第242話 大苦戦
ボクがダメージを負ったことで、今度はカレンさんとレベッカが戦う。
敵は
「ちっ……今度は貴様か!」
「よくも仲間をやってくれたわね!!」
地獄の悪魔は後ろに下がりながらカレンさんの剣を躱していく。
カレンさんは消耗もあって聖剣技を即座に放とうとせず、拮抗状態となる。
そこに、レベッカが弓を取り出してカレンさんを援護していく。
悪魔はたまらず、空中に逃げて魔法で応戦する。
「
「そんな魔法効かないわよ!!
カレンさんは自身の周囲に光の壁を展開して、敵の攻撃魔法を防ぎきる。
そして、魔法を防ぎながら悪魔に近付いていく。
そこにレベッカの支援が入ることで、状況は膠着していた。
「今の間に……」
二人が攻撃を引き付けてくれている間に、ボクは自身の傷の状態を確認する。
不意打ちの攻撃も、間一髪回避するつもりだったけど、間に合わず装甲が脆いせいで普段よりもダメージが大きい。それでも強化魔法のお陰で直撃とまではいかなかった。
とはいえ、今の衝撃でかなりダメージを受けたみたいだ。横腹と岩盤に叩きつけられた左半身が酷く痛む。もしかしたら軽く骨折しているかもしれない。
「癒しの風よ……傷を癒したまえ……
無事な方の右手を左の横腹に当てて自身で回復魔法を使用する。
効果があるかどうか半々だったが上手く成功した。骨折したと思われる場所にも効果があったようで、なんとか体は動けそうだ。
「大丈夫ですか!? レイ様!」
レベッカは下がりながらボクに駆け寄り、怪我の状態を確認する。
「うん、もう問題ないよ」
上級回復は知識として学んでいたけど、成功したのは初めてだ。
男の時は使えなかったけど、マナの量が増えたことが理由かもしれない。
「レベッカ、戦況は?」
「今はカレン様が抑えてくださっています……」
レベッカの言う通り、カレンさんと悪魔の攻防は続いていた。
カレンさんは悪魔の魔法を全て防ぎつつ、徐々に距離を詰めていっている。
しかし、普段のカレンさんなら魔法攻撃を回避しつつ反撃に転じていけるはず。それが出来ないという事は相手が相当な強敵か、カレンさん自身が消耗してて上手く力を出し切れないのだろう。
カレンさんは魔力の操作が下手で力加減を操作するのが苦手と言っていた。
それが理由で燃費が悪く、実はあまり長期戦が得意ではない。
対する地獄の悪魔は、以前に戦った地獄の悪魔よりも強い。
前回戦った同種はアイテムの力で強引にレッサーデーモンが変化した姿だったけど、今回は純粋に強化された個体なのだと思う。以前のように苦しみながら戦う様子もない。
その証拠に、ボクが倒したあの悪魔とは比較にならない強さを感じる。いくら消耗しているとはいえ、カレンさんですら苦戦する相手という時点でかなりの強敵だ。
ボクはすぐに立ち上がり体が動くことを確認する。
エミリア、ウィンドさん、姉さんは他の魔物と戦闘を繰り広げている。
あちらも余裕が無さそうで支援は期待できそうにない。
そうなると、ボク達三人で倒すしか無さそうだ。
「……どうしようか」
ボクは力が弱まっていて決め手にならない。
カレンさんは消耗で弱体化している。最も安定して強いのはレベッカ。
だけど、奴は魔法障壁でこちらの物理攻撃を防いでくる。以前にも似たような戦い方をした魔物と戦ったことはあるが、そいつと違ってこの魔物は接近戦も強い。
ボクとカレンさんで抑え込んで、レベッカの射撃で止めを刺す。
おそらくそれが理想だろう。しかし、その状況に持ち込めるかどうかと言うと怪しい。魔物の攻撃速度や詠唱速度は非常に早く、レベッカが厄介と思われたら集中して狙ってくる可能性も十分にある。
となると、三人で連携を取りながらの接近戦だ。
これならば確保撃破される心配もなく、魔法攻撃はボクやカレンさんで凌げる。
あちらが防御で手一杯になれば、死角からレベッカが弓で攻撃すればいい。
作戦が決まったら早速行動だ。
レベッカに作戦を伝えてから、ボク達は戦線に戻っていく。
「カレンさん、一旦こっちに戻って!!」
「!?」
ボクの声に反応してカレンさんが動きを止める。
その隙にレベッカが悪魔に接近していく。レベッカが悪魔に槍で斬りかかると同時に、カレンさんが一歩下がりボクも悪魔に向かって走り出す。
「ちっ、小癪な」
悪魔はレベッカに向けて尻尾を振り上げる。
それにボクが割り込み、剣で弾き返し、一旦敵は距離を取る。
そのまま
「もらったわ!」
「なにっ!?」
聖剣を悪魔に向けて一閃しながら、キーワードを言葉にする。
「聖剣解放!!」
同時に、聖剣から光が溢れる。
至近距離から聖剣技を解き放ち、悪魔を巻き込もうとしたのだが――。
「うおっ!?」
悪魔は間一髪、羽を広げて空中に逃げ延びる。
一瞬遅れて放たれた聖剣技は虚しく空を切り、不発に終わってしまった。
「仕留めそこなったか……!」
カレンさんは、少し悔しそうに言った。
全力解放ではないものの、聖剣を使うたびに消耗していってるはずだ。
今の一撃で倒せなかったのはカレンさんにとって痛かったのだろう。
「面倒だ! 一気に勝負を付けてくれる!!」
悪魔はそう言いながら更に空に浮上していく。
「何をする気?」
「あれは……」
両手に魔方陣を展開し、そこから魔力弾を連射してくる。
ボク達は何とか回避するが、魔力弾が当たった地面は爆発し、煙を上げて陥没していく。
「な、なに、今の攻撃!?」
「爆発魔法ね!! 威力の高い攻撃だからまともに食らっちゃダメよ!!」
あれが、爆発魔法か!!
ボク達が回避している間に、悪魔は上空へと退避し魔法を詠唱していた。
「食らうがいい!!
次の瞬間、悪魔を中心に巨大な魔法陣が展開され、そこから大量の魔力弾が撃ち出された。その魔法は、まるで弾丸の雨のように降り注ぐ。着弾すると爆発し、連続して直撃したらただでは済まない。
ボクとレベッカは必死になって避け続ける。カレンさんも地上を走り回り回避するが、爆発魔法で周辺がクレーターだらけになり、徐々に足場が悪くなっていく。
「レイ君! レベッカちゃん! 場所を変えるわよ!!」
カレンさんは今の場所で戦うと不利と感じ、そのまま山を駆け上っていく。
ボク達も、姉さん達に声を掛けてからカレンさんの後を追っていく。
「レイくん! 気を付けてね!」
「うん!」
背後から姉さんに声を掛けられて、それ応えて僕達は山を登っていく。
「逃がすか!!」
地獄の悪魔は、逃げるボク達を追撃するべく追いかけてくる。
ボクは振り返り、剣に魔法を込めて解き放つ。
「
剣から解き放たれた風が、竜巻となって悪魔を飲み込む。
即発動で威力は低いはずだが、男の姿の時よりも威力が上がっていた。
しかし、悪魔は自身の障壁でガードに専念している。
「くっ……単発じゃダメか……」
「レイ様、今は有利な場所に向かうのが先です!」
焦ってもう一度魔法を唱えようとすると、レベッカが制止した。
レベッカの言う通りだ。今ここでボクがやられたら、後が無い。
ここは冷静にならなくては……。
そう思い、ボクは深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「よし、行こう!」
ボクたちは再度走り出し、平地で広い場所を探す。
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