第243話 苦戦の末に

 しばらく走っていると、木々が生い茂った場所に辿り着いた。

 ボクは剣を構え、レベッカも弓を構える。

 カレンさんも息を整えて、剣を地面に突き刺したまま詠唱を行う。


<索敵>サーチ

 カレンさんは敵の位置を把握するために索敵の魔法を使用する。


「……ウィンド達は今も戦っているみたいね。敵の数ももう少ないみたい」

 それは良かった。あちらが片を付けば、こちらと合流できる。


「地獄の悪魔は……こっちに向かってきてるわ」

「すぐさま戦闘になりそうですね」

 レベッカの言葉を聞いて、ボク達の表情も険しくなる。

 奴の魔法の威力を考えると、下手な攻撃では通用しないかもしれない。


「以前、同種の地獄の悪魔と戦ったんだけど、それよりも強いわ。どういうことかしら……」


 カレンさんは、以前に地獄の悪魔と戦ったことがあるらしい。

 その時は、敵軍の大将として地獄の悪魔が魔物軍の指揮をしていたそうだ。

 最後は一騎打ちの末にカレンさんが勝利を収めた、という話だ。


「魔王の影響でしょうか……」

「かもね……」


 以前のまがい物とは比べ物にならないくらいに強い。魔王が完全に復活した時、魔物達がどれだけ強化されてしまうのか想像すると怖くなる。


「お喋りはここまで、来たわよ」

 カレンさんと言葉と同時に、空から何者かの影が飛び出してきた。


「見つけたぞ、この場で俺が始末してやる」

 そう言って現れた悪魔は、片手に剣を持ちもう片方の手には魔方陣を展開している。

 その手からは魔力弾が撃ち出され、ボク達を襲う。


「させない!」

 手に持った剣を振りかぶり、魔力弾を弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた魔力弾は、近くの木に当たり爆発を起こした。


「人間にしちゃあ大した強さだが、魔軍将様が苦戦するほどの相手とは思えねぇな」


「……魔軍将?」

 聞き慣れない言葉だ。クラウンの事だろうか。


「アンタのいう魔軍将って何の事? まぁ、大体想像は付くけどね」


「魔物、その魔軍将というのはリディア・クラウンの事か?」


 カレンさんに続き、レベッカも質問を投げかける。


「ほぉ、よく知っているじゃねえか。その通りだ。魔王軍を支える四人の幹部の一人よ。オレの直属の上司といえば、お前らに伝わるか?」

 

 ということは、あいつみたいな奴があと三人いるって事か。


「まぁ、貴様らが魔将軍様と会う機会は永遠に来ないがな!!」


 悪魔の男は叫びながら、剣を掲げる。


「では死ね!」

「くっ!」

 カレンさんは聖剣で魔物の剣を受け止める。

 しかし、想像以上に力が強い悪魔に押され始める。


「そ、その剣は……!!」

 奴が所持する剣は、以前見た黒の剣と同一のものだった。


「ほう、この剣の事を知っているのか?

 他の別の魔軍将様が研究を重ねて試験的に導入した武器と聞いていたが、お前ら人間に知れ渡っているとはなぁ!!」


「くっ……ぐぅ……」

 鍔迫り合いで押し負けそうなカレンさんに加勢すべく、ボクも悪魔の男に攻撃を仕掛ける。


<中級雷撃魔法>サンダーボルト!」

 ボクは魔法を唱えて、悪魔に攻撃する。

 しかし、奴はカレンさんを蹴り飛ばし、黒の剣で雷の魔法を受け止める。


「これはいい……。クラウン様は使わないと仰っていたからオレが代わりに頂戴したが、この剣があればオレも魔軍将様と同格の地位に上れるかもしれねぇな!! 良い物を手に入れたぜ」

 悪魔は自分の野心を剥き出しにしながら、笑った。


「カレン様、無事ですか!?」

 レベッカはカレンさんに駆け寄って肩を支える。

「気を付けて、あの剣を持ってから更に強さが増してるわ」


 その言葉に、悪魔はニヤリと笑った。


「(強い……!)」

 さっきまでの強さであればまだ勝算はあった。

 だけど、今のこいつの強さはどこまで引き上がってるか分からない。


 こうなると、姉さん達が残りの悪魔達を倒して合流を待つしか手が見当たらない。ボクとカレンさんで隙を作ってレベッカに止めを刺してもらうと考えていたけど、それも難しいかもしれない。


「おっと、時間稼ぎを考えているようだが……無駄だぜ。

 さっき貴様らが逃げた時に通信魔法でクラウン様と連絡を取った。増援を送ってくれるそうだ。

 お仲間も手助けどころか自分達の命も危うい状況になると思うぜ」


「そんな……」

 最悪の事態だ。このままだと、ボク達は全滅してしまう。

 何とか、打開する手段は……!!


「どうやら諦めたみたいだな。じゃあ、死んでもらうぜ」

 そう言うと、悪魔は黒の剣を構えてこちらに向かってくる。


 しかし、目の前にカレンさんが立ち塞がる。


「……レイ君、レベッカちゃん、ここは私が引き受けるわ」


「カレンさん!?」


「何を言ってるんですか、カレン様!」

 ボク達が声をかける前に、カレンさんはこちらに振り向いた。


「大丈夫、別に死ぬつもりはないわ。勝算もあるのよ。あなた達は仲間と合流して、この山から下りて避難しなさい。すぐに私もこいつを倒して向かうから」


「!? で、でも……」

「信じられない? でも本当よ」


 カレンさんは不敵に笑い、悪魔を睨みつける。

 その表情からは恐怖など微塵も感じられない。むしろ余裕さえ感じる。


「ふん、くだらん。いいだろう、まずはお前から殺してやる」

 そう言うと、悪魔は再びカレンさんに向かって走り出した。


「さぁ、今のうちに逃げて!!」

 カレンさんはボク達にそう言い放つ。そして、


「な、何だ……貴様、そのオーラは……?」

 悪魔の男はカレンさんの放つ異様な雰囲気に気圧されていた。

 カレンさんの周囲は、まるで空間が歪んだかのように捻じれており、それが濃縮されたマナだとボク達は気付いた。


「………」

 カレンさんは何も答えずに剣を振るう。

 悪魔は咄嗟に回避行動をとるが、カレンさんの攻撃の方が早い。


「ぐっ……がああぁぁ!!」

 悪魔は左の羽を切り裂かれ大きく後方に飛ばされる。

 しかし、悪魔は果敢に攻撃し、攻撃を加えようとするが、カレンさんはさっきとは比較にならない速度で剣を振り抜き、更に悪魔にダメージを与えていく。


 悪魔は、先程までの余裕のある態度は既に消え失せていた。

「ば、馬鹿な……こんな人間がいるなんて聞いていないぞ……。貴様、一体何者だ……!!」


「何者……? さて、何者かしら。

 カレンって名乗ってるけど本当の名前は私も知らないのよね」

 淡々と答える。しかしその言葉には何処か重みを感じる。


「カレンさん……」

「逃げてって言ったでしょ。 早くしないと敵の増援が来てしまうわ。

 そうなるといくら私でも凌ぎきれない。今はあなた達が合流して先に避難してもらった方が私も助かるのよ」


「……」

 ボクは拳を強く握りしめ、歯を食い縛った後で口を開いた。


「――レベッカ、先に行って。ボクとカレンさんも後で向かうよ」

「――分かりました。それでは後ほど」


 レベッカはボクの考えを察したのか、こちらに背を向けて駆けていった。


「……レイ君、なんであなたは……」

 カレンさんは言葉にしなかったけど、「何故一緒に逃げなかった」と聞きたかったのだろう。

 だけど、ボクはカレンさんと一緒に戦うことを選んだ。

 理由は分からないけど、カレンさんと離れてはいけない気がする。


「……今のカレンさんを一人にしておけないから」


「……本気で言ってるの? 私はレイ君よりずっと強いのよ? 以前あなたも言ってたじゃない。『私を守る必要性を感じない』って」


「……」


 あの時はそう言った。だけど、今のカレンさんは無理をしている。

 万全なカレンさんなら言葉通り、単独でも勝てたかもしれないけど、今のカレンさんは満身創痍に近い状態だ。


 しかし、それを敵の目の前で言うわけにはいかない。

 カレンさんが限界だと知れば、また余裕を取り戻してしまいかねない。

 だから今はカレンさんの言葉に答えることが出来ない。


 代わりに、ボクは剣を抜く。

「……カレンさん、ボクが守ります。絶対に死なせたりしない」


「……ふぅん、じゃあやってみなさい」

 カレンさんも剣を構える。

 一見、冷たい言葉に聞こえるけど、カレンさんの表情が少し緩んだ気がする。


「カレン……だと? まさか<蒼の英雄>か!?」

 悪魔はカレンさんの正体に思い当たったようだ。


「その通りよ、今更気付いたの?」


「……くくく、好都合だ。魔王軍侵攻の為に邪魔な貴様をオレが打ち取れば、きっと俺は幹部入り出来る」


「……下らない理由ね」

 カレンさんは一言で切り捨てる。

「何とでも言うがいいさ、そして今のそっちのメスガキの言葉で理解したぜ。てめぇ、かなり消耗してやがるな」


「……」

 カレンさんは無言だが、表情は険しい。図星を突かれたからだろう。


「その状態でオレとやり合うつもりか? ハッ、笑わせてくれる。そんなに死に急ぎたいなら、望み通りにしてやるよ!」

 悪魔はカレンさんに向かって突撃する。

 それをカレンさんは冷静に対応し、一撃一撃を受け止めていく。そして隙が出来た瞬間、カレンさんの聖剣が煌めき、悪魔のもう片方の羽を光のレーザーが貫いた。


「ぐっ……!!」

 悪魔は、カレンさんから距離を取り、破れた翼を再生させる。

 どうやら思った以上に回復能力が高いらしい。


「再生……?」

「はっ、この程度のダメージでオレが怖気づくと思ったか。てめぇらの体力は随分減っている様だが、オレはこの<黒の剣>のおかげで余裕があるんだよ」


 そう言いながら、奴は両手に魔法陣を展開し、魔法を発動する。


 さっき使用していた爆発魔法だ。

 あれを正面から受ければ、僕もカレンさんも致命傷だ。


「カレンさん、ボクも戦います!」

 咄嗟に僕は前に出て、地獄の悪魔に斬りかかる。


「ちっ!」

 悪魔はボクの剣を軽く受け止めるが、そのおかげで魔法の詠唱が中断される。

 どうやら、接近されるとさっきのような大魔法は放てないらしい。


「レイ君……分かったわ、背中は任せる」

「はい!!」


 ボク達は同時に動き出す。奴の攻撃をボクが全力でガードし、カレンさんは聖剣を振るい、悪魔の手足を次々と切断していく。


「小賢しい真似を……!! 剣よ、オレ様を癒せ!!!」

 悪魔がそう言葉を紡ぐと、黒の剣から禍々しい波動が放出される。

 そして、奴の言葉通り、切断された手足が再び再生されていく。


「……っ!!」

「また……厄介過ぎるわね」

 ボク達は再び構え直す。


「へっ、いくら攻撃しようと無駄だ!! 何度でも回復して殺してやるぜ!!」


 あの剣をどうにか破壊しないと勝ち目が無い。

 カレンさんは表情を崩さないようにしてるけど、手足が微かに震えている。


 今のカレンさんは全力状態だけど、故に消耗が激しい。

 おそらく魔力の限界が近くなっている。


 僕の心配を察したのか、カレンさんは小さい声で言った。


「まだ、大丈夫……だけど、聖剣技はもう何度も使えないと思うわ」

「うん……」

 つまり、黒い剣を破壊しない限り、長期戦は不利ということだ。

 身体能力を向上させても、一撃で仕留めないとすぐに再生されてしまう。


「ボクが何とかあの剣を破壊する。その後の事を頼んでいい?」


「でも、今のあなたじゃあいつには……」


「分かってる。だけど、このまま何もしなければカレンさんの魔力が尽きてしまう。だから、ボクが囮になって少しでも時間を稼ぐよ」

「……了解、必ず成功させてね。私の事は気にしなくて良いから」

 ボクは小さく微笑み返し、悪魔に視線を向ける。


 そして、ボクだけが前に出て剣を構える。

 カレンさんはこいつを倒す瞬間まで力を温存してもらわないといけない。

 何としてでも、独力でこいつの攻撃を凌いで<黒の剣>を破壊する。


「てめぇ一人でオレの相手をしようってか? 舐められたもんだなぁおい」

 悪魔は再び魔法陣を展開する。今度は先程の倍の数だ。当然だが、こんな攻撃を受けるわけにはいかない。即座に飛びかかり、攻撃を中断させにいく。


「……なんてな、さっきみたいに飛びかかってくると思ってたぜ!」

「!?」

 ボクが飛び出してくると同時に、魔法陣から無数の光線が発射される。

 想像よりもずっと早い。

「くっ……」

 何とか空中で体を逸らし、回避するが、悪魔は更に追撃を加えていく。


「そらそらそらぁぁぁ!! オレ様の敵じゃねえんだよぉぉ!!」

 次々と襲い掛かる魔法を必死に避け続けるが、次第に追い詰められていく。

 そして遂に、ボクは足を取られ、地面に倒れこんでしまった。


「うっ!」

「はははは! やっと捕まえたぜぇ!! 死ねぇえ!!!!」

 倒れたボクに向かって、奴はこちらに近付き、黒の剣でボクに止めを刺すつもりで向かってくる。


「レイ君!!!」

 カレンさんが飛び出そうとするが、ボクは何とか動く腕で静止を掛ける。


「だ、大丈夫……まだ、なんとか……」

 そう言って立ち上がろうとするが、奴は既に目の前に迫っていた。

 

「あばよ、クソガキ」

 そして、悪魔の刃が振り下ろされる。

 だが、その瞬間だった。


「―――っ!?」

 突然、悪魔の動きが止まったのだ。


「――――レイくんを殺させない」

 ボク達の背後から、静かだけど強い意思を込めた綺麗な声が聞こえた。


「姉さん……」

「お待たせ、レイくん……本当はみんなと一緒に逃げるつもりだったんだけど、心配で来ちゃったよ」

 姉さんはお茶目な表情で笑い、左手を前に突き出し能力を使い続けていた。


 地獄の悪魔の動きが止まった理由は、

 姉さんの<植物操作>により体中が縛られて動きを止めたからだ。


「くそっ! そいつもテメェの仲間か!! 雑魚が群れやがって!! こんな攻撃が通じるとでも思ったか!!」


 そう言って奴は身体に力を込めるが―――


「ぐおおおおおおおっ!!!!!」

 更に、植物操作の上から姉さんの<束縛>バインドが掛かる。

 植物操作と束縛の二重束縛のお陰で、悪魔は簡単には身動きが取れない。


「レイくんを殺させないって言ったでしょ。

 お姉ちゃんの力だと、倒しきれないけど……レイくん達と一緒なら!!」


「ああ……そうだね、一緒に戦おう。カレンさん!」

 ボクは立ち上がり、剣を構え直す。

 これで……いけるはずだ。


「……ふぅ、ちょっときついわね」

 カレンさんも呼吸を整えて聖剣を握り締める。

 どうやら、少しはまだ戦えそうだ。


「そ、それで、この後お姉ちゃんはどうすればいいの……?」

「…………」

「ど、どうしよう、レイくん……」

 さっきの姉さん、凄く格好良かったのに……。


「あの、黒い剣をあいつから引き剥がしたいんだけど……」

 その黒い剣は一緒に悪魔と一緒に縛られた状態になっている。


 このまま放置していては復活してしまう。


「レイ君のあの技を使うってのはどう?」


「あの技? もしかして、<衝撃破壊>のこと?」


「そう、それ。あれって敵を完膚なきまでに粉砕する技でしょ。

 今動けないあいつにやれば黒の剣ごと粉微塵出来るんじゃないかしら」

 そんな風に言われると、とんでもない技だな……。


「使いたいところだけど、今はあの技は使えないよ」

「え、何で?」

「ほら、今ボクは女の子になってるから……」

 単純にあの技を扱えるだけの腕力と、それに耐えうる武器を装備することが出来ない状態にある。無理して発動しようものなら、両腕の骨が砕けて、あの魔物が倒せたとしても下手をすれば僕が死んでしまう。


「レイくん……カレンさん、そろそろお姉ちゃん限界かも……!」

 姉さんは何とか魔力を込めて、束縛を続けているが、敵の物凄い抵抗を受けて何とか抑え込んでいる状態だ。


「少し待ってて……!」

 ボクは魔法の剣に出来る限りの魔力を込める。

 <上級雷撃魔法>と<上級獄炎魔法>の二属性の魔法を付与させる。

 炎と雷の二属性の上級魔法を付与させた僕の剣は激しい炎とスパークを纏う。


「何よその魔法……? 初めて見るけど……」

「試しに二属性の魔法を掛けてみた。威力はあると思う」


 以前なら出来なかったけど、マナが増えたお陰だ。

 しかし流石に長くは保てない。

 剣を強固にするために、魔力を注いだけど一撃放つのが限界だろう。


「解除した瞬間に勝負を掛ける……カレンさん、お願い」

「――なるほど、任せて」

 ボクの意図を察したのか、カレンさんは頷いた。


「姉さん、解除して」

「わ、わかった……」


 姉さんが植物の拘束を解くと同時に、ボクは剣を構える。

 そして奴に向かって駆け出す。カレンさんは静止してその瞬間を待つ。


「死ねぇぇ!! クソガキがあああああ!!」

 悪魔の刃がボクの首を狙って迫ってくる。

 ボクは攻撃に全力を注ぐため、敵の攻撃には反応できていない。

 だけど、それはカレンさんに任せている。


「させないわ!!」「くっ!!」

 カレンさんがギリギリのところで聖剣でガードする。

 そして、その瞬間――


「聖剣発動!!!」

 カレンさんの聖剣が激しく煌めき、黒の剣はその攻撃をモロに受ける。

 聖剣技の煌めきをまともに受けた悪魔は目を伏せ、黒の剣に亀裂が入っていく。

 そして、ついにその黒い刃は砕け散る。


「な、なんだとぉぉぉ!」

「これで、終わりだ!!!」

 ボクは悪魔に向けて、魔法剣を放つ。

 その瞬間、激しい閃光と共に、轟音が鳴り響いた。


「ぐおおおっ!!??」

 その一撃を受けた悪魔は、衝撃と共にそのまま後方へと吹き飛んでいく。

 地面を転がり、瓦礫にぶつかってそいつは動きを止めた。


「……やっ、たのか?」

 ボク達は警戒しながら、奴の方に近づいて行く。だが――


「ぐ、ぐ、ぐおおおおおお………!!」

 悪魔は半身を失いながらも、まだ生きていた。

 残った右半身をおびただしい血を流しながら地面を這いずっていた。しかし、黒の剣が砕け散った影響か、さっきのような再生能力が失われたようで傷が回復する様子も無かった。


「く、くそ……こんな何処とも知らぬメスガキにやられるとは………!!」

 メスガキって……。確かに、今のボクは女の子だけどさ。


「メスガキってねぇ……レイくんはこれでも男の子だよ」

「姉さん、言っても意味ないよ。……もう、こいつ長くないだろうし」


「ぐっ……」

 ボクの言葉を聞いて、悔しそうに顔を歪める。


「お、オレを倒したところで、貴様らは死ぬ!! ハハハハ………」

 そう言い残して、悪魔は力尽きて息を引き取った。

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