第411話 痴態を暴露されるレイくん

 これまでのあらすじ

 サクラちゃんが強くて無双しました。


 腕試し終わったが、戦勝祭はまだ続いている。僕達は街を散策しながら、仲間達を探しているとようやく目的の仲間達を見つけることが出来た。


「あ、いたいた!」

 僕とサクラちゃんは、また見失わないようにすぐに駆け寄る。


「おーい!」

「みなさーん!」

 僕とサクラちゃんが声を掛けながら走っていくと、

 彼女たちはこちらを振り向いた。


「レイくん、それにサクラちゃんもお帰りー」

「ようやく会えましたね、二人とも」

「お二人とも、お疲れ様でございます」


 姉さんとエミリアとレベッカは、僕達を見てホッとした様子で声を掛けてくる。彼女達は、噴水近くのベンチで休憩しており、屋台で売っている飲み物と食べ物を手に持っていた。


「ごめんね。心配させちゃったかな」

「まぁ、心配はしてましたが、何も無くて良かったです」

「サクラちゃん、このアイス美味しいから食べてみてー」

「アイス!? 私、アイス大好きなんですよ!」

 サクラちゃんは、姉さんにおススメされたアイスを手渡され、嬉しそうにベンチに座って食べ始めた。


 サクラちゃんの様子を見て僕は安心していると、エミリアは僕に近付き、横目でサクラちゃんを見ながら、周りに聴こえない様に僕の耳元でこう言った。


「……ちゃんと元気づけられたみたいですね」

「うん。……って、気付いてたの?」


「ええ。彼女、かなり落ち込んでた様子だったので、レイなら放っておかないだろうなと思いまして、一応遠目から様子を見ていたんですよ。

 その後、腕試しの大会に参加してたみたいなのでもう大丈夫と思って、私達は三人で行動してました」

「あはは……そっか。言ってくれればよかったのに」


「私も、最初声を掛けようとしたのですが、レベッカが――」

「レベッカ?」

 僕は、レベッカの方を見る。

 レベッカは、もきゅもきゅと大福みたいな食べ物を無心で食べていた。


 その様子を見ながらエミリアは言った。

「レベッカが『お優しいレイ様であればサクラ様を元気づけて下さると確信しております。わたくし達はそれを信じて見守っていましょう』

 ……と、お墨付きを貰ったので、レイに全面的に任せることにしました」


「そ、そうなんだ……」

 僕の事を信じてくれるのは凄く嬉しいけど、

 レベッカの僕に対する信頼が異常過ぎて、若干怖いんだけど……。


「そりゃあ、レイはレベッカと出会った初日から随分懐かれてたみたいですし、今、こうして一緒に行動する様になったのも、レイがレベッカと出会った時に優しくしたのが理由じゃないですか?」

「そう?」

「私はちょっとお節介過ぎないか? と思ってたくらいでしたからね」

 と、エミリアは、当時の事を思い出しながらクスクスと笑う。


「結果的に、レベッカが私達と一緒に過ごせるようになったので、今となっては良い思い出ですけどね」

「……うん、そうだった」


 今、思えば、僕のお節介でレベッカのお世話をしてた気がする。最初はレベッカが妹っぽい雰囲気があったから、僕も彼女の事が放っておけなかったんだっけ。


「特にレベッカは、精神的に未熟だったころのレイの姿を見たことないですし、出会ってからレベッカはレイの良い部分ばかり見てましたから、信頼が強いのは当然な気がします」


「み、未熟?」


「ほら、ベルフラウが帰っちゃうと思って泣きながら引き留めたことあったじゃないですか。

 あの日、外は大雨だったのに、二人してびしょ濡れになって帰ってきた時は驚きました。私が二人に説教したのを覚えてますよ」


「う……言われてみれば……」

 あの時、死んで転生した直後だったから精神的に不安定だったんだ。当時から僕に優しく接してくれた姉さん、その時はまだ『女神様』だったけど、彼女が帰っちゃうと思って必死だったっけ……。


「……逆に、ああいう出来事があったから、私はレイが年下に思えて仕方ないのですが」

「い、一応、僕がひとつ上だからね!?」

「ふふ、分かってますよ。当時に比べればレイは立派になりましたから」

 そう言うエミリアは、やっぱりちょっと僕より大人びて見えた。


 ……ところで、さっきからレベッカが紙袋から何度も食べ物を取り出して、無言で食べ続けてるのが気になる。


「レベッカは何をやっているの?」

「中にチョコレートの入っている豆大福ってのが売られてたのですが、欲しそうにしてたので一つ買ってあげたら気に入ったみたいで、いっぱい買ってあげたら無心で食べ始めました」


 レベッカは食べるのに一生懸命で、

 口元がチョコレートでベタベタになってる事に気付いていない。


「なんか可愛いね」

「今は見た目相応に幼くて愛らしいですね。普段から可愛いですけど」

「僕もそう思う」

 僕達はそう言って笑いながら、もきゅもきゅと頬張りながら大福を食べている彼女を微笑ましく見ていた。


「……あれ、そういえば姉さんとサクラちゃんは?」

「あ、二人ならさっき、屋台のアイスを―――」

 と、エミリアが言い掛けたところで、二人がこちらに戻ってきた。


 彼女達は、アイスクリームを両手に沢山持っている。


「お待たせー、皆の分も買ってきたわよー」

「レイさんとエミリアさんも好きなのをどうぞー」

「わ、ありがとう!」

「いただきます、こんなにあると迷っちゃいますね」

 僕達はベンチに座っているレベッカの隣に座って、それぞれ好きな味を選んで食べ始める。


「ん~! 美味しい!」

 僕達はアイスの味を楽しんでいると、

 レベッカは大福をようやく全て食べ終えたようで、

 僕達のアイスクリームを見てレベッカは言った。


「サクラ様、わたくしも一つよろしいでしょうか」

「良いですよー、どぞー」


 サクラちゃんは、まだ口を付けていないアイスをレベッカに渡す。


「あ、レベッカ、その前に」

 僕はポケットからハンカチを取り出して、レベッカの口元に付いたチョコレートを拭う。


「……あ、レイ様にこのような……むぐぅ」

 僕がレベッカの口を拭いているときに話し始めたものだから、途中で変な声を出すレベッカ。


「レベッカ、もっとゆっくり食べないとダメだよ?」

「も、もうしわけありません……」

 レベッカは恥ずかしそうにしながら俯いた。


「レベッカちゃんは本当にレイ君の事が大好きなんだねぇ」

「(コクコク)」

 レベッカは、口を拭かれてるので姉さんの言葉に、首を振って頷く。

 口元が綺麗になったので、ハンカチを仕舞う。


「ありがとうございます、レイ様」

「ん、大丈夫だよ」

 僕はレベッカの頭を撫でながら言った。


「ふふ、なんかそうしてると、レイさんとレベッカさんって兄妹みたいですね」

「本当、私もそう思うわ」

 サクラちゃんは緩んだ表情で言い、姉さんは笑いながら同意する。


「レベッカちゃんって、レイくんとの距離が近くなると、自然にレイくんに身体寄せたりするからベッタリに見えるわ。髪の色も結構似てるし、よく兄妹と勘違いされてたりするよね」

 姉さんの言う通り、僕とレベッカの髪色は多少似ている。ただ、レベッカは地毛で銀髪だけど、僕の場合は障害で髪の色素が抜けて白くなっているだけだ。


「ベルフラウさんも銀髪ですし、三人揃って、姉、弟、妹ですね」

「あはは、そうね。エミリアちゃんは、髪色が違うから義理の妹って感じかしら?」

「まぁ、私は黒髪ですから、無理矢理組み込むならそういう感じになりますけどね」

 エミリアは苦笑する。


「ところで、レベッカ、そんなに食べて大丈夫ですか? 相当カロリー摂ってると思いますが」

「大丈夫です、エミリア様。わたくし、太らない体質なので」


 レベッカの何気ない一言で、女性陣三人に電撃のような衝撃が走る。


「そう……ですか。……なんて羨ましい……」

「……私なんて最近体重増えたのに」

「へー、良いですねー」

 エミリアは、ちょっとだけ恨めしげにレベッカを見ながら呟き、

 姉さんは自分のお腹に手を当ててガックリしている。サクラちゃんは他人事のように返事をしているが、一瞬、自分の二の腕をぷにぷに触っていたことに僕は気付いていた。


「言われてみると、レベッカって全然体型変わらないよね」

 昔に比べると若干身長は伸びてるけど、体重が増えた様子は全然無い。彼女の着ている巫女服は、日本のチャイナ服のように体のラインが分かりやすくてスレンダーな印象がある。

 やや幼児体型とも言えるが、それでも衣装のせいで色っぽく感じる。片方の足にスリットが入っており、きめ細かい白い太ももが露出していて正直見ててドキドキする。


 レベッカはアイスを掬いながら語る。

「実は昔からあまり変わってません。

 少し前に身体検査したのですが、胸も殆ど成長してませんでした」

 レベッカは、ほんの僅かに少し落ち込んだ様子で言った。


「そ、そうなんだ……」

 何か言ってしまうとセクハラになってしまいそうなので、それ以上は何も言わなかった。

 だが、この後のエミリアの発言で酷いことになった。


「でも、レイはそっちの方が良いのでは?」

「え」


「レイ様、そうなのですか? レイ様はお胸の大きな女性より、小さな女性の方が好みなのですか?」

「え」


「ええー? レイくんは私みたいに巨乳なのが好きなんじゃないかな? 一緒に寝ると無意識に抱き付いて触ってくるし」

「え゛」


「ベルフラウ、それはレイの寝相が悪いだけでは?

 前に、レベッカが大人状態になった時に、レイはこっそり『やっぱりレベッカはちっちゃい方がいいなぁ』ってぼやいてましたよ」

「え、ちょ、ちょっと!?」


「なるほど、レイくんは寝ぼけて私とお母さんだと勘違いして甘えてきてたのかも。レイくんのお母さんも胸大きかったみたいだし、レイくんって幼いころからお母さん大好きだったもんね」

「ね、姉さん、変な事暴露しないで!?」

 突然、僕の性癖が暴露されるような流れになって、どんどん居心地が悪くなってくる。


「……レイさん?」

 サクラちゃんが、張り付いたような笑みを浮かべてこっちを見た。

 こわい。


「あ、いやその……。ほら、ちっちゃいって胸の事じゃなくて、幼いレベッカの方が可愛いかなーって……あはは」

「……レイ様」

 レベッカが、ジト目で僕を見つめてくる。


「レイくん。それ自分がロリコンって認めてるようなものよ」

「……」

 やらかした。


「……レイ様」

「ごめんなさい……」

 僕はレベッカに対して素直に謝った。


 その後、皆から散々弄られた後、

 レベッカに「わたくしはこのままが良いのですか?」と耳元で囁かれた。

 何も言えませんでした。


「レイさん、何というか……」

「……」

 僕はサクラちゃんに怒られそうな雰囲気を感じて、身構える。

 精神的な意味で。


「―――素晴らしいと思います!!」

「……え?」

 サクラちゃんは目を輝かせながら言った。


「良いじゃないですか!! 妹のように接してるレベッカさんに対して強い愛情を感じますし、お母さんが大好きなのも素敵な事だと思います! 家族ですもんね、一緒に寝たりじゃれついたりしますよ!」


「そ、そうかな」


「そうですよ! 私だって、ママやパパや先輩にベッタリ甘えたりしますし、たまに近所の子供に抱き付いて、子供が真っ赤になったりしますから!! ね、ね、エミリアさんもそう思いません?」


「あ、はい、家族仲が良いのは良い事です……ていうか揺らすのやめて」

 エミリアはサクラちゃんに両肩を掴まれて揺らされ、コクコクと頷く。


「ですよねー!」

 サクラちゃんは満面の笑顔で言った。


「サクラちゃん、思ったよりもかなりアクティブな子なのね」

 姉さんはサクラちゃんの発言に、

 苦笑しながら自分の頬に手を当てながら笑った。

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