第306話 懐かしき遊具
「ねぇ、レイ君は何か欲しい物とかは無いの?」
「僕?」
突然、カレンさんに話を振られた。
欲しいもの……?
「……ふむ、レイ様の欲しいものですか。わたくしも興味がございます」
「以前にプレゼントはしてますが、まぁ聞いてあげますよ」
レベッカは興味津々、エミリアは仕方ないですねーと言いたげな口調で言った。
「ほ、欲しいものかぁ……」
僕は腕を組んで考え込む。
最近は旅で忙しかったけど、僕は何して過ごしてたかな……?
ええと、旅立つ前は普通に冒険者として働いて、
その稼ぎは一度姉さんに渡してからお小遣いって形で貰ってたけど……。
その時、買ってたものと言えば……。
「(気に入った本を買ったりとか、子供の間で流行ってた絵札のカードとかを買い漁ってた気がする)」
本はこの世界の風景を描いたイラストを何ページも載せた冊子や小説とかだったかな。 絵札のカードに関しては、僕が以前の世界で流行ってたカードゲームに似てたからつい衝動買いしちゃった。
だけど対戦相手が居ないから買っただけでしまい込んで、
ゼロタウンの拠点に置きっぱなしだ。本も読んでないものが沢山ある。
「(考えてみると、趣味って程でもないな……じゃあ、元の世界にいた時は……)」
……いや、そもそも僕引きこもりだったし。
他の同級生みたいに恋愛だのスポーツだの全く無縁だった。
ちょっと悲しくなってきた。
「レイ君、黙り込んでどうしたの?」
カレンさんに言われて、すぐに反応する。
危ない危ない、自分の過去が酷すぎて涙するところだった。
「あ、なんでもない……えっと、趣味の話だよね」
改めて、なんて答えようかと僕が迷っていると……。
「レイくんの好きな物っていうと、やっぱりテレビゲームとか? あとパソコンじゃない?」
「!?」
姉さんの言葉に僕は激しく反応する。
「てれびげーむ?」
「ぱそこん?」
レベッカやエミリア、それにカレンさんとリーサさんも聞き覚えの無い単語に困惑している。
「あれ、違ったかしら?」
姉さんは僕を見て首を傾げる。
「いや、合ってるけど……なんで知ってるの。姉さ……女神様」
いつもも『姉さん』と呼んでるから時々勘違いしそうになるときがあるけど、この可愛いお姉さんは元々は僕と血のつながりの無い女神様だった。
今でこそ、本当の姉弟と変わらない親密な仲になってはいるけど、僕がこの世界に転生する以前は会ったことすらなかった。
「なんでって……それはいつも見てたからだけど……」
「え?」
「だから、レイ君が楽しそうに遊んでるところ、私ずっと見てきたのよ?」
―――私、ずっと、見てきたのよ?
その言葉を理解するのに、数秒の時間を要した。
そして僕は一呼吸置いて、
「……ええええええ!!!!!!!」
物凄く驚いた。色んな意味で衝撃だった。
「あれ、言わなかったっけ?」
「聞いてないよっ!!」
少なくとも、この世界にテレビゲームもパソコンも存在しない。
姉さんと出会ったのは、僕が死んでこの世界に転生する直前のはずだ。
要するに姉さんだって僕と初対面……だったと思うのだけど。
「なにか揉めてるみたいね……」
「姉弟けんかというものでしょうか、参考にさせていただきますね」
「何の参考にする気ですか、レベッカ……」
「……あの、さっぱり話が見えないのですが……?」
僕たちのやり取りを見守る女性陣からそんな声が上がる。
しかし、姉さんは構わず話を続ける。
「うーん、結構前の話だし、
レイくんも忘れちゃったのかな? ほら、覚えてないかしら?」
姉さん、いや今は女神ベルフラウ様とあえて呼称しよう。
女神ベルフラウ様は僕に優しく微笑みかける。
僕は記憶を手繰るように、今までの事を思い返してみた。
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