第377話 ラッキースケベ消滅
僕達は、コロシアム中を歩き回る。
その中の一つの小部屋に入り僕達は部屋の中を探し回る。
すると……。
「あった、これだよね!」
部屋の中に、本当に小さい手のひらサイズの魔法陣が引き出しの中に刻まれていた。
「これが、地下への扉を開くための魔法陣……ですか」
「あぁ、そうだ。よく見つけたな。あとは魔力を注ぎ込むだけで、地下への階段が出現するはずだ」
「なるほど……じゃあ、
僕は、小さな魔法陣に指を当てて、魔法を発動させる。
魔力発動によって魔法陣に魔力が充填されると、部屋の中が軽く揺れて、部屋の床の一部がズズズ……と音を立てながら横に動いて少ししてから停止する。
床が動いた場所を覗きこむと真っ暗な穴だった。
そこには下に向かう梯子が掛かっており、どうやらこの梯子を使って下に降りろということらしい。下の様子は暗くてここからでは分からない。
「誰か灯り持ってる?」
「ランタンは持ってないわよ。ベルフラウさん、
「おっけ! ――光の玉よ、我が道を示し給え……っと」
姉さんが魔法の詠唱を行い、発動させると僕達の頭上に光を放つ光の球が浮かんだ。これなら自分の手元であれば見渡せるだろう。
「それでは、レイ様、わたくし達から先に降りていきますね」
「えっ、危なくない? 僕から先に行った方が……」
雰囲気的に魔物がいるかもしれない。危険な可能性が高い。
まずは、一応リーダー扱いされている僕が先に進むべきだろう。
「いえ、そのお気持ちは有り難いのですが……」
「レイは後からお願いします」
レベッカ、それにエミリアは少し困ったように笑う。
だけど何故か顔を赤らめてスカートの裾を抑えていた。
「?」
僕が何のことか分からず戸惑っていると、
カレンさんとサクラちゃんが、僕達を横切り暗闇の穴の前に立つ。
「私達はさっさと先に降りるわね」
「それじゃあお先に―」
と、言いながらカレンさんとサクラちゃんは、
何の躊躇もなく、その暗闇の中に飛び込んでいった。
しかも梯子を使わずジャンプして。
「ちょ!? 危ないですよ!!」
慌てて下を覗き込んだけど、もう二人の姿はなかった。
「あの二人は置いといて、危ないから先に僕が行くよ。これでも男だし」
「いや、ですから、レイが男だから先に行っちゃダメなんですよ!」
「どういうこと?」
「ベルフラウ、アナタの弟でしょ、説明してあげて下さい」
「あー、レイくん、あのねー」
と、姉さんはこっちに手招きして呼び寄せようとするが―――
その前に、アルフォンス団長が僕達の前に出て自信満々に言った。
「お前たちが先に行かないから俺が先に行こう!!
大丈夫だ、俺が安全かどうかしっかり確認してやる。お前たちの足が滑ったら俺がしっかり受け止めてやるから、先行した俺のすぐ上を降りるんだぞ。あ、レイ。お前は一番後でな」
「団長、急にどうしたんですか」
突然謎にはしゃぎ始めた団長の早口に、僕達は翻弄されてしまう。
「気にするな、じゃあ行くぞ!!」
と、団長が降りようとしたところで、後ろから魔法の発動を感知する。
「
声と同時に束縛の魔法が発動し、団長の周囲に鎖が出現する。
団長は、振り払おうとするが、鎖はどんどん巻き付いて団長は身動きが取れなくなってしまった。
突然の出来事に、僕は魔法を掛けた人物に振り返る。
「姉さん、なんでこんなことを――」
と、僕は姉さんの突然の行動に抗議する。
「……いや、だって、団長さん、どうみても下心丸出しだったし」
と、姉さんの冷たい視線が団長に向けられていた。
「ぐっ……さ、流石ベルフラウさん、俺の心を見抜いていたとは」
アルフォンス団長は、何故か涙を流して悔しそうに縛られていた。
「あなたの目線で大体想像が付きますよ。
分からなかったのはレイくらいのものですね」
「え、うん。どういうこと?」
エミリアの言う通り、何が起こってるのかさっぱり理解できない。
なんで姉さんは突然団長に攻撃を仕掛けたのだろう?
「つまりこういうことですよ」
エミリアは、梯子に手を掛けてみる。
「こうやって、私達スカートの女の子が降りていったら……」
「え? ……あ」
言われてみて、ようやく気付いた。
つまり団長は先に降りて、女の子達のスカートの中を覗こうとしたのか。
僕は、縛られて身動きが取れなくなった団長をジト目で見る。
その視線に耐えられなかったのか、団長はすがるように叫んだ。
「男には、好奇心が抑えられないこともあるんだ。お前なら分かるだろ、レイ!」
「……」
後ろの三人の冷たい視線が突き刺さったから止めたけど、
危うく『はい』と答えてしまう所だった。
「……姉さん、とりあえず拘束解除しようか」
「はいはい、束縛解除っと」
姉さんは団長に掛けた束縛を解く。
「では、レイ様」
「私達、先に行きますね」
「レイくんは団長と二人で降りてきてねー」
ばいばーい、と言いたげにこちらに手を振って三人は降りていった。
「……」「……」
沈黙が場を支配する。
「……お前の仲間って皆可愛いよな……」
「え、……まぁそうですね」
この世界は割と美男美女が多い気がするけど、
姉のベルフラウも含めて、レベッカもエミリアは相当可愛い部類に入る。
サクラちゃんやカレンさんも同様だ。
「羨ましいぜ、畜生……。はぁ、行くか……」
「はい」
僕達は、少し女の子達と間を置いてから梯子を降り始めた。
その途中―――
「……はぁ、俺もモテてぇよ……」
アルフォンス団長は、ため息を吐きながら僕の少し下で梯子を降りている。
「団長は十分モテていると思いますけどね……」
僕は適当に相槌をうちながら一緒に降りていく。
今回の大会で知ったことだが、団長は男女問わず相当ファンが多い。
中には、団長の名前を刺繍した横断幕を掲げている女性たちもいるくらいだ。
「いや、俺のは違うんだよ。確かに応援してくれるのは嬉しいんだが、お茶を誘ったりすると、何故か断られるんだ。俺の何がいけないんだ……」
「そんなことやってたんですか……」
女の姿の僕に会った直後にナンパするだけの事はある。
「顔か、俺の顔がダメなのか!?」
「いや別に顔は悪くないと思いますが……」
普通にしてたら結構な好青年に思える顔立ちをしてると思う。
「なら何がダメなんだ……」
「がっつき過ぎだからじゃないですかね」
「くそっ、だから俺はいつまでも童貞なのか!!」
とんでもないカミングアウトを聞いてしまった。どうでもいいけど、下で女の子達に聞こえてるかもしれないから変な発言するのは勘弁してほしい。
「……まぁ、俺の貞操はいいとして、お前はあの中で誰が好みなんだ?」
「なんですか、いきなり……」
「いやぁ、男同士はこういう話をするもんだろ。俺としてはベルフラウさん一択だな。あの優しそうな笑顔と、大きな胸とお尻……最高じゃないか」
ははは、冗談おっしゃる。
「姉さんに手を出したら団長のアレ切り落としますから、発言には気を付けてくださいね」
「……お、おう。マジでやりかねないから勘弁してくれ……」
団長は冷や汗を流しながら、梯子を下っていく。
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