第138話 ダンジョンの奥にあったものは……
僕達三人は姉さんを庇うように前に出る。
ゴーレムの修復はもう終わったようで、こちらに気付いて襲い掛かってきた。
「よし、皆行くよ!!」
ゴーレムの顔や手などに分散して放つ。
その隙をついて、レベッカが矢を放つが、
ゴーレムは魔法を無視して矢のみを腕で弾き落とす。
「くっ!!やはりこの程度では通用しないですか!!」
「槍の魔法だから多少意味ある気がしたんだけどね」
少しでもレベッカの負担を減らせないかなと思ったんだけど……。
「大丈夫です。わたくしにお任せを!」
レベッカは次々と矢を放ち続ける。
ゴーレムはレベッカに向かって拳を振り下ろしてきた。
「危ない!!はぁぁぁ!!」
咄嵯の判断で僕はレベッカの正面から拳を受け止める。
「レイ様!!」「くっ!?」
さっきの僕とエミリアと同じ状態だ。このままだと押し負けてしまう。
だが、今回はこの形に持ってきたのは計画通りだ。
このゴーレムは魔法自体を無効化するように出来ているのだろう。
そのため魔法には一切反応せず、
『物理攻撃を行う敵に狙いを定める』ようにプログラムされている。
最初は接近した僕ばかり狙い、
近寄ろうとした姉さんは打撃攻撃をしようとしたので狙いうちしてきた。
そして今回は弓矢で攻撃したレベッカを狙った。
しかし最優先はおそらく『弱った敵を集中狙い』という行動だ。
さっきはレベッカが弓で攻撃したというのに一切無視して、
僕とエミリアを追い詰めたのはそれが理由なのだと思う。
つまり、この瞬間も同じだ。
このゴーレムは僕たち以外の存在を完全に無視する。
行動パターンさえ把握してしまえば、単純な相手だ。
とはいえ、このままだと僕達はやられてしまう。
だが、姉さんの準備は終わっている。
「てええぇぇい!!!」
<空間転移>でゴーレムの後ろに瞬間移動していた姉さんは
全力で杖をゴーレムの胴体に振りかぶる。
『修復プログラムを発動します』
どうやら弱点だったようで、ゴーレムは大きくよろめいた。
ダメージを受けると攻撃を止めて回復に専念するプログラムのようだ。
「今のうちだ、姉さん!そのままゴーレムを殴り続けて!!!」
「うん!!」
姉さんの強力な一撃が何度も入るたびにゴーレムの身体に亀裂が入る。
「こいつ、しぶといな……!」
「どっせぇぇぇい……!!!」
姉さんは全力で何度も殴り続けて息も絶え絶えだ。
「このままだとベルフラウの体力が持ちませんね」
「……レイ様、あれを!?」
レベッカのがゴーレムの一部を指差す。
指さした場所は、姉さんが殴り続けてるゴーレムの胴体だ。
胴体は特に頑丈ためか、中々砕けなかったが今はヒビが入っている。
「レイ様、あの状態なら剣も突き刺さるのではありませんか?」
「うん、いけるかも……よし、姉さん一旦離れて!!」
「う、うん……ふぅ……疲れた……」
姉さんが離れたタイミングで<一気に距離を詰め、
ひび割れた箇所を剣を突き立てる。
「これで……終わりだ!!」
僕は剣に力と魔力を込めて全力で突き刺した。
そして剣に伝わるように魔法を発動する。
「
剣から雷撃魔法が伝わり、ゴーレム内部が電流で焼き尽くされる。
『修復不可能、機能停止……』
ゴーレムはガクンッと膝をついて、完全に動きを止めた。
「やったのか?」
「……いえ、道中の金のゴーレムを見るにおそらく……」
レベッカの言いたいことは全員にすぐに伝わった。
「自爆する!?」
「は、はい…ですから避難を……!?」
しかし、ゴーレムは再起動し、再び動き始めた。
『自爆プログラム作動……残り五秒――』
どうやら僕達が逃げる前に爆発してしまうらしい。
「れ、レイくん、逃げよう!?」
「そ、それが良さそうかも」
しかし、入ってきた扉は変形して開かなかった。
「で、出れません!?」
「そ、そんな……!?」
僕達がパニックを起こしていると、エミリアが言った。
「大丈夫、私が何とかします……」
そう言いながら既に魔法を詠唱している。
『残り三秒――』
「で、でも魔法は……!」
「レイ様、エミリア様を信じましょう!」
くっ……こうなったらエミリアに命を預けるしかないか。
『残り一秒――』
もう、間に合わない!とそう思った瞬間、エミリアの魔法が発動した。
「
エミリアから強力な風の魔法が巻き起こる。
その風圧により、僕達の周りにいたゴーレムは上空に一気に吹き飛び、
僕達の真上で大爆発を起こした。
僕達は咄嗟に伏せるが、爆風と熱気が襲ってくる。
そして数秒で魔法は収まった。だが、僕達は無傷だった。
「な、なんで僕達無事なの?直撃してなかった?」
「……ふぅ、助かりました……ベルフラウ」
「もう、私も間に合わないかと思ったわ……!!」
ギリギリのタイミングで姉さんが防御魔法を発動させたようだ。
かなり危ない状況だったようで、二人とも冷や汗を流していた。
その後、僕達はその場でぐったりして数分休んだ。
数分後に、大きな宝箱がいつの間にか開いていることに気付いた。
「宝箱の鍵がいつの間にか外れているね……」
「あのゴーレムを倒すと開く仕組みだったんでしょうか」
「多分、そうだと思いますよ……とりあえず開けてみます?」
僕は三人の顔を見たが、特に反対意見もなかったので開けることにした。
罠感知を使ってみたが、何も反応しない。どうやら危険はないようだ。
「じゃあ、早速開けちゃいますね」
「お願いします」
僕は宝箱を開けると、そこには杖とマントが入っていた。
エミリアは<鑑定>の魔法を使用した。
「ふむ……呪いの類は掛かっていないようですね」
「そっか、ならそれは戦利品として持って帰らせてもらおう」
ギルドには入手したアイテムを提出しろとは言われてないし問題ないだろう。
「宝箱の中身は確認したし、この先に行こうか」
僕達は、ゴーレムが守っていた大きな扉の先へ向かった。
「……ふむ、ここが最奥のようですね」
部屋はだだっ広かったが、何かあるわけではなく中央に棺だけ置かれていた。
棺の上には書物が置かれている。
「……開けてみますか?」
「怖いけど、気になるし開けてみようか」
そう言いながら僕は棺の蓋をズラして中を覗いた。
中には様々な宝石や装飾品、それにミイラが入っていた。
「これは……」
「この遺跡を作った主でしょうか……?」
中に一緒に入っていた宝石や装飾品などは丁寧に並べられていた。
このミイラの人の生前の所有物だったのだろうか。
「……ちょっと待ってください」
エミリアはミイラに
「……少なくとも、魔物では無いですね。
リッチなどのアンデッドを警戒しましたが、普通の遺骨です」
「他に分かったことは?」
「分かりません……。この書物に書いてあるかも?」
エミリアが指さしたのは、棺の上に置かれていた書物だ。
「……駄目だ、他の文字と同じく全く読めないよ」
ただ、他のものと違って、
魔法陣のような図形や別の文字で書かれたような走り書きも存在した。
「うーん、何かの暗号かもしれないですが……」
「僕達に解読は出来ないと思うけど、持って帰ってみる?」
「そうですね、持ち帰る価値はあるかもしれません」
「じゃあ、持っていこうか」
ひとまず書物を持ち帰ることに決めた。
しかし、他はどうしようか……?
「宝石や装飾品とミイラ……
下手に動かしたら呪いでも掛かってしまいそうです」
前に魔石を宝箱から取り出したら、
洞窟が大爆発して命からがら逃げかえったこともあった。
流石にああいうのは二度とごめんだ。
「……うーん、僕達の調査はもうほぼ終わったし、
このミイラは報告だけしてこのまま置いておこうか」
「……そうですね」
「レイ様、宝石や装飾品の類はどうされますか?」
……これもなぁ……。
何となく持ち帰ると呪いとか掛かりそうな気がする。
「エミリア、この宝石とかに<鑑定>してもらっていいかな?」
「分かりました……
エミリアが何か変な声出した。
「どしたの?」
「……巧妙に隠されているようですが、
盗掘者対策か、強い呪いが掛けられているようです」
そんな危険なものだったのか……
こんな厳重に保管されてたのなら当然かもしれない。
「レイ、さっきの書物見せてもらえますか?」
「う、うん……」
僕はさっき取り出した書物をエミリアに渡した。
「……どうもこの本は魔導書のようです。
この本に書かれている魔法が、その呪いではないかと思います」
「なるほど、恐ろしい呪いでございますね……」
レベッカが納得してると、姉さんが急に顔をしかめた。
「多分、この本は呪いや悪魔崇拝の内容が描かれた本だと思うわ。
誰かの手に渡らないように保管した方が良いかも」
「あー、確かに……姉さんの言う通りだね」
僕達は誰の手にも渡らないように、持ち帰ることにした。
その後、僕達は
ギルドにこのダンジョンの調査報告をした。
今回の調査で碑文に書かれていた古代文字を移したノートと、
マッピングした紙をギルドに提出した。
そして、最奥の棺には恐ろしい呪いが掛かっていたことも報告し、
誰の手にも渡らないようダンジョン自体を封印することが決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます