第182話 仲間たちの奮戦
「くっ……!!」
リカルドとウオッカが戦っているのは、もう一体のアークデーモン。
ウオッカは先ほど、力を使いすぎたせいで明らかに消耗しきっている。そのため、隙を見て斬りかかることに専念しており、前衛はリカルドに任せている。
だが、状況は明らかに不利。
リカルドはゴブリン上位種の<ゴブリンウォリアー>相手なら互角以上に戦える能力はある。しかし、アークデーモンと対峙するには力不足だ。そのため決定打を握っているのはウオッカの方。しかし消耗が激しすぎて技が使えるのはあと一度しか出来ない。
狙うは<衝撃破壊>の技だ。
アークデーモンが僅かに隙を晒した瞬間に、
この技を放ち一気に消滅させるつもりだ。
「おらおら!どうしたぁ!!!」
しかし、アークデーモンは素早く機敏な動きでリカルドを攻め立てる。
両手の鋭い爪と、尻尾でリカルドさんを圧倒している。
「くそっ!食らえ!!」
リカルドは懐に入り込ませないように剣でけん制しながら距離を取ろうとするのだが、アークデーモンは羽を使って縦横無尽に滑空し、その攻撃をすり抜けてくる。
「ち、舐めやがって……!!」
ウオッカは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
明らかに遊んでいる。きっと、奴からすれば俺は震えて手が出せないように思っているんだろう。まぁ、大きな違いはないけどな……。
自分の腕を見る。
その腕はガタガタ震えてうっ血している。
さっき、ちいっとばかし無茶し過ぎたか……。
<衝撃破壊>は少しリスクの大きい技で、体力を大きく消耗する。
当然、腕に来る負担も大きいから本来は何度も使えない。
リカルドは十分に善戦している。
本来であれば下位種のレッサーデーモンですら今のリカルドの力量では敵わないはず。それでも、何とか防戦に回ることでウオッカに手を出させないよう攻撃を凌いでいる。しかし、アークデーモンのフェイントを交えた攻撃と、時々放つ攻撃魔法に対応しきれていない。
◆
「くそ……このままでは……」
直撃こそ避けているが、ウオッカを庇ってることもあり、リカルドは多数の傷を負っている。足取りも重く、もはや気合と根性で何とか戦っているような状況だ。
後ろでは、ウオッカが隙を見て技を放つつもりでこちらを見守っているが、このままではそれも叶わない。
と、そこに不意打ち気味に、リカルドの方に飛んでくる魔物が居た。
<ウィークデーモン>悪魔系モンスターの下位種の魔物だ。強さとしてはレッサーデーモンに数段劣る。
それでも並の魔物よりも強く中級魔法まで放つことが出来る強敵だ。
しかし、リカルドは咄嗟に攻撃を躱し、反撃を試みた。
「舐めるな!!」
ウィークデーモンの放った攻撃魔法を回避し、標的をウィークデーモンに切り替える。
そして……
「<疾風斬>!!」
一撃で素早く二度斬りかかる剣技だ。
咄嗟に放ったため、命中精度は低くなったが一撃は浴びせることが出来た。
「ギャアアッ!?」
ウィークデーモンはこちらの斬撃を浴びて怯んだ。
そして、そのまま追撃を加えようとした時だった。
「ガァッ!!」
アークデーモンがリカルドに襲い掛かる。
「ぐあっ!」
アークデーモンの強烈な蹴りをまともに受けてしまった。今の一撃で、リカルドの意識は一瞬吹き飛んでしまい、次の瞬間には壁に叩きつけられていた。
「り、リカルドっ!?」
遠くから、リカルドを呼ぶウオッカの声が聞こえる。
……すまん、ウオッカ。私は、ここまでが限界のようだ。
……だがな、それでも私にも意地がある!!!
どちらの魔物もこちらを見てニタニタ笑っている。
そして、ウオッカに対して背を向けているようだ。
――つまり、今が最大のチャンスだ。
「――ウオッカ!!今だ!!」
ウオッカに、最後の技の発動を促す。
「ああ!!<衝撃破壊>!!」
ウオッカは渾身の力を込め、地面を砕くように斧を叩きつける。
「グルォオオッ!?」
「ガァァァ!!」
リカルドに不意打ちをしてきたウィークデーモンを巻き込み、今まで、余裕をもって戦っていたアークデーモンだったが、この技だけは回避できずに喰らう。流石に、威力が落ちていたのか粉砕とまではいかなかったが直撃し、アークデーモンは体を半壊させて倒れた。
「……ウオッカ、よくやった」
リカルドはそう言い残すと、そのまま地面に崩れ落ちた。
◆
エミリアちゃんもレベッカちゃんも、
かなり消耗しているけど二人ともなんとか戦える状態を保っている。
途中でレイくんが敵をおびき寄せてくれたおかげかな。
数が減ったおかげで、少なくとも劣勢ではなくなった。
いえ、もしかしたら全然優勢になってるかもしれない……。
「あー、もううっとうしいですね!!!
ちょこまかちょこまかと!!私の魔法を棒立ちして食らいなさい!!
エミリアちゃんの魔法は、的確に相手を捉えて凍らせていく。
余裕が無い状況なせいか、言葉が少し荒くなってるけど、これがエミリアちゃんの素なんだろうか……。
「エミリアちゃん、凄いわね……」
ピンチほど燃えるのか、普段より魔法が冴えわたっている。レベッカちゃんが守っているとはいえ、エミリアちゃんの一撃は確実に相手の数を減らしていく。
「エミリア様、如何に敵とはいえ棒立ちで食らえと言うのは酷ではないでしょうか!!!」
レベッカちゃんも正面のレッサーデーモンの爪攻撃を槍で受け流し、棒の先端で敵の腹部を突いてけん制し、相手の侵攻を防いでいく。
……何か、二人とも結構余裕そうに見えるんだけど、気のせい?
でも、流石に魔物の数が多い。
二人の隙を伺いながらレッサーデーモンが背後に回り攻撃を仕掛けようとする。
流石に、これくらいは仕事しないと。
「そこは私が防がせてもらうわ!
私の束縛の魔法がヒットし、敵を縛り上げる。
「ベルフラウ、ナイスですよ!!
死ねええええええ!!!
エミリアちゃんの放った雷魔法の衝撃がレッサーデーモンを貫く。
「ギィイイッ!!」
魔法によって一体の魔物が肉片を吹き飛ばされ消滅していく。
凄いけど、『死ねええ!』って……。
「お、おい!こいつら、強すぎないか……!!」
「くっ……不味いぞ、このままでは……」
逆に、二人の猛攻でレッサーデーモン達が徐々に不利になっていく。
残ったレッサーデーモンはあと二体だ。
「戦闘の真ん中でお喋りとは、余裕ですね!」
さっき二人もすっごくお喋りしてたよ?
「
そこに、レベッカちゃんの重力魔法が掛かりレッサーデーモン二体は地面にめり込んでいく。
「ぐあああああああああ」
「ぎゃあああああああ」
エミリアちゃんとレベッカちゃんは、更に畳みかける。
「
「
石つぶての雨と地獄の炎が敵に襲い掛かり、
レッサーデーモン達はそのまま雑に倒されて全滅した。
……私だけあんまり活躍してないわ。
少し前に買った杖もあるんだけど、やっぱり私に合ってないような……。
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