第159話 誰が何と言おうが美少女です

 ――一方、その頃


「おかしいわね、あの子どこ行ったのかしら?」

 レイとリゼットが洞窟に入っていった頃、村でリゼットを探す人の姿があった。

 その白い鞘に収まった長剣を携え、

 美しい青髪を風に靡かせるこの女性こそがルミナリアだった。


 そこに、通りかかったのは、とんがり帽子を被った黒髪、黒目の美少女。

 そう、私こそ天才魔法使いのエミリアです!!


 ……すいません、盛りました。普通の冒険者で、ちょっと今は仲間を探し回ってるだけのエミリアです。そもそも私よりずっと優れた魔法使いの姉がいるんですから天才なんて言えませんって。


 ……ところで、その途中で妙に目立つ女性を見掛けました。

 珍しい長い青髪の年上の女性、大体二十いかないくらいの人です。

 見た目もそうですが、妙に焦って何かを探し回ってるので気になりますね。

 私もレイを探してるわけですし、ついでに尋ねるのも悪くありません。


「もし、そこの人」

「あら、貴女は……」

 私が声をかけると、青髪の女性は驚いたように目を開きました。


「私はエミリアと言います。

 先程から誰かをお探しのようなので、ご一緒しますよ?」


「……いいの?悪いわね」


「いえいえ、私もレイっていう男の子を探してるので」


「そうなの?私は女の子を探してるのよ。

 セミロングで赤髪の活発そうな可愛い子よ、大体貴女と同じくらいの歳ね。

 見掛けなかったかしら?」


「赤髪のセミロングですか、うーん、見てないですね。逆に尋ねたいのですが、銀髪の身長160あるか無いかくらいの男の子見ませんでしたか?温泉から出て呼びに行ったのに、書置きだけ残してどっかいっちゃったんですよ」


「銀髪の子?ううん、知らないわね」


 ふむ、やっぱりそうそう情報が得られるわけないですよねぇ。

 となると、彼は本当にどこに行ったのか……。


「その、書置きには何って書かれてたのかしら?

 あ、プライベートな内容なら答えなくてもいいわよ」


「えっと、要約しますと……

『人探し頼まれたから居なくなるけど、すぐ帰るから心配しないで』

 と、書置きには書かれていましたね」


 レイが居なくなってから既に1時間半が立とうとしている。

 他の二人は心配して無さそうだったが、私としてはちょっと気になる。


 彼はお人よしだ。また変なことに巻き込まれてるのでは?

 そう考えて、こうして彼を捜しているんですけどね。


「その書置き、見せてもらってもいい?」

「構いませんけど……」


 私は彼女に手紙を手渡す。

 彼女はそれをじっくり眺めた後、ぽつりと言った。


「『女の子が人探ししてるから手伝う』って書いてあるわ」

 ああ、確かそんな感じの内容だったですね。


「女の子、女の子ね……」

 青髪の女性は少し考え込むような仕草を見せる。

 それからすぐに顔を上げて言った。


「ちょっと確認するけど、

 このレイって子は女の子を見掛けたらすぐナンパするような男なのかしら?」


「いえ、どっちかというと大人しいですよ?」


 草食系男子系らしい。

 意味はよく分からないです。

 ベルフラウが言ってたので多分異世界の言葉だと思う。


「……そう、ありがとう。

 私もその子捜しを手伝わせてくれないかしら?」


「本当ですか!?助かります!

 ですが、何故手伝ってくれるのですか?」


「ここに書かれてる女の子ってのが私の知り合いだと思うのよね。

 勘だから理由を訊かれるとちょっと困るんだけど」


「ふむ、なるほど……

 ちなみに赤髪の女の子は私に似てて可愛いですか?」


「え、何よ、その質問?

 貴女に似てるかは何とも言えないけど、とても可愛いわよ」


 ほうほう、可愛いのですか。

 まぁ女の子って聞いたから多分可愛いんだろうとは思ってました。


「貴女のいう通り、一緒に行動してる気がしてきました……」

「え、どういう事?」


 不思議そうにする女性に私は言う。


「レイは可愛い女の子には優しくしてそうなので……」

「……やっぱり、心配になってきたわ」

 お互い、不安な気持ちを抱えながら一緒に探すことになりました。


「ところでお名前は?私はエミリアです」


「私は、……ルミナリアよ」


「ルミナリア?ファミリーネームですか?」


「えぇ、今は私達ちょっとした有名人になってしまっていて……

 安易に本名は名乗れないのよ、ごめんなさいね」


 有名人?

 ふむ、ドラゴンスレイヤーとかでしょうか?

 名のある冒険者だと色々と面倒ごとに巻き込まれますからね。


「なるほど、そういう事情があるのなら、

 ちなみにお探しの赤髪の女の子もそうなのですか?」


「そうね、むしろ今はあの子の方が有名人かも……

 本名な名乗らないようにしなさいと言ってるんだけど」


 ……色々訳アリなのでしょうか。

 まぁ、ウチも特異な人物が集まってるから他人ごとじゃありませんけどね。


「それじゃあよろしくね、エミリアさん」

「はい、ルミナリアさん」


 ◆


 ――一方、レイ達は

 

 既にダンジョンに潜って数十分が経過してる。

 それでも、今のところ目的の『ルミナリア』という人は見つからない。

 魔物の数はそこそこと言ったところ。

 ゴブリン系を中心として、時々魔獣の類が出現する感じだ。


「それにしても……」

 僕は一緒に同行しているさっき知り合った女の子、リゼットを見る。


「??どうしたんです?」

「いや……」


 数度戦闘を挟んで分かったけど、この子かなり強い。

 戦闘力で言えばエミリアやレベッカと遜色ないレベルだ。

 それに連戦をして動き回ってるのに息切れもしていない。

 見た目は人懐っこい感じで可愛らしいけど、中々どうして侮れ無い。


「レイさん!宝箱ありますよー!!」

「え、本当!?」


 さすがはダンジョン、こんなところにもお宝が……。

 そんなこんなで、僕たちは目的を忘れてダンジョンの中を冒険していた。


 ◆


「おう、見たぜ。

 赤毛の女の子と銀髪の少年の二人組な」


「やっぱり!その二人は何処に行ったのかしら」


 私達は、村の人たちに聞き込みしながら、

 ようやく彼らの足取りを掴むことが出来ました。


 ・・・・・


「村の外れの洞窟ですか」

 どうやら、彼女の知り合いとレイは、

 ルミナリアさんを探してそこに向かったようでした。


「ルミナリアさんも一度行ったみたいですが、何の用があったんですか?」


「村の人が被害に遭ってるって訊いて、一度案内してもらったのよ。後からあの子と相談して一緒に行こうと思ってたのに、まさか先に行っちゃうとは」


「追いますか?」


「そのつもりよ、私を追いかけてるのならこのまま最奥まで行っちゃいそうだし」

 そう言って彼女は躊躇なく洞窟の中に入っていく。


「……仕方ないですね」

 ルミナリアさんの知り合いの方は分かりませんが、

 レイが居れば無事帰ってこれるとは思うんですけどね……。

 とはいえ、ここまで来て私一人後戻りする気もありません。


 ◆


 その後、ルミナリアさんと私でダンジョンを進んでいくのですが―――


「よし、先に進みましょう」

「え、えぇ……」


 私の前を進んでいくルミナリアさんはドン引きするくらい強かったです。

 目の前に現れた多数のホブゴブリンを秒殺して何事もなくズンズンと進んでいきます。


 これならすぐに追いつけそうです。

 ただ、彼女が強すぎて私のやることがありませんね。

 まぁ楽が出来るのは良いことですけど。

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