第400話 魔法の正体
雷龍カエデと合流し私達は、
抜け殻となった100年前の魔王の破壊を試みる。
しかし、その前に立ちはだかったのは、気絶していた筈のアカメだった。
私エミリアは、カエデ達を逃がして彼女の足止めを引き受ける。
【視点:エミリア】
私とアカメは上空50メートルほどの高さで飛行したまま戦っている。
地上では、戦士たちは雑魚の魔物達を抑え、騎士団は抜け殻から距離を取った状態で弓矢を放ってけん制を繰り返している。レベッカとカエデは上空から地上に向かって飛行している状態だ。
今、私とアカメの戦いに介入できる者は存在しない。
つまるところ、完全な一騎打ちの状態だ。
「まぁ、それでも勝つのは私ですが!!!」
私は自身の周囲に計十個の青色の魔法陣を出現させる。
「!?」
「食らいなさい、
魔法を発動させると、私の周りに出現した魔法陣から大量の鋭い氷柱が出現して、アカメを襲う。
「――っ!!」
彼女は、自前の悪魔の翼で空を飛び回り、氷柱を回避する。
そして剣を構えた状態で、そのままこちらに突っ込んでくる。
私を接近戦で仕留める気だろう。
だけど、それは彼女が剣を出した時点で予想していた。
「だろうと思ってましたよ」
私は僅かに上に飛び上がり、自分の背後に隠していた赤色の魔法陣を彼女に見せつける。
「何……!?」
アカメは、勢いよく飛んできたため自身からその魔法陣に突っ込む形になる。
「食らいなさい。
「っ!!!!」
その魔法が発動すると同時に、
轟音を上げながら彼女に燃え盛る地獄の炎が押し寄せる。
「これで終わりです!」
私の放った魔法によって、空に大きな爆発が起こる。
巻き込まれないように私は爆発から距離を取り、その光景を見守る。
そして、爆発が終わると徐々に煙が晴れてくる。
しかし、まだ勝負は終わってないようだった。アカメは、全身が焼け焦げながらも、フラフラと空中で立ち尽くしていた。
「しぶといですね……」
「――あなた如きに負けるわけにはいかない」
そう言って彼女は片手をこちらに向けると黒い球体を作り出し、こちらに放ってくる。
「爆発魔法ですか、何度もそんな攻撃通用しませんよ!」
私は杖を前に構えて、火球の魔法を彼女の球体の倍出現させ解き放つ。二つの魔法が衝突すると、大爆発が起きて私と彼女は軽く吹き飛ばされてしまう。
しかし、アカメはその勢いに乗じて、一気に地上に下降していく。
「逃げる気か!!」
「もともと貴女と遊んでる暇はない」
「――待ちなさい!!」
私は彼女を追って、急降下する。地上に着く頃にはもうすでにアカメは着地しており、彼女は上空で技の発動の準備をしていたカエデ目掛けて魔法を放とうとしていた。
しかし、彼女が放とうとした瞬間―――
カエデの口から、凄まじい熱量と光を伴った極太のレーザーが放射される。
そのレーザーは、王都に迫っていた巨体の魔物、魔王の抜け殻の胸から腹の間を貫き大穴を開け、更にその先の山を貫通してあらゆるものを破壊していく。
そして、カエデの究極破壊光線が止まると、
魔王の抜け殻は、その場でだらりと身体を揺らして崩れていった。
「……そんな」
アカメは、呆気に取られた表情をして、その光景を眺めている。
「(どうやら、何とかなったようですね……)」
あとは、目の前のアカメと、レイが戦っているロドクを倒せば勝ちだ。
残った魔物達は、騎士団と戦士たちがどうにかしてくれるだろう。
私は、呆然とするアカメに向かって言った。
「アカメ、あなたの相手はこの私です」
そして、私はアカメに杖を向ける。
「赤眼の魔軍将、お前はここで倒す」
「―――舐めるな」
彼女は剣を構えて、私の方へ駆け出す。
私も杖を構えて、彼女と向かい合う。
しかし、その前に私と彼女の前に現れた人物が居た。
――ガキンッ!!
アカメと現れた人物の二人が、私の前で剣をぶつけ合う。
アカメは、急に現れた人物を警戒し、たまらず後ろに下がる。
その、人物とは――
「サクラさん!?」
その人物は、ずっとカレンの看病をしていたサクラだった。
彼女は、自身の短剣ではなく、カレンが使っていた聖剣を手にして、アカメと対峙していた。
「……もう一人の勇者、サクラか」
「……」
サクラはアカメの質問に答えずに、剣を構えている。
彼女はずっと泣いていたせいか、彼女の目元は赤く腫れていた。
普段の彼女からは想像できないほど表情も硬く、目つきも鋭い。
「サクラさん、カレンは―――」
「―――先輩は無事です。ベルフラウさんが丁寧に治療してくれましたから」
「……そうですか」
私は、少しホッとする。
「―――でも、まだ目を覚ましてないんです。先輩、身を守るために自身の保有するマナを、限界以上に使ってしまったみたいで……しばらく目覚めないって」
サクラは、そう言いながら、目元に涙を溜めている。
「……お前のせいだ」
「……」
サクラは、目の前のアカメに対して怒りに満ちた声で言う。
「お前のせいで、先輩がこんなことになったんだ! 許さない!!」
サクラは怒りのままに彼女目掛けて剣を振るう。
「――無謀、怒りのまま攻撃しても、あなたでは私には勝てない」
アカメは、無表情でそう言いながら彼女の剣を冷静に捌いていく。
しかし……。
「
私は、彼女の後ろから雷の魔法で、アカメに向かって落雷の魔法を放つ。
「――!!」
私の魔法の発動を見て、アカメは即座にその場から離れて私の魔法を回避する。
「私を忘れては困りますよ」
「……っ!!」
私の魔法を回避したアカメだったが、
今度はサクラの剣撃を避けることができず、腹部にもろに入ってしまう。
「……ぐぅ!」
アカメはそのまま吹っ飛び、建物の壁に激突する。
「――まだまだ!」
サクラは、アカメがぶつかった壁の方に走り、アカメを壁ごと斬り裂こうとする。アカメは彼女の攻撃を何とか横に躱すが、彼女が切り裂いた壁はそのまま真っ二つになり壁の一部が崩れていく。
「(な、なんて威力……)」
いくら聖剣だからって、カレンでもあれほどの攻撃力は無い。サクラも勇者としての力を十分に覚醒させていたようだ。もしかしたら彼女は既にカレンより強いのかもしれない。
「……この場は、撤退すべき」
アカメは、ふらつく足取りながらも、空に浮かび上がる。
「逃しません!」
私は緑の魔法陣を展開して、
「(またそれか……! 一体、どういう原理の魔法なんだか……!)」
これで彼女に魔法を無効化されたのは四度目だ。
使わない時もあれば、今のように無効化されてしまうことがある。
法則性が今一つ分からない。
「……いや、待て……」
しかし、私は彼女の直前の行動を思い出す。
「(アカメは、魔法を打ち消す瞬間、魔法を睨んでいたような……)」
もしかして、魔法を視覚で捉えることで打ち消しを行っている?
視覚で捉えた魔法を打ち消す……。
視覚、………目……?
「―――そうか、目だ!!」
「……? エミリアさん、何のことですか?」
私の前に出て剣を構えて、隙を伺っていたサクラさんは私に質問した。
「あいつの正体不明の魔法の事ですよ。
アカメ、貴女がどうやって魔法を無効化していたか気付きました。
……貴女、<魔眼>を使ってますね?」
「……正解」
アカメは、空中に浮きながら答える。
「魔眼……それって、アイツの目と関係があるんですか?」
サクラの質問に、私は淡々と答える。
「魔眼というのは、通常の魔法系統とは全く別の系統の魔力を持った瞳の事です。その瞳は、特殊な力を持っていて人によって種類は様々です」
「それって、どんな……?」
「例えば、目視した相手を麻痺させる<麻痺の魔眼>、
対象を誘惑する<魅了の魔眼>………そして、アカメは――」
「――視界に入った魔法を打ち消す<破邪の魔眼>」
アカメはそう言うと同時に自身の目に手を当てる。
「……まさか、貴女に気付かれるとは思わなかった」
「……私も知り合いに魔眼使いがいなければ気付くことは無かったでしょう」
その知り合いとは、レベッカの事だ。
レベッカは<魅了の魔眼>という魔眼の一種を使用できる。
彼女の魔法の存在を知らなければ永遠に気付けなかった。
「なら簡単です。目の届かない死角から攻撃すれば防がれることは無い」
私はそう言いながら、魔法陣を出現させる。
「……私の魔眼に気付いたのは見事。だけど、今の会話で時間を稼がせてもらった」
アカメの言葉と共に、上空から何かが飛び降りてくる。
「な……!」
「あれは……!?」
それは、彼女が従える悪魔系の魔物達だった。
魔物の一人は言った。
「赤眼の魔軍将殿、ここはお任せを」
「任せる」
アカメがそう言うと、魔物達は私達の方に一斉に襲い掛かってくる。
「ちっ!!」
「く……エミリアさん、後ろに下がって!!」
サクラは私を庇うように、カレンの聖剣を使って魔物を切り裂いていく。
しかし、その間に、アカメはどんどん上空へと上がっていき―――
「もう一人の勇者、レイに伝えて。……勇者なんて止めるように、と」
それだけ言い残して、彼女の姿は見えなくなった。
「 アイツ、許さない!!」
サクラは逃げたアカメに怒りを向ける!!
「サクラさん、今は目の前の敵に集中しましょう!」
「……はい!」
そうして、私とサクラは二人で協力しながら目の前の魔物達と戦う。
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