僕が訓練を終えて着替えていると、
同じく訓練を終えた自由騎士団の仲間が声を掛けてきた。
「あ、お疲れ様です。ジュンさん」
僕がジュンと呼んだ彼は、僕の隣に立って訓練用の鎧を脱ぎ始める。
「ガダール団長が帰ってきたは良いが、色々厳しくて辛いぜ」
「本当そうですね。アルフォンス団長の時は自由に練習出来たんですけど」
「アルフォンス団長は、本人の性格が軽いから規則とかルール厳守とかあんまり無かったんだけどな。ダガール団長は、昔から王宮に仕えてる立場も偉い人だからさ。その分、規律には厳しいんだよ。俺らみたいな新人には余計に厳しい」
「ジュンさんも僕と同じ最近入ったばかりなんですか?」
彼は軽薄な笑みを浮かべながら言った。
「自由騎士団が出来てすぐにスカウトされたが、それでも1年前の話だ。王宮騎士団の古参からすれば、俺もお前も大差ないだろうぜ。実際、俺ら自由騎士団にはかなり厳しいだろ?」
「あはは、確かに……」
今朝もダガール団長が待機所に入ってきて、「儂が居ない間、君達が弛んでいなかったか試させてもらう」とか言われて郊外を走らされたっけ。
その後、大した休憩時間もなく訓練に参加させられてヘトヘトだ。
「俺も、模擬戦で王宮近衛騎士ばっかり当てられて、1勝しか出来なかったぜ」
「お疲れ様です……」
そう返す僕も、実は近衛騎士団ばかりと模擬戦させられていた。どの人も一般の兵士や騎士と比べて、歴戦の猛者感があり、向き合ってるだけでも怖かった。
「お前はどうだった? 1回でも勝てたのか?」
「一応、5回のうち4回は……」
僕がそう言うと、ジュンさんは引きつった顔で僕を見て言った。
「マジかよ……あんなの相手に4回も勝てたのか」
「でも、手加減されてる気がしましたよ。僕の一挙手一投足を見られてる感じがして居心地悪かったです」
「いや、あいつら手加減なんてしないだろ。こっちが弱み見せると徹底的に攻めてくるくらいだ。俺なんか木剣を弾かれて落としちまった時に『騎士が剣を捨てるとは何事だ!』とか怒鳴られて一本取られたぜ」
「あはは……」
そんな会話をしながら、僕達は更衣室を出る。
すると、廊下の奥からこちらに向かって歩いてくる女の子が目に入る。
「あれは……」
「よう、サクラ。お前も着替え終わったのか?」
と、ジュンさんが声を掛けると―――
「あ、レイさん、ジュンさん!!」
ジュンさんが声を掛けた女の子はサクラちゃんだった。
サクラちゃんは呼ばれたことに気付いてトテトテと歩いてくる。
「お疲れ様ですー、練習厳しかったですねぇ」
「全くだぜ」
「サクラちゃんもお疲れ様」
と、僕達は互いに労い合う。疲労困憊といった表情をしている僕達二人と違って、サクラちゃんはまだまだ元気が有り余ってるようだ。
「二人とも元気無さそうですね? 今日はまだこれからですよっ♪」
「サクラは元気そうだな……」
「だって、今は先輩が居ませんからね!! 私がその分気合い入れないとっ!!」
サクラちゃんは、気合を入れる謎のポーズをして、キラキラした目で言った。
「ああ、カレン副団長の事か、聞いてるよ」
ジュンさんは腕を組んでいった。
「目が醒めないんだってな。見舞いに行ったんだが、外傷はもう殆ど治ってるし、気持ちよく熟睡してるようにしか見えなかったが……」
「ジュンさん、それは……」
僕はサクラちゃんがカレンさん事を心配してる事を気遣って、
ジュンさんを止めようとするが――
「大丈夫ですよ、レイさん。
先輩が目覚めないのは寂しいですけど、
すぐに起き上がってくれると信じることにしましたから」
「……そっか」
彼女なりに折り合いを付けたのだろう。
だから、僕はそれ以上何も言わなかった。
「あー……すまねぇ、悪かった。ところでサクラ、お前はどうだった? 近衛騎士ばっかりと模擬戦させられただろ。俺たち、散々絞られて朝からしんどいぜ」
「私は全然平気でしたよ! 皆さん手を抜いてくれましたから」
「はぁ!?」
ジュンさんは驚いていた。
「本当なのか? あの連中が手ぇ抜くとか想像出来ねぇんだが!?」
「だって、全勝しましたし」
「ぜっ……!?」
思わず、僕が絶句する。僕も四勝は出来たけど、それも全部接戦の末の勝利だ。一戦一戦の密度が濃すぎて勉強にはなったけど、ジュンさんと同じく余裕は無かった。それを彼女は簡単にやってのけたということだ。
「あいつら、サクラが女の子だからって手を抜いたんじゃ……」
「でも、ダガール団長はそんな事許さないような……」
「だよなぁ……」
「サクラちゃん元気あり過ぎて、勢いで勝っちゃったんじゃ?」
今も目を輝かせてるし、疲れた様子も無さそうだし。
「んな馬鹿な……あいつら精鋭だぞ?」
「金的とか使ってないよね、サクラちゃん?」
まさかと思うが、先日の腕試しみたいなことはしてないと信じたい。
「ま、いいや。今日お前ら詰所だろ?
時間も結構遅くなってるみたいだし、早く行った方がいいぞ」
「そうします」
「はーい♪」
僕達はジュンさんに返事をしてから訓練場を後にする。そして、王宮の廊下を歩いていると正面からやってきたアルフォンス団長と鉢合わせする。
「あ、団長」
「団長さん、どうもー」
僕達が声を掛けると、団長は「おう」と返事をして言った。
「丁度良かった。お前ら、陛下に呼ばれてるぞ」
「え?」
「グラン陛下が?」
「ああ、なんでも、計画していた作戦がどうとか~ってよ。
レイ、お前も呼ばれてるが、王都の宿から仲間を連れて来いとも仰ってたぜ」
「「???」」
その団長の言葉に、僕とサクラちゃんは二人で顔を見合わせる。
「なんでしょうね?」
「さぁ……僕にもわからないけど、一旦皆を連れてくるね」
「分かりました。それじゃあ私と団長は先に謁見の間で待ってます」
「うん」
それから一時間後―――
僕は皆を連れて、グラン陛下の待つ謁見の間に来ていた。
――作者的コメント――
ここまで読んでくださってありがとうございます!!!!
この話で初めて「女神様といっしょ!」を読んでくださった方!初めまして!!
もし、面白いと思っていただけたら評価やブクマをして下さると嬉しいです!
初めて読んでくださった方は、是非一話目から読んでくださると大喜びします!
色々あって超長いので、場合によっては章飛ばししながら読むのもアリだと思います!!
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