第140話 のどかな村?

「それじゃ出発しようか」

 その後街道を進んでいくと、夕方頃に次の村に着くことが出来た。

 村は木造の建物が立ち並び、畑では作物を育てている。


「随分小さい所だけど、宿はあるかな?」

「多分あると思うけど、聞いてみようか」

 僕達が村の入口に向かうと、一人の老人が声をかけてきた。


「旅のお方ですかな?……おお、美しい方がいらっしゃいますね」

 その老人は姉さんに目を向けながら言った。

「あら、ありがとうございます」

「この村は若い者は殆どおりませんでな。

 少々寂れていますが宜しければゆっくりしていってくだされ」

「ありがとうございます。ところでこの村の宿ってどこにありますか?」

「おお、それならあちらですな」


 ご老人は一軒の建物を杖で指した。

 それでは、と老人は杖を付きながら歩いて行った。


「あのおじいさん、足が悪いみたいだね」

「かなりお年寄りみたいだし、歩くのも大変そうだ」

「若い者が殆ど居ないということは、

 ここに住んでいる人はみんな高齢の方ばかりなんでしょうか?」

「そうかもしれないね……」


 しかし、村を散策すると若そうな人を見かけた。


「あの人たちは村の人じゃないのかな?」

「私達と同じ冒険者では?ほら、剣とか武器を持っているようですし」

 確かに、中には女性も居たが全員が武装していた。


「この村に滞在するなら挨拶しておいた方がいいかもしれませんね」

「そうだね、それに明日以降のことも相談したいし」


 僕達は村の奥にある宿屋に向かった。

 中に入ると、カウンターには老婆が座っていた。


「すみません、部屋は空いてますかね?」

「おや、珍しいね。あんたみたいな若者がこんな田舎に来るなんて」

「ええ、ちょっと事情がありまして……」

「ふぅん、まぁいいよ。一泊大銀貨1枚、食事は別料金だよ。

 部屋数が無いから一部屋四人だけどそれでいいかい?」

「はい、お願いします」


 本当は男女で分けたかったけど仕方ない。

 僕達は代金を支払い、鍵を受け取る。


「はいよ、これが部屋のカギだ。二階の部屋を使っておくれ」


「分かりました。……それと一つ聞きたいんですが、

 この村に冒険者の方はどれくらいいるのでしょう?」


「冒険者?この村に滞在してる冒険者なんて……

 ああ、もしかしてあの若い奴らのことかい?

 あいつらはこの村で雇ってるガードだよ。

 なんせジジイとババアばかりの村だからね、畑仕事すら一苦労さ」


「そうですか、どうもありがとうございます」

 僕達は教えてもらった部屋に荷物を置き、夕食を摂ることにした。


「ところでガードって何?さっきお婆さんが言ってたけど」


「村や街で警護の仕事に付いてる人達の事です。

 この村は滞在する冒険者も居なさそうなので雇っているのでしょう」


「へぇー、そんな職業があるんだね」


「わたくしも、皆さまと出会う前には旅費を稼ぐために、

 度々ガードの仕事をしながら旅をしておりました」


 レベッカはご飯を食べながら言った。


「レベッカが……?」

「はい、たまたま村の方が魔物に襲われていて、

 それを助けたのがきっかけでした」


「それはまた、凄いな……」


「それからは何度かそういった機会もあり、

 どうにか食い繋いで旅を続けていました」


 幼いのに苦労してるんだな、レベッカは……。


「でも今まで旅しててガードの人と会ったことないよね」


「最近立ち寄った村は冒険者が出入りしてましたからね。

 弱い魔物なら武器持った大人でどうにかなったりもしますし」


「そっか、ここの人はお年寄りが多いらしいから雇ってるのかな」

「お爺さんお婆さんが戦うのは厳しいだろうし大変ねぇ」


 その後、食事を済ませ、僕たちは就寝した。


 ◆


 二十日目――


 朝食を終えて、僕達は旅の食料を調達していた。

 その途中、村でガードを任されている若い人たちと出会った。


「――お、アンタら冒険者か?」

「ええと、はい。貴方がたはこの村のガードの人ですよね」

「俺はリーダーやってるライルってもんだ!」

「私はサブリーダーをしています、レニーといいます」


 二人とも20代前半くらいだろうか。

 男の人は大きな剣とブレストプレートを付けている。

 おそらく戦士だろう。


 女の人は動きやすい軽装を付けているようだ。

 装備を見る感じ、レベッカの似たような弓使いか。


「僕はレイ、冒険者やってます。他の三人は……」

 僕は後ろを見て、三人に自己紹介を促す。


「エミリアです」

「レベッカと申します。お見知りおきを」

「ベルフラウよ、よろしくね。うふふ」

 それぞれ挨拶をする。


「あはは、なんか面白そうなパーティーだな。

 それにしてもアンタら随分若いな。

 その年齢で冒険者パーティ組んでるのは珍しい」


「ここまで来たってことは旅の途中かな?何処に行くつもりなの?」


「私たちは、南にある『サクラタウン』という街を目指しています」


 エミリアがそれを言うと、

 ライルさんとレニーさんが驚いた顔をした。


「サクラタウンか、随分遠い場所を目指すんだな」


「この村から順調に馬車で進んでもまだ半月は掛かる場所ね。

 そんな遠い場所に用事があるの?」

 二人は不思議そうな顔で聞いてきた。


「まぁ、色々と用事がありまして……」

 僕はそうやってぼかして言ったが、丁度いい。

 この二人にも聞いてみよう。


「あのう、この村に『黒い剣』を持った商人は来ませんでしたか?」


「黒い剣?……知ってるかレニー?」


「あ、知ってるわ。その商人の人、変な仮面を付けてたから覚えてる」


「えっ!?会ったんですか!?」

 駄目元で訊いたのだが、まさか本当に情報を得られるとは思わなかった。


「うん、一週間くらい前だったかしらね。

 私たちがこの村に滞在してる時にやってきて、一泊泊まっていったみたい」


「それだけですか?」


「さぁね、ただ村長さんの家に行ってたみたいね。

 ……ところで、その人がどうかしたの?」


「実は僕達、その人を追いかけるために旅をしていたんです」


「追いかけるために……?何か事情があるのか?」


 僕たちはライルさんとレニーさんに事情を説明した。

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