第212話 意識しなくなった結果

 街に戻ると、入り口の方でカレンさんとレベッカが待っていた。


「レイ様、お疲れ様でございます」


「お疲れ様、レベッカ。そっちは終わった?」


「はい、問題なく完了いたしました。そちらはいかがでしたか?」


「僕達も大丈夫だよ。討伐依頼が10件終わらせた」


「そうですか、それは何よりです。こちらの依頼も十二ほど終えたところでございます。残りはレイ様達が攻略した依頼を除けば、あと十二となります。このまま他の依頼も受けに行きますか?」


 ……さて、どうしようかな。


 かなり戦闘で疲弊はしているけど、余力はまだある。

 エミリアも、途中で多少回復したらしくまだ戦うことは可能だ。


 とはいえ……。

 視線を逸らして、カレンさんの方を見ると……。


「レイ君、疲れた? 少し休む?」

 僕の表情を見て察してくれたのか、気遣ってくれた。

 気丈に振る舞っていたつもりだけど、一瞬で看破されたようだ。


「いえ、まだいけます」


「無理しないでいいのよ。

 別に今日一日で全部終わらせる必要はないんだから。

 まぁ、ベルフラウさんの事が気になるのは分かるけどね……」


「……すいません」

 そうだよね、ここで焦って失敗でもしたら元も子もない。

 今日は日も傾いている。残りの依頼は全て街から離れた場所にあるはずだ。

 数件受けたらもう夜になってしまうだろう。


 そうなると明日に持ち越しとなる。明日まで待つのも勿体ない気がするし、ここは素直に今すぐ休んでおくのが正解かもしれない。


「それじゃあ、今日はこの辺にしておこう。

 明日の深夜頃、日が差す直前くらいにここに集合して出発だね。

 出来れば全部の依頼を明日までに終わらせよう」


「はい、分かりました」

「了解、ちゃんと休まないとダメよ」

「レイ様、それでは明日の早朝に」

 エミリアとカレンさんとレベッカがそれぞれ返事をして休息が決まる。

 よし、そうと決まれば一旦帰ってゆっくり休まないと!


 ◆


 僕達は宿に戻り、その日は休むことにした。

 そして、僕は自分の割り当てられた部屋のベッドで横になる。

 そして、うとうとし始めた頃に……。


 ―――コンコンコン。


 僕の部屋のドアを叩く音が聞こえる。

 ベッドから起き上がり、ドアの向こう側に居る人に声を掛けた。


「はい、今開けます」

 僕は部屋のカギを開けて、ドアを開く。すると、そこには、


「あー、レイくん、ただいまー……えへへ」

 そこには、魔力を使い果たして、眠そうな姉さんがぼんやりした顔で立っていた。


「おかえりなさい、姉さん。無事で良かった」

「うん、なんとか大丈夫だったよ。心配かけてごめんね……」


 病気が移って体調が悪そうという感じでは無い。

 おそらく単純な魔力切れだ。元々姉さんは魔力が切れかかると眠くなる。


「そんなことないよ」

「うん、ありがとぉ……ふわああぁぁ」


 大きな欠伸をしながら、部屋にふらふらと入っていく。

 一応、姉さんの部屋は別に取ってあるんだけど、まぁ良いか……。

 僕も、今は姉さんと一緒に居たかったから――。


「姉さん、ここで寝る?」

「うんー、レイくんも一緒に休む?」

 姉さんはベッドに腰を下ろして、眠そうな声で言った。


「そうする。僕達は明日の早朝には出てるけど、姉さんはどうする?」

「お姉ちゃんも、まだ病院の人の治療が全部終わってないから、明日も忙しいかな……」


 病院がどれくらい人が入ってるか分からないけど、

 まだまだ終わりそうにないな。


「そっか……」

「レイくん達の調子はどう? ふわふわで気持ちいい……」

 姉さんは、眠さが臨界点にきたのか、

 ベッドの中に潜り込み完全に横になって寝言のように言った。


「あと半分ってところかな。

 今日は比較的簡単な依頼だったけど、明日はもっと時間がかかると思う」


「そっかー………大変………だね………」

 もう姉さんは完全に目を瞑っている。

 これ以上の話は無理だ。


「うん、だから、もう少しだけ待ってて。必ず終わらせてくるから」

「ん、分かった……レイく……ん……頑張って……ね……」


 そのまま、スーっと眠りについてしまった。

 僕は、そんな姉さんの頭を撫でながら、


「ありがとう、姉さん……」

 それだけ言って、僕は姉さんの隣に腰を下ろし、そのまま横になった。

 そして、そのまま姉さんを後ろから抱きしめて、僕も目を瞑る。


 ◆


 ―――次の日の早朝、まだ日が差す直前。


「―――それじゃあ、みんな準備はいい?」

 僕は、他の3人に向かって声をかける。


「私はいつでもいけます」

「大丈夫よ、今日中に全部終わらせましょう」


 エミリアとカレンさんがそれぞれ答える。

 レベッカは静かに首を縦に振っただけだったが、問題なさそうだ。


「よし、それなら行こう」

 僕たちはリーサさんの待つ馬車に向かい、まだ暗いうちに街を出た。

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