第196話 ちょっと寂しそう
「ただいま戻りました」
時間を掛けて元の場所に戻ってくると、
リカルドさんとエミリア、レベッカが待機していた。
「御苦労だった。して、収穫は?」
「魔物を製造する大きな魔道具の装置を発見しました。
完全に破壊したのでもう使用不可能だと思いますが、悪魔系の魔物が見張りに付いていたようです」
続けてカレンさんが言った。
「あと……もう一つ出口があったわ。
進んでいくと海辺の傍に出たけど、周囲は断崖絶壁になってて人間が這い上がるのは難しそうね」
カレンさんに続いて、今度は姉さんが付け加える。
「<浄化>も複数回行いながら進んだから魔物もしばらくは沸かないはずですよ。細かい部分の報告はまだあるかもしれないけど、こんな所ね」
「ふむ……やはり、あの施設は重要なものだったのだな」
「はい、ですがこれ以上の魔物の製造はされないと思います」
「それは良かった……。
結界の方だが、それは後々で問題ないだろう。こちらも廃坑に残っていた魔物の討伐が完了している。ここの任務は終わったと考えても良いだろう」
「分かりました。エミリアとレベッカもお疲れ様」
「レイ達こそ」
「お疲れ様です。レイ様、ベルフラウ様、それにカレン様も」
互いに労い合って、
僕達は今回の再調査を終了することが出来た。
◆
その後、街に戻ってから―――
「―――報告は以上です。
エドワード殿の推察通り、あの廃坑には秘密が隠されていたようです」
今回の調査の結果を纏めて、
リカルドさんは最後にそう言葉を締めて報告を終わらせた。
「御苦労。……しかし、魔物が作られていたとは……」
エドワードさんはため息を葉巻を加えながらため息を吐く。
「えぇ、施設の規模を考えると相当な数が製造されてそうでした」
「製造されてた魔物は、おそらくあの<黒の剣>の元となったものだと思います。以前僕が見た魔物と姿が非常に似通っていました」
「という事は、あの剣の製造された場所と見て間違いないな。以前にも話したが、あの場所のように<黒の剣>が保管されていた場所が他にもある。これは、更なる調査が必要になるな……全く、頭が痛いよ……」
エドワードさんは額を押さえて嘆いている。
「まぁ、とりあえずは一旦これで終わりだ。
残りの未調査の場所は時間をかけて調査を続ける。今日のところは解散としよう」
こうして、僕達はカレンさんの屋敷に戻る事になった。
◆
仕事が一旦終わり、
僕達はカレンさんの屋敷に戻ることになったのだが……。
「エドワードさんも言ってたけど、
宿代を払ってくれるみたいだし、場所を移した方が良いかな。
サレンさんの屋敷にずっとお世話になるのも迷惑だろうし」
帰り際ポツリと僕は言った。
すると、そのカレンさんから凄い驚かれた。
「え、えっ? 何か不満とか!?」
「あ、そういうわけでは無いんですけど……」
単に、いつまでに居座るのはどうかと思っただけで……。しかし、そう思ってたのはレベッカもだったようで、僕の言葉に頷いてくれた。
「そうでございますね……。
あまりにも居心地が良かったもので離れ辛かったのですが、レイ様の仰る通り、いつまでもご迷惑を掛けるわけにはいきません」
「そっかー……」
カレンさんは少し寂しそうにしている。
……ちょっと唐突だったかもしれない。
僕達は少しの間だけど、本当に良くして貰った。
ちなみに姉さんとエミリアの反応はというと……。
「うぅ……もうすぐでこの屋敷ともお別れか~」
「部屋も綺麗だし、食事も豪華だし、住み心地良かったんですけどねー。ただ、あんまり綺麗なものだから薬品調合とかやりづらかったし丁度いいかもしれませんね」
姉さんは残念そう。
エミリアも同じだけど、どうも気を遣ってたみたいだ。
「私としては、滅多にないお客さんだから居てくれても構わなかったんだけど……。四人がそう言うのであれば、仕方ないわね……」
カレンさんも、渋々了承してくれた。
「すみません、折角色々と教えて頂いたのに」
「ううん、気にしないで。
それに私の方も近々街を離れるつもりだったから……」
カレンさんがそう呟くと、姉さんが反応する。
「あれ、そうなの?」
「えぇ、今回の件が一区切りからの離れるつもりだったんだけど……。
魔王の誕生が近いせいか、魔物との戦いも苛烈になってきてて、王宮から依頼が入りそうなのよ。一応、私は有名人扱いだから断れないのよね……あの子の事も気になるし」
あの子ってのも気になるけど、魔物との戦いか……。
「もしかして、戦争が起こるんですか?」
「戦争って程でもないと思うわ、いざ魔王が復活したらあり得る話だけど……。
少し前に魔物が海の方から大量に現れたことがあってね。膨大な魔力を感知出来たから被害を最小に留められたけど、今回も似たような事が起こりそうなのよ。で、今度は感知する前にこっちから乗り込もうってだけ」
「なるほど、それで……」
「うん、でも大丈夫よ。
そんな心配そうな顔しないで」
……。
笑っているけど、カレンさんは何だか寂しそうだった。
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